地球環境

「条約の下での長期的協力の行動のための特別作業部会(AWG-LCA)」及び
「京都議定書の下での附属書I国の更なる約束に関する特別作業部会(AWG-KP)」
非公式会合
-概要と評価-

平成21年8月14日
日本政府代表団

 8月10~14日、ドイツ・ボンにおいて、「条約の下での長期的協力の行動のための特別作業部会(AWG-LCA)」及び「京都議定書の下での附属書I国の更なる約束に関する特別作業部会(AWG-KP)」の非公式会合が開催され、2013年以降の気候変動に関する国際枠組みに係る議論が行われた。

 我が方からは、古屋昭彦外務省地球環境問題担当大使他、外務、農林水産、経済産業、国土交通、環境各省関係者が参加した。

 また、同会合に先立つ7日に、2013年以降の枠組みについての各国の提案に関する非公式セミナーが実施された。

I.議論の概要

1.AWG-LCA

 今次会合に向けて各国からの提案をほぼそのまま取り込んだ交渉テキスト(200ページ弱)が用意されたが、重複が多いため、各国の提案を削除することなく、可能な限り各国の一致が見られる部分と見られない部分に論点を整理する作業等が行われた。交渉テキストの項目( 1)共有のビジョン、2)適応、3)緩和( 3)-1.先進国の約束及び行動、3)-2.途上国の行動、3)-3.途上国の森林減少・劣化に由来する排出の削減(REDD)、3)-4.セクター別アプローチ、3)-5.炭素市場、3)-6対応措置)、4)資金、5)技術及びキャパシティ・ビルディング)ごとにグループに分かれて議論を行い、各国の意向を踏まえて提案が整理され、次回のバンコク会合に向けて新たな論点整理ペーパーが作成されることとなった。また、途上国の意向を反映して、次回会合ではキャパシティ・ビルディングを技術から切り離して独立したグループを形成することとなった。なお、次回会合では、交渉テキスト及び今回のAWGで提示された論点整理ペーパーをもとに議論を開始することになる。

2.AWG-KP

 附属書 I 国の数値目標については、1)各国の中期目標の積上げの試算、2)各国の中期目標を議定書上の数値約束に換算する方法、3)排出割当量(AAU)の計算方法、について、技術的な検討が行われたほか、先進国全体の削減量や各国の目標の決め方、基準年等の一般的な論点について意見交換が行われた。柔軟性メカニズムについては、議定書改正を要しない、京都議定書締約国会合(CMP)決定で対処すべき各種事項の案について検討され、会合前に準備された決定文書案について若干の改定がなされた。森林・農地等吸収源については、前回会合に引き続き主要論点及び各国からのデータ提出のあり方等について意見交換が行われた。対象ガス、潜在的影響等についても引き続き議論がなされた。

3.その他

 AWG開催前の8月7日に行われた非公式セミナーでは、気候変動枠組条約第15回締約国会議(COP15)の成果として各国が期待する枠組等について、各国が自国の提案を説明した。主に、一つの法的枠組みを望ましいとするグループ(我が国、豪州及びEU)、京都議定書の改正と併せてAWG-LCAの結果を国際約束とすべきとするグループ(南アフリカ、ツバル)等がプレゼンテーションを行った。我が国からは4月に提出した新議定書案について説明を行った。

II.評価

1.今次非公式会合では、バンコク会合に向けて交渉テキストの各国提案の整理を行う方向で議論が進められたものの、締約国間の基本的立場の違い、とりわけ先進国と途上国の見解の開きに大きな変化はなかった。

2.AWG-LCAでは、2013年以降の枠組みの主要点である先進国の削減約束及び行動と途上国の削減行動は意見が最も対立する分野のひとつであり、両者を統合して扱うべきとする米国・豪州・我が国等先進国側と、その性質の違いから分けて扱うべきとする途上国側の対立があり、議論の進め方が決まらなかった。AWG-KPでも、附属書Ⅰ国全体の削減規模を先に決めるべきか否か、基準年をどこにとるべきか、先進国の約束の比較可能性をいかに確保すべきかといった基本的論点について、意見の収れんは見られなかった。

3.2013年以降の枠組みの法的形式については、非公式セミナー等で有益な意見交換が行われ、EUも一つの法的文書が望ましいとする立場を明らかにするなど、各国のスタンスについて理解が深められた。特に、我が方提案との関係では、主要途上国に求める効率目標や遵守の基本的原則について、我が方の立場に対する各国の認識を深める上で役立った。

4.我が国としては、COP15で、米中を含むすべての主要経済国が責任ある形で参加する実効性ある2013年以降の枠組につき合意することを目指し、引き続き積極的に交渉に貢献していく考え。

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