平成18年11月18日
日本政府代表団
(1)京都議定書第9条に基づく議定書の見直し
今次会合で第1回目の見直しを実施。2008年のCOP/MOP4で第2回目の見直しを行う。それに向けた作業スケジュールを決定するとともに、今後の見直しに基づき、適切な行動を取ることで合意。
(2)先進国(附属書I国)の更なる約束に関する第2回アドホック・ワーキング・グループ(AWG2)
AWGの今後の作業計画を決定するとともに、2007年の作業スケジュールを決定。
(1)適応
適応に関する5ケ年作業計画の前半期(2007年まで)の具体的な活動内容「ナイロビ作業計画」につき合意。また、途上国における適応対策を支援する「適応基金」の管理原則、運営形態、運営組織の構成等を決定。
(2)技術移転
期限を迎えた技術移転に関する専門家グループ(EGTT)の活動の1年間の延長を合意。
(1)二酸化炭素回収・貯留(CCS)プロジェクトに関するガイダンス採択プロセスと小規模CDMプロジェクトの範囲拡大につき合意。また、CDMプロジェクトの地域バランス向上のための措置など、CDMの更なる改善を決定。
(2)国連6機関主導による途上国のCDM参加支援イニシアティブ「ナイロビ・フレームワーク」計画を発表。
(1)京都議定書第9条に基づく議定書の見直し
今回の会議では、1回目の見直しの位置付けと範囲、第2回目以降の見直しをいつどのように行うか等を中心に議論され、結論として、第2回目の見直しを2008年のCOP/MOP4で実施することを決定し、第2回目の見直しに向けた作業スケジュールとして、2007年のCOP/MOP3において、第2回目の見直しの範囲と内容につき検討することが合意されるとともに、今後の見直しに基づいて適切な行動(appropriate action)を取ることが決定された。
(2)先進国(附属書I国)の更なる約束に関する第2回アドホック・ワーキング・グループ(AWG2)
今次会合では、まずワークショップを開催して我が国やIPCC等6ケ国・国際機関が濃度の安定化についての科学的基礎と削減ポテンシャルについて発表を行い、参加国が意見交換した。その後交渉を行い、1)附属書I国の温室効果ガス削減ポテンシャルと同削減幅の分析、2)排出削減実現のための手段の分析、3)附属書I国の更なる排出削減約束の検討、を内容とする作業計画を決定した。
また、2007年にはこのうち1)に焦点を当てることとし、5月に第3回目、9月乃至は10月に行われる「長期的な協力に関する対話」第3回会合時、及び12月に実施予定のCOP/MOP3時に第4回目を行うことを決定するとともに、京都議定書の第1約束期間(2008-2012)と第2約束期間との間に空白が生じることのないよう、AWGの作業を終了させることで合意した。
なお、決定には、市場メカニズム、京都メカニズムの活用を含む国内的・国際的努力を通じて、附属書I国が2013年以降も全体として排出量の削減を維持するための行動に率先して取り組んでいるとの明確なメッセージを発するべきであること、またそれが国際炭素市場の継続についてのシグナルともなることが謳われたが、我が国は、京都メカニズムが2013年以降継続すると決める前に見直しを行うべきであるという点、及び国際炭素市場の継続についても、市場の継続性にリスクがあることは当初よりわかっていたことであり、産業界も応分のリスク負担をすべきであることから、何らの決定もする前にその継続性を保証するべきでないという点で反対意見を表明した。
(3)「気候変動に対応するための長期的協力に関する対話」第2回会合
京都議定書未締約国の米国や削減義務のない途上国も含めた全ての国が参加して開かれた今次会合では、ニコラス・スターン英政府経済顧問による気候変動の経済的側面に焦点を当てた報告(所謂スターン・レビュー)や各国・国際機関・シンクタンクのプレゼンテーションが行われ、それに基づき、本対話の主要4テーマ(1)持続可能な開発、2)適応、3)技術、4)市場の役割)のうち、持続可能な開発と市場の役割について、非公式かつ率直な意見交換が実施された(次回会合については、2007年5月に適応及び技術に焦点を当てて意見交換を実施予定)。
(1)適応
2005年のCOP11において合意された気候変動の影響やそれに対する脆弱性及び適応に関する5ケ年作業計画の前半期(2007年まで)の具体的な活動内容について合意され、今後、各国・関係機関からの情報を集め、適応対策の策定に資する知見を集積すること、同計画を「ナイロビ作業計画」とすることに合意した。
また、途上国における適応対策のために、2001年のCOP7で決定されたCDMクレジットの2%を原資とする「適応基金」について、管理原則、運営形態、運営組織の構成につき決議され、これを基に、次回COP/MOP3において、同基金を付託する機関の決定を目指すこととなった。
(2)技術移転
COP7決定に基づき設置された技術移転に関する専門家グループ(EGTT)は、今次会合においてその5年間の実績の見直しと継続について議論が行われることになっていた。グループのこれまでの活動内容を評価し、今後はこれを拡充しつつ、諮問的役割を果たし続けるべき、と主張を行った先進国側に対し、途上国側は、1)同グループを改組・格上げし、独自の予算執行権限を持ち、先進国から途上国への技術移転を監視・管理できる権限を持った理事会(TDTB)の新設、2)知的所有権を買い取り、途上国に無償で技術を供与するための多国間技術取得基金(MTAF)の設置、3)技術移転の進捗状況を客観的に評価する指標(performance indicator)の作成、という提案を行い、意見が対立した。
結果として、時間的制約もあり、上記論点を今次会合では解決できないとの意見で一致し、1)EGTTのマンデートをもう1年延長させること、2)来年5月の次回補助機関会合(SB)において同グループの評価・見直しについて継続議論すること、の2点について合意した。
(1)今次会合における重要な論点の一つである二酸化炭素回収・貯留(CCS)プロジェクトの扱いについて、COP/MOPガイダンスに基づき実施可能であることや、2008年のCOP/MOP4でのガイダンス採択に向けたプロセスについて決定した。また、簡素な手続きが適用される小規模CDMプロジェクトの範囲が変更され、省エネの小規模プロジェクトの範囲が大幅に拡大(従来の4倍)されたほか、アフリカなどを対象としてCDMプロジェクトの地域バランス改善のための措置など、CDMの更なる改善のための決定がなされた。
植林CDMに関しては、土地適格性ガイダンスについて、各国からの意見聴取を踏まえCDM理事会が再度ガイダンスを策定すること、小規模植林CDMの上限値については、各国等からの提出意見に基づき来年5月の次回補助機関会合(SBSTA26)で検討することが合意された。
また、黒木昭弘氏(財団法人 日本エネルギー経済研究所研究理事)がCDM理事会の委員として選出された。
なお、15日、今次閣僚級会合に出席したアナン国連事務総長はその挨拶において、途上国、特にアフリカ諸国のCDM事業参加促進を目的として、国連関係6機関が主導するイニシアティブ「ナイロビ・フレームワーク」の立ち上げを発表した。
国際航空・海運からの排出量算定方法を改善するための今後の取り組みについて、技術的な情報交換を目的とするワークショップの開催等につき検討されたが、一部途上国の強い反対により合意が得られず、来年5月の次回補助機関会合(SBSTA26)で引き続き検討することとなった。
気候変動観測の今後の進め方について議論がなされ、1)組織的観測の報告に関するガイドラインの改定案を来年のCOP13における採択に向けてSBSTA27において審議すること、2)地域ワークショップの成果である地域アクション・プラン(特にアフリカ)の実施を促進すること、3)衛星観測については地球観測衛星委員会(CEOS)を通じた宇宙機関間の調整された対応の継続を奨励していくことに合意した。
また、気候変動モニタリング及び予測モデル改善等のために更なる観測の統合と調整が重要であること、全球気候観測システム(GCOS)と全球地球観測システム(GEOSS)関連の国内活動を推進していくことを確認した。
開発途上国の森林減少を抑制することによる排出削減について検討が行われ、来年5月の次回補助機関会合(SBSTA26)の前に、第2回のワークショップを開催することについて合意するとともに、同ワークショップでは、1)各種政策措置やインセンティブ、その実施に必要な技術や方法論を中心に、本年8月に開催された第1回ワークショップにおける検討事項について、引き続き検討を継続すること、2)開催に先立ち各国から意見、データを提出すること、について合意した。
昨年のCOP/MOP1での本件提案を受けて今次会合で議論されたが、そもそも本件はCOP/MOP議長がこれまで検討を今次COP/MOP2に報告するのみであって、それ以上の審議に強く反対する途上国側と、本提案の今後のとり進め方についてより正式な場において審議することを主張するロシア(我が国を含む先進国側が概ね支持)との間で意見が鋭く対立した。
結果として、来年5月にワークショップを開催し、本件提案について検討を行い、次回COP/MOP3にて議論することとなった。
(1)今次会合で、京都議定書第9条に基づく同議定書の見直しのプロセス化について決定されたことは大きな成果であり、日本の粘り強い主張がこの結果に果たした役割は大きかった。一連の議論では、議定書の見直しは最小限のものとし、次回の見直しの日程も決定の必要はない、としてプロセス化に強く反対する一部途上国側と、同議定書の見直しは将来枠組にも直接関係するものであり、1回限りの見直しではなく、プロセス化が不可欠であり、その対象も議定書全体とすべきと主張する先進国側の意見が鋭く対立した。また、この見直しは非付属書I国への義務を課することにはつながらないことを保障するべきであるといった主張もなされる等難航したが、我が国から、気候変動に国際的且つ長期的に立ち向かうためには、団結の精神に立って途上国も含めた行動を取ることが謳われなければならないと強く主張したこともあって、最終的に京都議定書9条に基づく見直しをプロセス化し、見直しの結果を受けて途上国も含めた全参加国が適切な行動をとることで合意が成立した。
今後は、京都議定書第9条に基づく議定書の見直し、AWG及び気候変動に対応するための長期的協力に関する対話の3つのプロセスの一体的な進展を通じて、我が国の目指す主要排出国による最大限の削減努力を促す実効ある気候変動対策の枠組を構築していく方針である。
(2)適応に関する5カ年作業計画の前半期の具体的な活動内容が決定したことにより、今後、適応対策の策定に資する知見の集積が図られていくことが成果といえる。また、適応基金については、来年のCOP/MOPにおいて、基金を付託する機関の決定を目指すこととなり、適応基金の早期運用が期待される。
(3)先進国・途上国の別なく今次会合においては技術移転議題への関心が非常に高く、それぞれ技術移転の更なる推進に向けた考え方を提示したが、結局双方の意見の調整がつかず、今回での具体的な合意が見送られたが、EGTTの活動が停止されるという最悪の状況を回避し、1年間ではあるがEGTTの活動の継続が決定できたこと、引き続き議論を続けるとの決定を得ることができたことは高く評価できる。
(4)CDMについては、その改善のためのいくつかの重要な論点について決定され、その中でも、我が国の積極的な働きかけにより、CCSプロジェクトをCDMとして実施することについての最終的な合意に向けたプロセスが明確に設定されたことは大きな成果。
また、アフリカを対象としたCDMプロジェクトの地域バランスの向上のための措置が決定されたことや、我が国企業による貢献が大いに期待できる省エネ分野のCDMプロジェクト促進のため、同分野の小規模CDMの範囲が大幅に拡大したことも大きな成果といえる。