軍縮・不拡散

ジュネーブ軍縮会議(CD)における
兵器用核分裂性物質生産禁止条約に関する集中討議
=概要と評価=

平成18年5月31日

 5月17日から19日まで、ジュネーブ軍縮会議において兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)に関する集中討議が行われたところ、概要及び評価は以下のとおり。

I.概要

1.総論

(1)今回の討議は、長年CDが作業計画をめぐる意見の相違から停滞していることへの危機感から本年の会期で議長を務める6議長が作成した年間スケジュールに基づき開催されたもので、活発かつ具体的な議論が行われた。特に、18日にラドメーカー米国務次官補が出席し米国のFMCT条約案及びマンデート案を提出したことに各国の関心が集まり、活発な議論が行われた。

(2)本討議は、サブテーマ毎に(17日:定義、スコープ、18日:ストック、その他、19日:検証及び遵守)、各国からの専門家の参加を得て行われた。

(3)我が国は、専門家を派遣するとともに、事前に条約の範囲(スコープ)、ストックの取り扱い、定義、検証問題等FMCTに関する主要な論点を整理する作業文書を提出することにより積極的に議論に貢献した。

2.米国の条約案及びマンデート案提出

(1)ラドメーカー国務次官補は18日の演説で、米国の多国間主義及びCD重視の姿勢を打ち出した上で、CDにおけるリンケージ問題を強く批判し、FMCT交渉開始の重要性を強調。

(2)条約案は、将来の生産を禁止対象とし、既存のストックについては取り扱わず、また検証に関する規定をもたないというもの。

(3)米国のFMCT交渉のマンデート案は、有効な検証は不可能であるとの米の立場に基づき、既存の合意されたマンデート(シャノン・マンデート)から「国際的・効果的に検証可能」との要素を削除した内容。

(4)各国は、米が多国間主義及びCD重視を強調したことを歓迎。また、条約案及びマンデート案の内容については今後の詳細な検討が必要であるとしつつも、2004年以降本件について殆ど中身のある発言を行っていない米国が具体的な提案をしたこと自体は評価した。

II.評価

(1)全体として、FMCTの各論に踏み込んだ実質的な議論が行われ、FMCTの交渉開始に向けた機運を高める上で一定の効果があったと考えられる。

(2)今回の会合において、特に我が国を始めとする西側各国が本国からの専門家の派遣や作業文書の提出を行ったことが、実質的な議論を行う上で効果的であった。我が国の作業文書も、議論に具体性を与えるものとして一定の評価を得たものと思われる。

(3)米国が多国間主義及びCD重視の姿勢を打ち出すとともに具体的な条約案やマンデート案を提出し、年内にも交渉を妥結させたいと積極的な姿勢を示したことは評価しうる。リンケージ問題の克服は容易ではなく、条約案自体も今後各国の検討に委ねられることになるが、今回の米国のFMCTに対する積極的な関与を契機としてFMCT交渉開始に向けた機運が高まることが期待される。

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