地球環境

国連気候変動枠組条約交渉
バルセロナ会合:議論の概要

平成21年11月6日
日本政府代表団

 11月2日から6日、2013年以降の国際枠組みに関し、スペイン・バルセロナにおいて開催された国連交渉の主な論点と概要は以下のとおり。

I. 条約の下での長期的協力の行動のための特別作業部会(AWG-LCA)(1)

 バンコク会合(9月28日~10月9日)の結果作成された文書を踏まえ、論点毎に対立点を明確化し、簡潔な文書にまとめる作業が行われた。作業の成果文書は、コペンハーゲン会合における交渉のたたき台となる。

1.コペンハーゲン会合の成果

 コペンハーゲン会合の成果については、ザミット・クタヤール議長から、2013年以降の新たな包括的枠組みの骨格に関する政治合意をコペンハーゲンにおける成果として実現させたいとの意向が示された。

2.緩和

 途上国の緩和行動の法的性格、全ての国の削減約束・行動の規定の仕方、途上国の緩和行動と資金・技術支援との関連及びそれらに対する測定・報告・検証(MRV)の方法等を巡る、先進国・途上国間の対立の基本的構造は変わっていない。先進国側の主張により、前回会合から先進国・途上国の共通の責任についての議論が行われたが、引き続き、とりわけ主要途上国は、そのような共通の責任は気候変動枠組条約やバリ行動計画に反していると主張し、実質的な議論が深まっていない論点も少なくない。

 また、クレジット・メカニズムに関しては、各国の提案の説明が行われ、制度に関する理解が深まったものの、一部の途上国が新たなメカニズムの創設に強硬に反対し、実質的な議論は行われていない。なお、この他、途上国の森林減少・劣化に由来する排出の削減(REDD)のための仕組み、国際航空・海運セクター、あるいは農業分野での緩和努力のあり方も議論された。

3.資金・技術等途上国支援関係

 前回のバンコク会合以降、先進国は各種の資金・技術に関するメカニズムを提案している。我が国からは、鳩山イニシアティブの具体化に向けた資金及び技術に関する提案を行った。

 資金については、2013年以降の基金案( 1)気候変動基金、2)適応基金、3)体制強化基金及びマッチング・メカニズムの設立)を提案した。この提案は、米国やEU、途上国の提案とともに、交渉用に整理され、成果文書に取り入れられた。

 また、技術開発・移転についても、主要地域ごとに官民の専門家の知見を活用する我が国の提案(技術協力アドバイザリーグループ)が同様に成果文書に取り入れられ、米国やEUの提案とともに議論をリードした。なお、知的財産権については、途上国から強制許諾等を含む強硬な主張がなされ、先進国との対立が続いた。

 一方で、気候変動への適応やキャパシティ・ビルディング(人材育成)における、支援に係る資金の負担や公的な資金の拡大については、途上国が先進国に巨額な「義務的拠出」を求め、その主張を譲らず、先進国との対立構造が続いている。

II. 京都議定書の下での附属書Ⅰ国の更なる約束に関する特別作業部会(AWG-KP)(2)

 初日、アフリカ・グループが、附属書Ⅰ国が十分な削減目標を設定しない限り他の分野での議論を拒否するとの態度をとり、初日からすべての会合が中断した。2日目の夕方、今後の議論ではより多くの時間を附属書Ⅰ国の削減目標に割り当てること等、アフリカ・グループの要望を汲む進め方を決定することにより、会合が再開されたが、本会合の結論文書が作成されるには至らなかった。

1.附属書Ⅰ国の削減目標

 附属書Ⅰ国の削減目標の内訳(国内削減、柔軟性メカニズム等)、目標の規模、約束期間の長さや基準年等について、議論が進められた。

 途上国が先進国の目標のうち、国内削減、柔軟性メカニズム、森林等吸収源の内訳を示すことを求めたのに対し、先進国からは、国際交渉の動向や森林等吸収源の算定ルール等が明らかにならない限り、内訳を示すことは困難とのやりとりがあり、意見が分かれている。

 また、附属書Ⅰ国の削減目標の規模をいかに拡大するかの議論においては、更に高い目標の設定を求める途上国と、地球規模の削減を求める先進国との間で対立が続いている。

 基準年については、EUや途上国から1990年を単一の法的拘束力のある基準年とすべきとの考えが示され、大勢を占めた。我が国は、自国の目標は1990年を基準としているが、全ての先進国の参加を確保するためには、基準年の選択において一定の柔軟性が必要と指摘した。また、1990年を基準年としつつ、複数の参照年を併記するオプションも提案された。

 約束期間の数と長さについても、5年に1回、8年に1回等の提案が並び、合意に至っていない。

2.森林等吸収源

 これまでの議論を踏まえつつ、コペンハーゲンにて決定することを目的とした文書案が配布され、各国から意見聴取が行われた。

 これまでに提案されている各算定ルールに従った場合の森林経営による吸収量の将来推計について我が国等からプレゼンテーションが行われる等、各国間の情報の共有が図られている。

3.その他

 柔軟性メカニズムではCDM制度の改革に関する各提案を議論したが、各国間の意見の対立点は複数残ったままであり、大きな進展はなかった。

III. 各種二国間会談

 会合期間中、米国、カナダ、英国、豪州、ニュージーランド、EU、デンマーク、トルコ、中国、インド、南ア、途上国グループ(G77+中国)とそれぞれ会談を行った。

IV. 国連気候変動枠組条約交渉の今後の予定

 11月16・17日
  閣僚級準備会合(pre COP15)(コペンハーゲン)
 12月7日~18日
  気候変動枠組条約第15回締約国会議(COP15)
  京都議定書第5回締約国会合(COP/MOP5)
  (コペンハーゲン)
   併せて、AWG-LCA及びAWG-KPを開催予定。


  1. 気候変動枠組条約の下の作業部会(Ad Hoc Working Group on Long-term Cooperative Action under the Convention)。共有のビジョン、緩和、適応、資金、技術、キャパシティ・ビルディング(人材育成)について議論することになっている。
  2. 京都議定書の下の作業部会(Ad Hoc Working Group on Further Commitments for Annex I Parties under the Kyoto Protocol)。京都議定書の附属書Bには温室効果ガス削減義務を負う先進国のリストと各国の削減目標値が掲載されており、AWG-KPはこの改訂について議論を行っている。
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