平成24年8月11日
8月10日(金曜日)から11日(土曜日),外務省と国連大学共催により,長崎市の原爆資料館において軍縮・不拡散教育グローバルフォーラムが開催された。同フォーラムには19カ国4国際機関から政府関係者,NGO,メディア関係者等約250名が参加し,「核兵器のない世界」の実現に向けた軍縮・不拡散教育の役割とあり方,教育を実践していく上での課題等につき議論を行った。11日の(土曜日)の総括会議において,軍縮・不拡散教育の促進に向けた決意を表明する長崎宣言(日本語(PDF),英語(PDF)
)を採択した。(プログラムおよび各セッションにおけるパネリスト(PDF)
)
9時15分から10時30分まで行われた開会式では,田上長崎市長からの歓迎挨拶に続き,野田総理からのビデオメッセージ
(動画)
(PDF)
が上映された。ビデオメッセージでは,野田総理より,軍縮・不拡散教育が,核兵器使用の惨禍という「体験の記憶」を核軍縮・不拡散という「行動の情熱」に引き継いでいくための重要な社会基盤であること,本フォーラムが発展し,軍縮・不拡散教育に関する議論のネットワークが広がっていくよう,政府として後押ししていく旨メッセージが述べられた。総理のビデオメッセージに続き天野IAEA事務局長からのビデオメッセージ
が流された他,ケイン国連軍縮担当上級代表及びトート包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)準備委員会事務局長による基調講演が行われた。
10時45分から12時40分まで行われたセッション1では,「核兵器のない世界」に向けた軍縮・不拡散教育の役割をテーマに議論を行い,パネリストから,議論の出発点として核兵器を使用したら何が起きるのかにつき知識を身につけ,本質を理解すること,意見の異なる人との議論において相手の考えを理解すること,感性による学び(初等教育)と理性による学び(高等教育)の相互作用の重要性,などが指摘された。
15時30分から17時15分まで行われたセッション2では,中東非大量破壊兵器地帯構想を事例として,軍縮・不拡散教育における多面的思考のあり方について議論が行われた。冒頭,本国際会議のファシリテーター代理であるポルホ・フィンランド外務省政務局大使から,本件国際会議の現状および見通しについて報告が行われ,続いて,本件構想の実現に向けた課題および軍縮・不拡散教育の役割について議論が行われた。議論において,パネリストから,中東地域における信頼醸成や安全保障上の懸念解消といった観点からの軍縮・不拡散教育の役割や,中東地域の非核化について,政治や戦略の問題ではなく,モラルの問題として捉えるべきといった意見が出た。また,国家の成り立ちや歴史的経緯に基づくイスラエルの核政策の特異性に言及がなされる一方,NPTが崩壊すれば域内全ての国が損害を被るのであり,同条約を駆け引きの道具とするべきではないとの指摘がなされた。
9時30分から12時45分まで行われたセッション3では,軍縮・不拡散教育の実践に焦点を当て,教育者およびNGOの経験と見解をテーマに議論が行われた。パネリストから,国境や民族を越えた普遍的な価値観・目標を共有する重要性や,軍縮・不拡散教育におけるモラルと政策の両輪的視点の必要性,異なる教育対象(将来の政策実務担当者,青少年,児童,一般市民)による方法論の違い,などについて発言があった他,出席者からは,啓蒙的な運動だけではなく,平和学を含め高等教育における軍縮教育の理論的構築が必要であるとの指摘がなされた。
16時45分から行われた総括会議及び閉会式では,各セッションのモデレーターから議論の概要報告が行われ,共同議長の武藤軍縮不拡散・科学部審議官がフォーラム全体の総括を行った後,幅広い主体間における,軍縮不拡散の実施に向けた対話や協力の強化や,若い世代へのアプローチ,ソーシャルメディアを含む双方向的なコミュニケーション機能の活用を含む軍縮・不拡散教育の促進に向けた決意を表明する長崎宣言を採択して閉会した。
フォーラム前日の9日(木曜日)には,外務省主催レセプションが行われた他,2日目(11日(土曜日))の午後(14時00分~16時00分)には,学生とフォーラム参加者との交流プログラムが行われ,地元中学生及び高校生を含む若い世代による軍縮・不拡散教育の取組発表が行われた。
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