地球環境

「条約の下での長期的協力の行動のための特別作業部会第2回会合(AWG-LCA2)」
及び「京都議定書の下での附属書 I 国の更なる約束に関する
アドホック・ワーキング・グループ第5回再開会合(AWG-KP5 part2)」
並びに「気候変動枠組条約第28回補助機関会合(SB28)」
概要と評価

平成20年6月16日
日本代表団

I.全体の概要

 6月2~12日、ドイツ・ボンにおいて、「条約の下での長期的協力の行動のための特別作業部会第2回会合(AWG-LCA2)」及び「京都議定書の下での附属書 I 国の更なる約束に関するアドホック・ワーキング・グループ第5回再開会合(AWG-KP5 part2)」が開催され、2013年以降の気候変動に関する国際枠組みに係る議論が行われた。併行して、4~13日の日程で、「気候変動枠組条約第28回補助機関会合(SB28)」が開催され、気候変動枠組条約・京都議定書の着実な実施や関連する各種方法論につき議論された。

 我が方よりは、小町恭士地球環境問題担当大使、大江博外務省国際協力局参事官、本部和彦経済産業省審議官、島田久仁彦環境省国際調整官、皆川芳嗣林野庁次長他、外務、文部科学、農林水産、経済産業、国土交通、環境各省関係者が参加した。

II.2013年以降の国際枠組み

1.AWG-LCA2

(1)今次第2回会合では、「適応」、「技術」及び「資金」に関するワークショップを開催するとともに、バリ行動計画の5つの要素(「共有のビジョン」、「緩和」、「適応」、「技術」及び「資金」)について議論された。我が国は、各ワークショップにおいて日本の基本的考え方、具体的取組等につき説明し、議論の進展に貢献した。また、世界の温室効果ガス排出を2050年には少なくとも半減するとの長期目標の共有を主張するとともに、9日に福田総理大臣より発表された新たな政策ビジョンに沿って、我が国自身の長期目標として現状から60~80%の削減を掲げて取り組んでいく意志を表明した。

(2)議長は、今次会合では今後の次期枠組みの検討の素地となる締約国からの具体的な意見提出のテーマ等について合意を得たいとし、これらにつき議長より提案された案を基に議論が行われ、結論を得た。これにより、COP15に向けて注力していく論点について方向性が得られた。今後、先進国の更なる約束に係る交渉の場であるAWG-KPにおける作業との補完性を念頭に置きつつ、2つの作業部会の進捗がバランスのとれたものとなるよう、本交渉プロセスの下での作業を着実に進めていく必要がある。

(3)来年の作業計画については、来年は少なくとも4回の会合を持つことにつき合意するとともに、追加会合の開催の必要の有無につきCOP14までに決定することとされた。

2.AWG-KP5 part2

(1)本年4月の前回会合に引き続き、附属書 I 国が排出削減目標を達成する手段の分析に関し、特に以下の項目について議論した。

1)議定書の下での柔軟性措置(京都メカニズム)

2)土地利用・土地利用変化及び林業部門(LULUCF)の取扱い

3)セクター別アプローチ、カバーすべき温室効果ガス・セクター及び排出源のカテゴリー、国際航空・海運からの排出

 今次会合では初日にラウンドテーブルが開催され、意見交換が行われた後、3つのコンタクトグループ(分科会)に分けて、議論が進められた。また、本会合から、人為的排出の計量方法と温室効果係数(GWP)の議論が開始され、ワークショップが開催された。今次会合では、これら事項の様々な改善策について、各国から提案された様々な見解を議長の責任の下でまとめたリストが作成され、その内容について、8月の次回会合で検討することとされた。

(2)我が国からは、1)CDMなどが、現状は世界全体の排出削減につながらないこと、持続可能な開発への貢献が十分でないこと、開発のコベネフィットが評価される仕組みが必要であること、事務局の効率的運営が必要であること、2)森林の取り扱いルールの検討においては、IPCC第4次評価報告書にあるように、長期的には持続可能な森林経営が最大の緩和効果を生じさせることから、そのような取組を促進させるルールが必要であること、3)セクター別アプローチは国内外において、対策の公平性を確保する観点からも、効果的な削減を進める観点からも重要であること、国際航空・海運からの排出については、ICAO、IMOが議論をリードすべきこと等の意見を表明した。

(3)今次会合では、附属書 I 国が排出削減目標を達成する手段について、各国から様々なオプションが出されたが、実質的な議論までには入らなかった。次回の会合では、今次会合でとりまとめたリストを考慮して、附属書 I 国が排出削減目標を達成する手段の分析について結論を出す予定であり、我が国の考え方に理解が得られるよう取り組んでいく。なお、セクター別アプローチについては、今回我が国から発表を行い、国別総量目標設定のための科学的な知見を提供すること、セクター毎の利用可能な最善の技術を明らかにし国際的に削減を進めることについて一定の理解を得ることができた。他方、途上国については、セクター別アプローチをバリ行動計画パラ1(b)(iv)の協力的セクター別アプローチの意に限定して評価する姿勢がうかがわれた。

3.9条レビュー(第2次)準備

(1)我が国が属するアンブレラ・グループ(非EUの先進国)は、バリ会合での決定(4/CMP.3)において第2次レビューの対象として列挙された5項目以外に、コミットメントの性格、基準年、遵守制度、発効要件等を対象とすべき旨主張し、これを第2次レビューの対象と位置づけることに成功した。

(2)決定4/CMP.3の5項目については、まず、適応原資にJI、排出量取引からの利益を利用すること及び京都メカニズムに汚染者負担の原則を導入することの是非について、事務局が今後テクニカル・ペーパーを作成し、議論を続けていくことで一致した。附属書Bへの国の追加については、手続きの簡素化の必要の有無を今後検討していくこととされた。特権免除については、その供与には適切な条約による措置が必要との認識で一致し、加えて、短期的な対処法を検討していくこととなった。京都メカニズムについては、CDMプロジェクトの地理的偏在の解消方法につき検討していくこととされた。また、現行制度のガバナンス、手続規則をいかに改善していくか検討していくこととなった。気候変動による悪影響の低減に関しては、SBでの検討を踏まえ、適切に行動をとっていくこととされた。

III.個別議題

1.技術移転

 バリ会合で活動期間延長と検討作業の拡充が合意された技術移転に関する専門家グループ(EGTT)の2008年から2009年までの作業計画が承認され、技術移転の進捗に関する指標の策定方針等について合意した。また、技術移転促進のためにGEFが作成した「戦略プログラム」の案について、内容の更なる改善を求め、本年12月に検討することが合意された。

2.適応

 2005年に合意された気候変動の影響、脆弱性及び適応に関する5か年作業計画(「ナイロビ作業計画」)の2008年から2010年にかけての具体的作業内容が合意された。適応に関する既存の研究成果を収集し、地域の研究ネットワーク等を活用しながら、各国・地域における適応策の策定に資する情報や知見を効率的に整理・共有していくこととなった。また、適応に関する条約4条8及び過去のCOP決定に関する実施状況をCOP14時に評価する際の作業指針につき合意した。

3.森林減少・劣化に由来する排出

 途上国の森林減少・劣化に由来する排出の削減を次期枠組みに組み込む方向での検討の開始、実証活動や能力開発への取組を決定したCOP13決定を受け、今次会合では、今後議論が必要となる方法論に関する課題(推計とモニタリング、基準となる排出レベル、森林減少の場所の移転等)を取りまとめた。これら方法論的課題は、COP13決定に基づき6月25日から27日に東京で開かれるワークショップ(非公開)において議論され、その結果はCOP14に報告される。

4.研究・観測

 決定9/CP.11により開催された、締約国と、地域的・国際的な気候変動研究のプログラム・組織との討論で示された新たな科学的知見を評価し、対話の促進・参加機関の拡大が有益とした。また、IPCC第4次評価報告書や「ナイロビ作業計画」に関する、UNFCCCのワークショップ・専門家会合等で新たに浮上した重要な科学的課題に対し、締約国や研究プログラム・組織が取組を強化することを奨励。さらに、「ナイロビ作業計画」における適応に資する研究の強化とともに、途上国の研究能力の向上の必要性が強調された。

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