平成18年9月25日
9月20日、ニューヨークの国連本部において、包括的核実験禁止条約(CTBT)フレンズ外相会合が開催され、我が国からは、伊藤大臣政務官が団長として出席したところ、概要と評価は以下のとおり。
本会合は、CTBT発効促進会議(2年に1度開催)が開催されない年にCTBT発効促進の機運を維持・強化するために非公式に開催される外相会議であり、会議の成果として閣僚共同声明を発出。今回が3回目(第1回、2002年。第2回、2004年。いずれも川口外務大臣(当時)が出席)。
今次会合には、共催国である我が国、豪州、カナダ、オランダ、フィンランド(EU議長国)を含め、55ヵ国が参加した(豪州、オランダ、フィンランド、ノルウェー、韓国、ウクライナ等18ヵ国からは閣僚級が参加)。また、田中国連軍縮担当次長も出席し、アナン事務総長のメッセージを代読した。
冒頭、トゥオミオヤ・フィンランド外相より、前回の外相会合以降、発効要件国であるコンゴ(民)及びベトナムを含め批准国が増加したことを歓迎する旨の開会挨拶があった。
その後、ボット・オランダ外相による閣僚共同声明(英文・和文仮訳)の紹介の後、伊藤大臣政務官より、昨年、NPT運用検討会議及び国連首脳会合における2つの失敗にもかかわらず、第4回CTBT発効促進会議等はCTBTの早期発効を求める強いメッセージを発することができた、我が国は唯一の被爆国として、広島及び長崎における経験を通じて、未署名・未批准国がこのような国際社会の声に耳を傾け署名・批准に向けた行動を速やかに取るように呼びかけたい等と述べた(発言英文)。
これに引き続き18ヵ国の各代表が、日本をはじめとする共催5ヵ国のイニシアティブに対して謝意を表明しつつ、CTBTが核軍縮・不拡散における重要な柱として地域及び世界の安全にとり極めて重要であること、核実験モラトリアムの継続は重要である一方で、法的拘束力のあるCTBTの早期発効が重要であることなどを発言。
最後にダウナー豪外相が、CTBTが世界の安全保障を高めることに寄与することを希望する等と発言した後、閣僚共同声明を発出して閉会した。
ステートメントを行う伊藤大臣政務官
(イ)CTBTは、NPTの無期限延長を可能にした1995年NPT運用検討会議における合意の不可分の一体をなすものであり、CTBTの早期発効は、2000年NPT運用検討会議で核軍縮・不拡散の目標を達成する実際的措置として位置付けられている。
(ロ)CTBTは核兵器に利用可能な物質、技術、知識の拡散防止に向けて重要な貢献を行う。CTBT早期発効問題における進展は、2007年春から始まる2010年NPT運用検討会議準備プロセスの積極的な成果に資する。
(ハ)CTBT未署名・未批准国、特に発効要件国に対し、可及的速やかにCTBTを署名・批准することを要請する。
(二)CTBT検証制度は、核実験の検証という第一義的な機能に加え、津波警報機関や他の防災警戒制度に対する貢献を含め科学及び民生上の利益をもたらすであろう。
本件外相会合終了後、記者会見に臨む伊藤大臣政務官
トートCTBTO(包括的核実験禁止条約機関)準備委員会事務局長と会談を行う伊藤大臣政務官
(1)今回のCTBTフレンズ外相会合には、核兵器国の英、仏、露を含め前回(42ヵ国)を上回る55ヵ国より参加者が得られたところ、CTBTを強力に支持する国の輪が広がっていることを印象づけるとともに、CTBT発効促進の機運を維持・強化することができた。
(2)我が国は、ハイレベルでの代表派遣を通じて主催国の一つとして主導的役割を果たしたが、これは唯一の被爆国である我が国が核軍縮・不拡散を推進する上でCTBTを極めて重視している姿勢を示す上で有意義であったと考えられる。
(3)CTBTの発効促進に向けた政治的モメンタムを維持・強化する努力は核実験実施に対する抑止力になっている(核実験は1998年以来一度も行われていない)ところ、今次CTBT閣僚共同声明の発出は、こうしたモメンタムを高める上で有意義であった。