平成18年6月26日
第29回南極条約協議国会議が、6月12日から6月23日まで英国のエジンバラにおいて開催されたところ、その概要は次のとおり。
南極条約は、1959年に作成され、1961年に発効。2006年6月現在、締約国数は45。そのうち、我が国を含む28カ国が協議国となっている。我が国は、同条約の原署名国であり、1960年に同条約を締結、協議国として、南極地域における平和の維持、科学的調査の自由の保障とそのための国際協力、軍事利用の禁止、領土権主張の凍結、環境保全と生物資源の保護等の面で、積極的役割を果たしてきている。その後、1991年には環境保護に関する南極条約が採択され、環境影響評価(附属書I)、南極の動物相及び植物相の保存(附属書 II)、廃棄物の処分及び廃棄物の処理(附属書 III)、海洋汚染の防止(附属書 IV)、南極特別保護地区規定等(附属書 V)と共に98年に発効、南極の環境及び生態系の包括的保護が進められている。
今次会議では、1957-58年に開催された国際地球観測年以来50年ぶりとなる国際極年を迎えるに当たり、同地球観測年を契機に締結された南極条約の協議国として積極的姿勢を示すべく、極年に際して予定されている種々の観測協力や啓発・広報など広範な関連事業の推進に対する政治的・財政的支援の意図を表明するエジンバラ宣言を起草・採択した。なお、我が国としても、日本の観測事業50周年記念行事(注)について紹介し、国際極年を共に盛り上げていく姿勢を示した。
(注)2006-2007年にわたり、南極展、記念コイン、切手の発行等を実施する予定。
今次会議においては、以下の事項が議論され、4つの措置、2つの決定、4つの決議が採択された。
(イ)環境保護に関する議題
新たにロス海ウッド湾のエドモンソン岬、アデリー海岸のマーチン港、イングリッドクリステセン海岸のホーカー島の3地区が南極特別保護地区に指定された。また、ミナミオットセイ属については、議定書附属書II(南極の動物相及び植物相の保存)に基づき特別保護種に指定されていたが、個体数の増加等を背景にその指定が解除された。
(ロ)観光・非政府活動対策
活発な観光業の現状把握及び適切な管理方法(ガイドライン整備、大型船対策、建築物対策)につき環境保護及び航行の安全面から協議がなされ、我が国は環境と観光の両立を基本的立場として議論に積極的に参加した。今回は12の地域における訪問者用ガイドラインが採択された他、来年は大型観光船及び常設の陸上建築物に係る対策を中心に更に議論していくこととなった。
(ハ)バイオロジカル・プロスペクティング
南極におけるバイオロジカル・プロスペクティング(微生物などのバイオ資源の商業的な活用)に関わる活動の現状や法的諸問題について議論が行われた。バイオロジカル・プロスペクティングよって生じる利益をどのように配分するかという問題は現在世界知的所有権機関や食糧農業機関等でも議論されており、南極条約体制としても検討を進めていく必要があるのではないか、といった問題提起がなされた。我が国としても今後の対応ぶりにつき検討をしていく必要がある。
(ニ) 南極条約体制の運用
南極条約協議国会議と南極条約事務局及び環境保護委員会、南極海洋生物資源保存委員会等他の組織との協力関係等、南極条約体制における各主体間の情報交換及び協力関係をより深めていくことが重要との認識が確認された。また、これまで採択された南極特別保護地区に関わる勧告や措置を整理・統合していく作業が具体的に動き出すこととなった。
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