平成20年4月5日
日本代表団
3月31日~4月4日、タイ・バンコクにおいて、「条約の下での長期的協力の行動のための特別作業部会第1回会合(AWGLCA1)」及び「京都議定書の下での附属書 I 国の更なる約束に関するアドホック・ワーキング・グループ第5回会合(AWG5)」が開催され、2013年以降の気候変動に関する国際枠組みに係る議論が行われた。
我が方よりは、小町恭士地球環境問題担当大使、大江博外務省国際協力局参事官、本部和彦経済産業省審議官、伊藤元同省審議官、谷津龍太郎環境省大臣官房審議官、皆川芳嗣林野庁次長他、外務、農林水産、経済産業、国土交通、環境各省関係者が参加した。
(1)本会合は、昨年12月のバリにおけるCOP13で設置が決定されたもので、今次会合はその第1回会合。今後の作業計画について議論された。
(2)我が国は、直近の条約事務局への提出意見に基づき、主要な検討事項である共有のビジョン、緩和、適応、技術及び資金に関し並行して議論すべきであり、外部専門家が参加する検討会等を設置する必要がある旨を主張。次期枠組みに関する法的課題について検討する必要性を提起し、カナダの支持を得た。また、セクター別アプローチの有用性について改めて説明し、各国の理解の深化に貢献するとともに、温室効果ガスの排出を次の10年から20年の間にピークアウトし、2050年には少なくとも半減するとの長期目標、その達成に向けた革新的技術開発及び低炭素社会構築の必要性、適応の重要性及び資金支援の必要性につき主張した。
(3)EUは、条約AWGと議定書AWGの2トラックの関係の重要性を指摘し、「共有のビジョン」で概念的な検討を行い、他の4つのテーマの下でより精緻な交渉を行うべき旨を主張。途上国は、既存の枠組みの実施の強化について議論することが目的であり、先進国は率先して排出削減を行うべき、先進国全体で2020年までに90年比25-40%の削減が必要、条約AWGと議定書AWGは独立した別々のトラックであるべき旨を主張。また、適応の重要性を強調し、先進国は途上国に削減及び適応に関して技術と資金を提供する義務があり、これらの支援の強化についての議論を深めるべき旨主張。
(4)非公式全体会合で示された各国の立場を踏まえて議長より提案された作業計画案を基に、ワークショップのテーマ、開催時期等について議論が行われ、我が国はセクター別アプローチに係るワークショップの重要性を主張した。
(5)交渉の結果、セクター別アプローチについては本年秋、共有のビジョン及び革新的技術開発については本年末のCOP14にワークショップを開催する等、我が国の主張を反映する形で作業計画が合意された。先進国及び途上国の緩和(先進国の努力の比較可能性を含む。)に係るワークショップについては、来年開催されることとなった。
(1)今次会合の議題は、CDM等の京都メカニズム、森林等の吸収源、国際航空・船舶等、附属書 I 国の排出削減目標達成のための手段の分析であった。我が国は、条約AWGと関連づけて議論を進める必要性を強調するとともに、セクター別アプローチの有用性、京都議定書目標達成計画を始めとする我が国の取組について説明した。
(2)インセッション・ワークショップが、以下の4分野について開催された。1)排出権取引、CDM及び共同実施(JI)(UNFCCC事務局、IPCC、CDM理事会、JI監督委員会、UNDP、日本、EU等がプレゼンテーションを行った。)、2)土地利用・土地利用変化及び林業(森林等吸収源)(UNFCCC事務局、FAO、IPCC、日本、EU等がプレゼンテーションを行った。)、3)セクター別排出に焦点を当てたアプローチ(IEA、ICAO等がプレゼンテーションを行った。)、4)温室効果ガス、排出セクター及び排出源のカテゴリー(UNFCCC事務局、IPCC等がプレゼンテーションを行った。)
我が国は、セクター別アプローチについては公平な目標設定と技術移転に有用であるとの日本側の基本的考え方を発表したほか、1)及び2)においてプレゼンテーションを行い、1)ではCDMの根本的見直しの必要性を、2)では「美しい森林づくり」等の我が国の取組を概観し、目標達成手段として適切に位置づける必要性を主張した。
(3)CDM・JI等の京都メカニズムについては、環境効果の保持やコベネフィット(相乗便益)の創出等による持続可能な開発への貢献を念頭に、適切な改善を検討していくこととなった。
(4)森林等吸収源対策については、排出削減目標達成のための手段として、引き続き利用可能とすることに一致し、取扱いルール等について引き続き議論を深めていくこととなった。
(5)セクター別アプローチについては、附属書 I 国の排出削減目標達成のための手段として活用されうるとの指摘がなされ、引き続き議論を行うこととなった。
(6)国際航空・海運からの排出については、議定書の枠組みを踏まえて、引き続き議論を行うこととなった。
(7)今次会合の議題である削減手段については、6月に予定されている第5回再開会合において、継続して議論することとされている。
1.AWGLCAの作業計画に関しては、主要な検討事項である「共有のビジョン」、「緩和」、「適応」、「技術」及び「資金」に関し並行して検討すべきとの我が国主張に沿って、全ての要素が各セッションにおいて議論されることとなった。とりわけセクター別アプローチをテーマとするワークショップの本年開催が確保できたことは、今後の交渉において我が国の主張に対する理解を促進する上で有用。今後は、附属書 I 国の更なる約束に関するAWGとの連関を図りつつ、策定された作業計画に沿って建設的な議論を行い、本交渉プロセスを着実に進めていくことが重要。
2.両AWGにおいて、我が国はセクター別アプローチにつき改めて説明した。セクター別アプローチは、附属書 I 国の排出削減目標を代替するものではなく、補完するものであるという認識がほぼ共有された。また、セクター別アプローチの有効性に賛同する意見が出されたほか、技術移転を目的としたものに限定すべきとの意見や、様々な考え方があるため今後も議論を継続することが重要であるという意見もあった。我が国としては、セクター別アプローチに係る各国の理解と賛同を得られるよう、今後も建設的に議論を進めていく考え。
3.附属書 I 国の更なる約束に関するAWGにおいて、京都メカニズム、森林吸収源等に係る我が国の基本的な考え方につき改めて説明し、途上国を含めた多くの国の理解を深められたことは、今後の交渉に向けて有用であった。
4.我が国としては、来る7月のG8北海道洞爺湖サミットの議長国として、本プロセスにおける次期枠組み交渉に引き続き積極的に貢献し、リーダーシップを発揮していく考えである。