
日豪による兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)に関する
第3回専門家会合の開催
(概要と評価)
平成23年6月2日
5月30日(月曜日)から6月1日(水曜日)まで,ジュネーブの国連欧州本部において,日豪両政府共催による兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)に関する専門家会合が開催された。今回は「検証」をテーマとし,須田軍縮代表部大使が議長を務めた。
1 概要
- (1)日豪両政府は,5月30日から6月1日まで,FMCTに関する専門家会合を開催した。これは,ジュネーブの軍縮会議(CD)においてFMCT交渉を開始できない状況の中で,専門家によるFMCTに関する実質的な議論の進展を目指すために,CDのサイドイベントとして実施したもの。
- (2)本件会合は,CD加盟国及びオブザーバー国を対象に開催され,約45か国が出席。このうち,我が国を含む多くの国は本国の専門家も出席。
- (3)今次会合では,FMCTの主要論点の一つである「検証」について,第2回会合での国際原子力機関(IAEA)や化学兵器禁止機関(OPCW)の専門家との意見交換を踏まえ,検証の目的や範囲,検証と定義の関係,既存の検証手段(IAEA保障措置等)の有効性を中心に活発な議論が行われた。
- (4)我が国からは,須田明夫軍縮代表部大使が議長を務め,本件における我が国のリーダーシップを示した。また吉田謙介軍備管理軍縮課長,専門家として日本原子力研究開発機構核物質管理科学技術推進部核物質管理室の山口知輝主査が出席し,我が国の経験に基づくFMCTの「検証」に対する考え方を提示するなど積極的に発言し,議論に建設的に貢献した。
- (5)今次会合の結果は,日豪両政府からCD公式本会議に報告される予定。
2 評価
- (1)今次会合では,議長としてFMCTの主要論点の一つである「検証」について,これまでCDでなされてこなかったレベルでの深い技術的な議論を行うことができた。計量管理や封じ込め・監視(C/S)といった既存のIAEA保障措置手段をFMCTにおいてどのように適用しうるのか,また新たにどのような手段が必要となるか等につき実質的な議論をさらに深めることができた。我が国は,経験に基づいて建設的に議論に貢献し,出席者から評価を得た。
- (2)CD加盟国及びオブザーバー国中,約45か国が出席し,また一部主要国からは本国の専門家を派遣することで,FMCT交渉開始に向けた各国の熱意がうかがわれた。他方,中国や,唯一交渉に反対しているパキスタンが欠席するなど,交渉開始に向けた見通しは予断できない。
- (3)過去2回の会合と同様,今次会合の結果がCD公式本会議に報告されることにより,将来のCDにおける交渉の議論に資することが期待される。我が国が重要な核軍縮措置の一つと位置づけているFMCTの交渉開始に向けた気運を高めるべく引き続き努力していく考え。