地球環境

「条約の下での長期的協力の行動のための特別作業部会第3回会合(AWG-LCA3)」
及び「京都議定書の下での附属書 I 国の更なる約束に関する
アドホック・ワーキング・グループ第6回会合前半(AWG-KP6 part1)」
概要と評価

平成20年8月27日
日本代表団

 8月21日~27日、ガーナ・アクラにおいて、「条約の下での長期的協力の行動のための特別作業部会第3回会合(AWG-LCA3)」及び「京都議定書の下での附属書 I 国の更なる約束に関するアドホック・ワーキング・グループ第6回会合前半(AWG-KP6 part1)」が開催され、2013年以降の気候変動に関する国際的な枠組みに係る議論が行われた。

 我が方よりは、大江博外務省国際協力局審議官、本部和彦経済産業省資源エネルギー庁次長、竹本和彦環境省地球環境審議官、島田泰助林野庁次長他、外務、農林水産、経済産業、国土交通、環境各省関係者が参加した。

I.議論の概要

1.AWG-LCA3

(1)今次第3回会合では、「セクター別アプローチ」及び「途上国における森林減少・劣化(REDD)」に関するワークショップが開催された。バリ行動計画の内容については、3つのコンタクト・グループ(「緩和」、「適応」及び「制度的手当を含む技術及び資金の調達」)が設置されて議論が行われた。

(2)我が国は、7月のG8北海道洞爺湖サミット及び主要経済国会合(MEM)首脳会合の議長国としてこれらの会合での議論を紹介するとともに、G8で合意した2050年までに世界全体の温室効果ガスの排出を少なくとも半減させるとの目標を、国連気候変動枠組条約の締約国間で共有・採択することを提案した。

(3)セクター別アプローチのワークショップでは、我が国より、同アプローチが先進国の公平な国別総量目標設定に寄与するとともに、途上国についてはセクターごとの優れた技術や慣行の移転を可能にすることを説明し、今後、各国によりセクター別アプローチの関連情報の提供を進めるとともに、IEA、APP、産業界、有識者等からのインプットを得ていくこと、セクター毎の検討を深めていくことを提案した。また、10月にセクター別削減ポテンシャルに関する第2回国際ワークショップ(於:パリ)を行うことを紹介した。議論を通じ、セクター別アプローチは先進国の国別総量目標を補完するものである点につき概ね共通認識が得られ、また、途上国の緩和行動に資するとの指摘もあった。他方、一部の途上国からは、同アプローチは一律の目標設定につながるものでなく技術移転を促進するべきものとの意見があった。

(4)途上国における森林減少・劣化(REDD)のワークショップでは、6月に東京で開催されたREDD方法論ワークショップの成果が報告された。我が国からは、持続可能な森林経営を推進する観点から、REDDによる排出削減から得られた利益を関係者間で適切かつ透明に配分することが必要であるとの意見を表明した。

(5)途上国の緩和行動のあり方については、我が国は「共通に有しているが差異のある責任」の原則に基づき、途上国間で経済の発展段階等の指標により差異化を図り、各国がそれぞれの段階に応じた行動を取る必要性につき主張した。EU、豪州等がこれに同調する意見を述べた一方、本作業部会では、途上国の差異化ではなく途上国の緩和及び適応に対する支援の強化につき議論すべきとの意見や、差異化の指標として一人当たりGDPを活用することは小国にとって不公平であるとの意見等も述べられた。

(6)適応に関しては、開発計画への主流化の重要性のほか、途上国から資金のスケールアップの必要が述べられた。また、資金と技術移転に関しては、ノルウェー、メキシコ、スイス、韓国等から資金メカニズムに関する具体的な提案が説明され、議論が行われた。

(7)今年12月のポズナン会合(COP14)に向けては、本年締約国から出された提案を議長がまとめたテキストを作成することとなった。2009年の作業計画については、先進国及び途上国の緩和行動(バリ行動計画のパラ1(b)(i)及び1(b)(ii))、気候変動への対応措置による経済的・社会的な影響、農業部門の緩和に係るワークショップを2009年の最初の会合(第5回会合)で開催することが議長に要請された。

2.AWG-KP6 part1

(1)今次会合では、前回のボン会合に引き続き、気候変動枠組条約の附属書 I 国が排出削減目標を達成する手段の分析(議定書の下での柔軟性メカニズム、土地利用・土地利用変化及び林業部門(LULUCF)、対象とする温室効果ガス等)等につき議論が行われた他、附属書 I 国がとる政策・手段等による環境・経済・社会面での潜在的影響に係る議論が開始された。

(2)附属書 I 国の削減目標達成手段としての柔軟性メカニズムの改善に関し、前回会合に引き続き、各国の提案及び見解の確認及び整理が行われた。その結果、削減目標に大きな影響を与えうる主要な項目を全体の半分程度の25項目に絞り込み、他の項目と区分した新たなリストが作成された。今後の作業として、ポズナン会合に向けて各項目について各国から改めてインプットを行うほか、京都議定書の改正の要否を含む法的な問題についても検討していくこととなった。

(3)森林吸収源の取り扱いルールについて、前回会合で各国から提案された様々なオプションの比較検討を行った。我が国は、第一約束期間との継続性や持続可能な森林経営の促進の観点から、現行の京都議定書で採用されているグロス・ネット方式を引き続き採用することを主張した。最終的に、グロス・ネット方式を含む4つのオプションに取りまとめられ、次回のポズナン会合では本オプションの検討を継続すること(今次会合では森林に係る検討を優先し、農地管理を含むその他の京都議定書第3条4項活動については後日実施)、各オプションによる影響について各国から非公式に情報を提出することが合意された。

(4)議定書の対象とする温室効果ガス等に関し、第二約束期間においても現行と同様に、温室効果ガスごとの評価でなく、温室効果ガスをCO2換算して排出総量を評価することに合意した。また、IPCCの第四次評価報告書において新たに温室効果係数(GWP)が記載された温室効果ガスを対象とするかについて、ポズナン会合において科学的評価などを含め更に検討を行うことに合意した。なお、モントリオール議定書では製造規制しかなされていない特定フロン(CFC及びHCFC)を対象とするかについては、我が国の問題提起により、これらのガスの気候変動に与える影響を踏まえ、更に検討していくことになった。

(5)附属書 I 国がとる政策・手段等による環境・経済・社会面での潜在的影響については、今回初めて議論された。各国からは、影響の正負両面を取り扱うべき、附属書 I 国自身に及ぶ影響についても考慮すべき等の意見が提出された。各国は、本件に関する情報・見解に関する意見書を提出することに合意したほか、本件に係るワークショップを来年行うよう事務局に要請すること、本件に関する議論を次回も継続することで一致した。

(6)なお、セクター別排出に焦点を当てたアプローチや国際航空・海運からの排出については、次回以降引き続き検討されることとなった。

3.その他

 日本政府主催によるサイドイベントにおいて、我が国が推進するクールアース・パートナーシップ、セクター別アプローチ(先進国の公平な国別総量目標設定と技術移転の促進)、途上国の温室効果ガスインベントリの精度向上に係る取組等につき説明を行い、参加者の理解の深化に貢献した。

 また、会期中、クールアース・パートナー国を集めた会合を開催し、我が国の緩和・適応への支援策等につき意見交換を行った。

II.評価

  1. 今次会合は、途上国の差異化の問題を含む主要な問題について初めて活発な議論が行われたほか、個別の問題につき論点が整理され、一定の成果がみられた。
  2. 今次会合は、我が国が議長を務めた北海道洞爺湖サミット後の初の国連の枠組みでの会合であり、我が国としてはサミットの成果を国連における成果へとつなげるための主張を行った。また、我が国が提唱するセクター別アプローチ、クールアース・パートナーシップについても理解を深めた。
  3. とりわけ、セクター別アプローチについては各国の理解が深化した。今後は、先進国の国別総量目標の設定及び途上国への技術移転の促進の手段として、具体的な方法論についての検討を進めていくよう働きかけを強めていく考え。
  4. また、途上国のとるべき行動や差異化についても活発な議論が行われ、一部途上国からも途上国自身が積極的な緩和行動を取るべきとの声が出始めていることは、すべての主要排出国が責任ある形で参加する次期枠組み構築に向けた進展と評価できる。資金に関しても、具体的なメカニズムについての提案が複数出され、活発な議論が行われた。
  5. 我が国としては、本プロセスにおける次期枠組み交渉に引き続き積極的に貢献し、リーダーシップを発揮していく考え。
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