地球環境
違法伐採問題
1 現状
違法伐採に関する国際的な定義は存在しないが、通常、違法伐採とは、「各国の法令に違反して行われる森林の伐採」と考えられている。
違法伐採が問題となっている木材生産国では、国内における政治的・経済的混乱等により、法執行体制が弱まっていること、低コストで生産された違法伐採木材を持ち出すことにより、大きな利潤が見込まれること等を背景として違法伐採が起こりやすい状況にある。
違法伐採の現状に関し,2015年6月のG8エルマウ・サミットでは,主要熱帯木材生産国で生産される木材の50%~90%が違法伐採によるもので,世界全体でも,15%~30%が違法伐採であるとの推計(2012年)を報告している。
2 国際的な議論
わが国は、これまで「違法に伐採された木材は使用しない」という基本的考えに基づき、国際的な場において、違法伐採問題への取組の重要性を主張してきており、わが国のかかる主張を踏まえて、G8サミットをはじめとする様々な国際会議でも、国際社会として同問題に積極的に取り組むことが確認されている。
(1)G8プロセスを通じた議論
ア 九州・沖縄サミット(2000年)
違法伐採に対処するための最善の方法につき検討する旨の首脳声明を採択し,以後,サミットにおいて森林・違法伐採の取組につき言及。
イ グレンイーグルズ・サミット(2005年)
気候変動、クリーン・エネルギー及び持続可能な開発に関する「グレンイーグルズ行動計画」において、G8環境・開発大臣会合(2005年3月)の違法伐採についての結論(注)を承認し、各国が最も効果的に貢献できる分野において行動することで一致。
(注)G8環境・開発大臣会合(2005年3月)の閣僚声明における結論
- (ア)木材生産国への支援
- (イ)WTOルールに基づく自主的な二国間貿易協定やその他の取り決めを通じた違法伐採木材の輸入と市場売買を止めるための段階的取組
- (ウ)合法な木材を優先して使用する木材公共調達政策の奨励、採択又は拡大
- (エ)違法伐採対策に関する各国の進捗状況を評価し、その経験を共有し、結果を公表するための2006年中のG8森林専門家会合の開催
ウ ハイリゲンダム・サミット(2007年)
「世界経済における成長と責任」において、違法伐採問題を世界の森林保護に対する最も困難な障害と認識し、この問題と闘う既存のプロセスに対する継続的な支援を確認。
エ エルマウ・サミット(2015年)
違法伐採の取組に関する新たな報告を実施。
(2)その他の国際会議
違法伐採問題に対する政治的モメンタムを高めるため、世界銀行が中心となり違法伐採問題に焦点を当てた森林法の施行とガバナンス(FLEG)に関する閣僚会議プロセスを推進。
また、世界的な持続可能な森林経営の促進に向けた政府間対話として国連森林フォーラム(UNFF)が開催されているほか、国際熱帯木材機関(ITTO)等においても違法伐採問題が取り上げられている。
3 わが国の取組
我が国としてはこれまでに以下のような違法伐採対策を推進。
(1)二国間協力
違法伐採対策協力に関する日・インドネシア間の共同発表及び行動計画(注) の他,広く森林保全分野における経済協力案件を実施している。
(注)2003年のメガワティ大統領訪日の際に両国の関係閣僚が発表。適正な森林経営に関する技術協力や衛星を用いた伐採状況の観測等に関する協力。
(2)地域間協力
アジア森林パートナーシップ(AFP):2002年の持続可能な開発に関するヨハネスブルグ・サミットにおいて,日本とアジア大洋州諸国等により発足。政府、市民社会、民間セクター、国際機関等の間での自発的協力を促進するためのパートナーシップとして,違法伐採に対処すること等に焦点をあてた活動を実施(2013年4月に活動終了)。
(3)多数国間協力
国際熱帯木材機関(ITTO:本部横浜)を通じ、貿易統計の分析や森林経営の技術移転等、木材生産国の持続可能な森林経営に資するプロジェクトを支援。
(4)政府調達
2006年4月、「グリーン購入法」の下で、政府調達の対象を合法性の証明された木材及び木材製品とする措置を導入。
(5)国際的議論の喚起
木材生産国・消費国政府、国際機関、NPO及び業界団体の間での違法伐採問題に関する国際的な議論を促進すべく、これまでに2回の違法伐採国際専門家会議を主催。