注:見出しの番号及び項目立ては便宜上付したもの。21の措置提案における番号は本文右カッコ内の斜字の数字。
2005年NPT運用検討会議は、締約国に対し、国際の平和と安定に貢献するNPT体制を強化するとの決意を示す機会を提供するものである。
日本は、締約国がNPT運用検討会議において、NPTを強化するために取られるべき更なる措置について共通の理解に達するよう、努力を倍加させるべきと信じる。
このため、日本は、2005年NPT運用検討会議の最終成果物として発出される文書に含まれるべき以下の21の措置を提案する。
NPT第6条に基づき、また、1995年の「原則と目標」に関する決定のパラグラフ3及び4(c)並びに2000年NPT運用検討会議最終文書に従って、2005年NPT運用検討会議は、すべての締約国が核軍縮の目的のために更なる実際的な措置をとるべきことに合意する。
核兵器のない安全な世界の実現は、その廃絶に向けたプロセスにおいて、すべての核兵器国によるすべての種類の核兵器の不可逆的でより透明な形での一層の削減を含む、更なる措置を必要とすることに運用検討会議は合意する。
核兵器国による核兵器削減に関する進展を認識しつつ、運用検討会議は、ロシア及び米国に対して、戦略攻撃能力削減条約を完全に実施し、両国間の新たな戦略的関係に関する共同宣言に従って緊密な協議を継続するよう慫慂する。
軍事的必要性を超える核兵器の軍縮を加速するために、運用検討会議は、協調的脅威削減計画や大量破壊兵器及び物質の拡散に対するG8グローバル・パートナーシップのような核兵器関連物質の削減を目的とした国際的強調の枠組みにおける努力を引き続き追求するよう関係国を慫慂する。
運用検討会議は、核兵器国が国際の安定と安全を促進するような形で核兵器システムの運用態勢をさらに低減させるよう求める。
運用検討会議は、核兵器が使用される危険を低減し、その完全な廃絶のプロセスを促進するために、安全保障政策における核兵器の役割を低減させる必要性を再確認する。
運用検討会議は、核兵器の削減から生じる核分裂性物質は最高度の水準で管理及び保護されねばならないことを強調する。また、運用検討会議は、すべての核兵器国に対し、軍事的目的に必要とされなくなった核分裂性物質が核兵器の目的に使用されることから不可逆的に除去されることを確保するために、それらの物質を実施できうる限り早期に国際的な検証の下に置くための取り決めを行うよう求める。
(1)CTBTの早期発効及び核実験モラトリアムの継続(6)
包括的核実験禁止条約の早期発効を達成するために、運用検討会議は、遅滞なくかつ無条件に、憲法上の手続きに従いCTBTを署名し、かつ批准することの重要性と緊急性を再確認する。
運用検討会議は、CTBTを批准していないすべての国、特に発効要件国である11ヶ国に対し、可能な限り早く批准するよう促す。また、運用検討会議は、核爆発実験に関する現在のモラトリアムは、CTBTが発効するまでの間、維持されるべきであることに合意する。
(2)CTBT検証体制の確立の推進(7)
運用検討会議は、CTBTの遵守を確保するために求められる国際監視システム(IMS)を含むCTBT検証体制の継続的な発展の重要性を再確認する。
運用検討会議は、兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)交渉の即時開始と早期妥結の重要性を再確認する。
運用検討会議は、FMCTの締結が核兵器の全面的廃絶へ向けての不可欠な要素であり、地球規模で核兵器用の核分裂性物質の生産を禁止し、検証制度を通じて当該物質の管理の透明性と信頼性を向上させることにより、核拡散防止にも貢献するものとなることを強調する。
運用検討会議は、全ての核兵器国及びNPT非締約国に対し、FMCT発効までの間、兵器用核分裂性物質生産モラトリアムを宣言することを要請する。
運用検討会議は、FMCT交渉即時開始の重要性に鑑み、締約国は、作業計画に合意することが、ジュネーブ軍縮会議(CD)にとっての最重要課題であると考える。
(1)北朝鮮(9)
運用検討会議は、北朝鮮の核計画は、朝鮮半島及び朝鮮半島を越えた地域の平和と安定を脅かすものであり、重大な懸念を表明する。
運用検討会議はまた、NPTから脱退するとの北朝鮮の決定は、引き続き国際的な不拡散体制への重大な挑戦であり、深い懸念を表明する。
運用検討会議はさらに、2005年2月10日付北朝鮮外務省声明は、北朝鮮が六者会合への参加を無期限に停止し、また、核兵器を製造した旨発表したが、同声明に対して最大限の遺憾の意及び深い懸念を表明する。
運用検討会議は、北朝鮮に対して迅速にNPTを遵守し、ウラン濃縮計画を含む全ての核計画を、信頼のおける国際的な検証の下で、恒久的、徹底的かつ透明性を以て、完全に廃棄することを求める。運用検討会議は、地域の平和と安全、安定が強化され、関係当事者の正当な利益と関心事項が満たされるべきである一方で、朝鮮半島は非核化されなければならないことを強調する。
運用検討会議は、本件を六者会合の枠組みの中で外交的手段を通じて平和的に解決することの重要性を強調し、北朝鮮に対して六者会合に早期・無条件で復帰することを求める。
(2)イラン(10)
運用検討会議は、イランがすべてのウラン濃縮関連及び再処理活動の停止を自主的に継続し、拡大しているという事実の重要性を認識する。運用検討会議は、2003年10月までのイランの隠蔽政策が、IAEAとの保障措置協定を遵守するとのイランの義務に関する多くの違反という結果になったことへの強い懸念を再確認する。運用検討会議はさらに、イランに対して、累次のIAEA理事会決議のすべての要求事項を誠実に履行するよう求め、EU3(英仏独)/EUとイランとの現在の交渉プロセスが成功裡に終わることを期待する。運用検討会議は特に、イランが、EU3/EUとの交渉を通じて、イランの核計画がもっぱら平和的目的であるということについての十分な「客観的保証」を提供することに合意することが極めて重要であると考える。
(3)リビア(11)
運用検討会議は、保障措置協定の要求事項を満たすことについてのリビアの過去の不備は、違反を構成するものであり、右に対し懸念を表明する一方、2003年12月に発表された、すべての大量破壊兵器計画を廃棄するとしたリビアの決定を歓迎する。運用検討会議は、北朝鮮及び大量破壊兵器の開発の疑いがあるその他の国が、リビアの例に倣うことを強く期待する。
運用検討会議は、それぞれの締約国において保障措置下に置かれている申告された核物質の転用がないこと、また申告されていない核物質及び原子力活動が当該締約国全体として存在していないことを確認するためのIAEAの保障措置活動に係る能力を高める必要性を再確認し、特に、現在の国際的な核不拡散体制を強化するための最も現実的かつ効果的な方途である追加議定書の普遍化の重要性を強調する。運用検討会議は、強化された保障措置システムが、将来のある時点から、NPT第3条1項により求められるNPT保障措置の標準となるべきであることを認識する。運用検討会議は、IAEAとの間で包括的保障措置協定及び/または追加議定書を締結していない国に対し、更なる遅滞なく締結することを求める。
運用検討会議は、IAEAが、統合保障措置の概念上の枠組み作りを完了し、包括的保障措置及び追加議定書の双方に基づいたIAEA保障措置活動につき良好な結果をおさめた国々に対してその適用を開始したことを歓迎する。運用検討会議は、IAEAが限られた資源の中でその保障措置の実効性及び効率性を極大化することを目指し、統合保障措置の適用が促進されることの重要性を認識し、IAEAに対し、統合保障措置アプローチを強化するために必要な措置をとるよう慫慂する。
(1)実効的な国内輸出管理制度の整備・実施(13)
運用検討会議は、原子力専用品目及び原子力関連汎用品目の両者への輸出管理について、適切かつ実効的な国内法及び規則を未だ整備・実施していない締約国に対し、ザンガー委員会共通了解事項及びNSGガイドラインを基礎として、そのような整備・実施を行うことを求める。この関連で、運用検討会議は、2004年4月に採択された国連安全保障理事会決議1540が、すべての国に対し、適切かつ実効的な国内輸出管理を整備し、発展させ、再検討し及び維持することを要求していることに留意する。
(2)機微な物質、施設、機材及び技術の移転の厳格な管理(14)
運用検討会議は特に、濃縮及び再処理に関連する核兵器の開発に使用可能な機微な物質、施設、機材及び技術の移転を特別な管理の下におくための新たな措置を導入する必要性を認識し、かかる移転を抑制し、注意を払うよう締約国に求める。
(3)IAEA追加議定書の供給条件化(15)
運用検討会議は、非核兵器国に対する、ザンガー委員会共通了解事項及びNSGパート1ガイドラインのトリガーリストのすべての品目に関する新たな原子力供給の取り決めには、追加議定書の締結を必要な前提条件とすることにさらに合意する。
運用検討会議は、地域の関係国の間の自由意思に基づいて設立され、国際的に認識された非核兵器地帯の概念は、地域及び世界の平和と安定に貢献することに合意し、この概念への支持を再確認する。
運用検討会議は、様々な地域、特に中央アジア及び中東において、非核兵器地帯を設立するためになされた努力を評価し、この点に関する進展はNPTの信頼性を更に強化することに合意する。
運用検討会議は、核物質防護条約締約国に対し、本年7月に開催が予定される外交会合に参加し、同条約強化のための改正案に合意するよう求める。
運用検討会議は、「放射線源の安全とセキュリティに関する行動規範」及び「放射線源の輸出入に関するガイダンス」がIAEA理事会で承認されたことを歓迎する。
運用検討会議は、国連総会による「核によるテロリズム行為の防止に関する条約」の採択を歓迎する。
運用検討会議は、すべての国は、安保理決議1540により適切な防護措置、国境管理及び法執行が要求されることに留意する。
運用検討会議は、NPT上の義務を誠実に履行し、高い透明性をもって、国際社会の信頼を得て原子力の平和的利用を行っている非核兵器国のかかる活動を不必要に制約すべきではないことを確認する。
運用検討会議は、原子力安全分野のIAEAの活動の促進を支持するとともに、可能な限り多くの国が原子力安全条約等のこの分野の国際条約に加入することを支持する。
運用検討会議は、使用済燃料及び放射性廃棄物管理の安全の世界的規模での強化を支持するとともに、可能な限り多くの国が使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理の安全に関する条約に加入することの重要性を認識する。
運用検討会議は、特に、医療、農業、食糧、衛生、水資源分野等での原子力技術の平和的利用における国際的な技術協力は、全世界に大きな恩恵をもたらす上で重要な役割を果たすと認識する。また、技術協力プログラムの効率性と効果を引き続き向上させるとともに、特に途上国の自助努力と持続可能性を支援する活動を促進する上で、IAEAの技術協力活動の強化の必要性を強調する。
運用検討会議は、IAEA加盟国が可能な限り技術協力基金へ拠出するよう可能な限り努力するとともに、技術協力参加費用(National Participation Costs)の支払義務を果たすよう、また、プログラム費用(Assessed Programme Costs)の未納金を支払うよう求める。技術協力基金の資金問題については、「責任の分担」の概念に基づき、すべての加盟国がIAEA技術協力活動への資金拠出を行い、その活動を強化するための共通の責任を分担すべきである。
(1)NPTの普遍化(19)
運用検討会議は、全ての非締約国、すなわちインド、イスラエル及びパキスタンに対し、非核兵器国として、早期にかつ無条件でNPTに加入し、求められる包括的保障措置協定及び追加議定書を発効させるよう促す。
運用検討会議は、NPT非締約国に対し、NPTに非核兵器国として加入するまでの間、条約を支持する実際的な措置を取るとともに、条約の目的及び意図を阻害するような行動を差し控えるよう強く促す。
(2)NPTからの脱退に対処するための効果的メカニズム(20)
運用検討会議は、NPTから脱退した締約国が、締約国である間に犯した違反に責任を追い続けることを再確認する。
運用検討会議は、核物質、施設、設備等の供給国に対しては、脱退以前に移転された核物質、施設、及び設備等の返還または無害化を要求することができるようにするために必要な取り決めを行うよう促す。
運用検討会議は、締約国に対し、軍縮・不拡散教育に関する国連事務総長報告の勧告を適切に実施するために具体的活動を行い、このために取った努力に関する情報を自発的に共有するよう慫慂する。