人権・人道

児童の権利条約第3回政府報告に関する市民と関係省庁との意見交換会について

平成18年5月12日 18時00分―20時00分
(於 外務省)

:以下の内容は、本件会合の要旨であり、すべての発言・質問を記載するものではありません。また、(1)特定の個人や団体等に対する批判、(2)本件条約に直接関係のない事項に対する発言は、本件会合の趣旨を踏まえ掲載しておりません。)

【参加者】

外務省ホームページでの公募に応募した一般参加者約60名

【概要】

1.政府側からの発言

(外務省)

1.外務省が国際協力の観点から行った条約の実施措置として主に以下の3点が政府報告のポイントとなる見込み。

(1)2つの選択議定書(「武力紛争における児童の関与に関する児童の権利条約の選択議定書」及び「児童の売買、児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利条約の選択議定書」)を締結した。外務省は、関係省庁と連携しながらこれらの実施に努めている。

(2)児童の商業的性的搾取の問題について積極的な取組を行ってきている。いわゆる横浜会議(第2回児童の商業的性的搾取に反対する世界会議(2001年))の開催、人身取引対策(関係省庁連絡会議、行動計画の策定)、2003年2月には、児童のトラフィッキングに関するシンポジウムの開催などがその具体例である。

(3)また、災害、紛争の影響を受けた児童の支援を積極的に行ってきている。特に、一人一人の能力強化をめざす「人間の安全保障」の観点に基づき、ODAを活用。具体的には、津波、パキスタン大地震等の被災児童の支援を積極的に行った。

2.事前の質問の一部に対する回答以下のとおり。

(1)本条約は、武力紛争や、性的搾取等を含め何らかの困難な状況におかれている児童が、途上国、先進国を問わず存在しているという現状を受けて、児童の権利の保護・促進するために策定されたもの。国際的にも高く評価されており、現時点で192の締約国数がある。

(2)条約に関しては、条約上の義務の規定の達成をめざすために、児童の権利委員会が設置されており、各締約国は、条約上の規定に基づいて政府報告を提出する義務がある。

(3)提案及び勧告は、締約国を法的に拘束するものではないが、我が国としては、条約を誠実に遵守するとの立場を踏まえつつ、適切に対処していきたいと考えている。

(内閣府)

1.内閣府は、政府の、青少年育成施策の総合調整を行う立場から、平成15年に策定された青少年育成施策の中長期的な方向を示す青少年育成施策大綱に基づき各種施策の推進を図っている。このような立場から、第3回政府報告の作成に関しても、条約の解釈・実施を担当する外務省と協力してとりまとめに当たっている。

2.内閣府として政府報告のポイントとなるものは、事前の意見に関連する事項としては次のとおり。

(1)青少年育成については、青少年育成施策の推進体制の整備が挙げられる。平成15年度には青少年育成推進本部が設置され、青少年育成施策大綱が策定された。大綱の見直しについては、策定からおおむね5年後の平成20年頃に見直しを行う予定。見直しの際には、我が国の児童が置かれている状況等をよく吟味して行いたい。

(2)個別の施策について、まず食育については、栄養の偏り、不規則な食事の増加等の問題があることを受け、国民が健全な食生活を実践できるよう平成17年6月に食育基本法が成立した。また、平成18年3月に食育推進基本計画が策定されたところであり、政府報告にも記載予定である。同基本計画は、平成18年度から22年度までの5か年を対象としたものであり、今後は、食育を国民運動として推進していく方針である。

(3)ジェンダーフリーとの関係で、条約の様々な規定に関し多数の意見をいただいた。昨年12月に閣議決定された男女共同参画基本計画(第2次)では、社会的性別(ジェンダー)について、明確な定義を置くとともに、発達段階を踏まえない行き過ぎた性教育等の事例を例示している。今後とも正しい認識の定着に努めたい。

(警察庁)

(1)外務省と連携して政府報告の作成に当たっている。警察庁では、2002年9月に少年の非行の防止及び保護を通じて少年の健全な育成を図るための警察活動に必要な事項を定めた少年活動警察規則を策定し、これに基づき児童に関連する活動を行っている。この一環で研修等において、新たに採用された警察官や承認した警察官に対し、人権に関する教育や少年の保護活動等に関する教育を行っている他、少年補導職員等については、児童の権利の擁護に配意した適正な職務執行を目的とするための専門的な教育を行っている。児童虐待については、警察でも重要な課題と位置づけており、2002年3月には「虐待防止対応マニュアル」を作成し、都道府県警察に配布している。早期に児童虐待を発見するため指導等を行ってきている。また、被害児童の特性に応じた保護支援にも取り組んでいる。

(2)市民社会との協調として、警察では、2002年から毎年、「東南アジアにおける児童の商業的・性的搾取に関するセミナー及び捜査官会議」を開催しており、東南アジアにおける児童の商業的性的搾取や被害児童の保護を含む取り組み等について各国捜査機関や、NGO代表者等と意見交換を行ってきており、第3回政府報告に記載する方向。

(法務省)

 事前の意見につき以下のとおり。

(1)現在、通常国会に、14歳未満の少年の少年院送致を可能とすることや、警察官による調査手続の整備等を盛り込んだ少年法等改正案を内閣として提出しているところ。この改正案についても、本条約に関連する限りにおいて、報告する予定。

(2)質問にあった、児童ポルノ罪は被害ある犯罪であることを法律に明確に書き込むべきとの点につき、児童買春・児童ポルノ禁止法は、議員立法であり、法律の趣旨に関しては、「よくわかる児童買春・児童ポルノ禁止法」(森山真弓議員・野田聖子議員編著)の説明によると、児童ポルノに関する罪の処罰の趣旨は、いくつかの内容があるが、児童ポルノの製造、提供等の行為が、児童ポルノに描写された児童の心身に有害な影響を与えるのみならず、このような行為が社会に広がるときには、児童を性欲の対象としてとらえる風潮を助長することになるとともに、身体的及び精神的に未熟である児童一般の心身の成長に重大な影響を与えるとあることから、こうしたことも法益として保護されているということが考えられる。

(3)平成13年5月及び12月に人権擁護推進審議会の答申により、平成14年に新たに独立行政委員会を設置し、人権侵害による被害の救済を図るための人権擁護法案を提出したが、平成15年10月に衆議院の解散により廃案となっている。その後国会に再提出するにはいたっておらず、現在、省内において法案について検討を行っている。

(文部科学省)

文部科学省に関する第3回政府報告に記載する事項は多岐にわたるが、主なものとして以下の6点が挙げられる。

(1)教員の研修。文科省においては、各都道府県、教育委員会等における法定研修である初任者研修等の機会において、人権に関する研修を含めた研修を行っている。また、独立行政法人教員研修センターが行う各都道府県の指導主任を対象とした児童の権利条約を含めた人権に関する研修を実施。

(2)学習指導要領に基づき、児童の権利条約に留意して学校全体を通じて人権に配慮した指導を行っている。各学校において人権に関する教育も行われている。

(3)大学入学資格について。従前より、国籍・人種・性別等にかかわらず、すべての人に対して大学入学資格を取得する手段を確保するため高等学校卒業程度認定試験を行っている。また、2003年に制度改正を行い、各大学の個別審査により各個人の能力を適切に審査した結果、高等学校卒業と同等以上の実力があると認められる人に対しては、入学を認めるとの制度改正を行った。

(4)障害のある児童生徒の教育について。能力、可能性を最大限に伸ばして、社会参加するための必要な力をつけられるよう、ひとりひとりの障害の程度に応じた支援に関する取組みを行っている。盲・聾・養学校、中学校特殊学級、通級において、特別の教育課程、特別な教科書等を整備。また、施設設備についても、障害のある児童生徒に配慮するよう指導をしているところ。
 障害のある児童と障害ない児童生徒、また、地域社会の人々が交流あるいは共同学習することはすべての人にとって人間性を豊かにするということに大きな効果があると考えているので、期待している。

(5)いじめについては、どの児童にも起こりうるとの基本的認識のもと、指導を行うとともに、家庭、地域社会における取組を進めている。1996年の文部いじめに関する専門家会議の内容を教育委員会に周知徹底している。対策として、心の教育の充実、スクールカウンセラー、相談員を実施。

(6)体罰については、学校における学校教育法で厳に禁止されている。その趣旨について、生徒指導担当者を対象とした会議等において周知徹底を図っている。また、児童生徒に対して懲戒を行う際には、当該児童生徒から、事情あるいは意見を聴く機会を設け、児童生徒の状況に留意して、真に教育的効果を有するよう配慮することにつき、各研修を通じて行っている。

(厚生労働省)

児童の権利委員会の最終見解において勧告がなされた体罰、児童虐待防止や被害者保護といった問題については重要課題として必要な対応を図っており、これらを中心に報告することを検討している。

(1)児童虐待については、平成16年に、通告義務の拡大等を内容とする改正児童虐待防止法に基づき、児童虐待防止対策協議会の開催や虐待事例検証委員会の実施等により虐待防止の徹底を図っている。

(2)児童福祉法の改正については、児童相談所の役割の重点化・明確化や児童福祉司の配置基準見直し等により、地域の児童相談体制の充実を図っている。

(3)児童福祉所に入所している児童の権利擁護については、苦情申し立ての仕組みとして、第3者機関の関与の追加等を内容とする児童福祉法最低基準の改正を行い、取組を促している。

2.参加者からの主な発言

3.上記2.を受けてた政府側からの回答

(外務省)
(内閣府)
(警察庁)
(法務省)
(文部科学省)
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