地球環境

第30回南極条約協議国会議の概要

平成19年7月

 第30回南極条約協議国会議が、4月30日から5月11日までインドのニューデリーにおいて開催されたところ、その概要は次のとおり。

1.南極条約の概要

 南極条約は、1959年に作成され、1961年に発効。2006年6月現在、締約国数は45。そのうち、我が国を含む28カ国が協議国となっている。我が国は、同条約の原署名国であり、1960年に同条約を締結、協議国として、南極地域における平和の維持、科学的調査の自由の保障とそのための国際協力、軍事利用の禁止、領土権主張の凍結、環境保全と生物資源の保護等の面で、積極的役割を果たしてきている。その後、1991年には環境保護に関する南極条約が採択され、環境影響評価(附属書I)、南極の動物相及び植物相の保存(附属書 II)、廃棄物の処分及び廃棄物の処理(附属書 III)、海洋汚染の防止(附属書 IV)、南極特別保護地区規定等(附属書 V)と共に98年に発効、南極の環境及び生態系の包括的保護が進められている。

2.今次会議の概要

(1)環境保護に関する議題

 南極特別保護地区であるモウ島・南オークニー諸島及びロセラ岬・アデライド地区の管理計画の修正を行うとともに、特別管理地区として、アムンゼン・スコット南極点基地及びラースマン丘・東南極の2つの新規南極特別管理地区の決定に係る措置が採択された。
 なお、オオフルマカモメの議定書附属書 II(南極の動物相及び植物相の保存)に基づく特別保護種の指定については、SCAR(南極研究科学委員会)より協議のための作業文書が提出されたが、提出後に新たなデータが見つかり、その結果、科学的根拠があいまいであるとして、同文書は取り下げられた。しかし、当該種の指定に前向きに取り組むべきとの協議国も見られたことから、当該種の生息状況に係る情報収集・整理及び調査を推進することについてResolutionが採択された。

(2)観光・非政府活動対策

 活発な観光業の現状把握及び適切な管理方法(ガイドライン整備、大型船対策、長期的な環境への影響対策)につき環境保護及び航行の安全面から協議がなされ、我が国は環境と観光の両立を基本的立場として議論に積極的に参加した。今回は訪問者用ガイドラインの他、500人以上の大型観光船に対する上陸規制及び長期的な環境影響が懸念される行為の規制に係る勧告(Resolution)が採択された。

(3)バイオロジカル・プロスペクティング

 南極におけるバイオロジカル・プロスペクティング(生物探査 ; 微生物などの生物資源の商業的な活用)に関わる活動の現状や法的諸問題について議論が行われた。生物探査によって生じる利益をどのように配分するかという問題につき、南極条約体制としても検討を進めていく必要があるとの認識が高まっており、我が国としても今後の対応ぶりにつき十分検討していく必要がある。

(4)南極条約体制の運用

 南極条約協議国会議と南極条約事務局及び環境保護委員会、南極海洋生物資源保存委員会等他の組織との関係等、南極条約体制における各主体間の情報交換及び協力関係を深めていくための議論がなされた。また、これまで採択された南極特別保護地区に関わる勧告や措置を整理・統合していく作業の一環としてすでに効力を有していない勧告や措置を整理した決定(Decision)が採択された。

(関連ウェブサイト)

このページのトップへ戻る
前のページへ戻る | 目次へ戻る