2005年11月
国際熱帯木材機関(ITTO)の第39回理事会が、11月7日(月曜日)~12日(土曜日)までの6日間、横浜市において開催され、わが国からは、外務省、林野庁、横浜市等からなる代表団が出席した。
今回の理事会には、インドネシア、マレーシア、メキシコ、ブラジル、コートジボアール、コンゴ共和国等の熱帯木材生産国及びわが国、米国、スイス、ノルウェー、韓国、ニュージーランド、EU等の消費国(計40カ国と1地域)の政府代表のほか、FAO、UNFF等の国際機関、木材業界団体、NGO等が参加した。
7日の開会式においては、アター理事会議長、中田横浜市長、ソブラルITTO事務局長、ロドリゲス・ガイアナ先住民問題担当大臣、クイン・マレーシア産業造林・一次産品大臣、前田林野庁長官、リー国際森林研究連盟(IUFRO)会長によるスピーチが行われた。
アター理事会議長及びソブラルITTO事務局長からは、1986年、ITTOの設立以来の日本及び横浜市の献身的な支援への謝意表明が行なわれたほか、2006年末が期限となる現行協定を改定するための最終的な交渉が2006年1月に行われるが、熱帯林保有国及びITTOにとっても重要な機会であるので、障害を乗り越えて妥結するよう期待する。また、消費国に対してはITTOの財政基盤をさらに拡大し、今後も生産国に対して支援して頂くようお願いする旨の発言があった。
中田横浜市長からは、熱帯林は人類の財産であることを認識し、持続可能な森林経営を推進する必要がある。国際都市横浜市として今後もITTOに協力していきたい旨が述べられた。
前田林野庁長官からは、森林の持続可能な経営と保全に取組んでいるITTOに対して敬意を表するとともに、我が国として持続可能な森林経営の達成を著しく阻害する要因となっている違法伐採問題に対する取組みを推進していくことへの決意が述べられた。また、現在行われている協定改定交渉が次回交渉で終結し、ITTOが地球規模の環境保全に対し更なる貢献を行なうことへの期待が述べられた。
第16回理事会決議3に基づき、インドネシアから、特にパプア州における種の持続的な管理と不正な貿易に対処するため、「Merbau」(学名「Intsia bijuga」と「Intsia palembanica」の2種)について付属書IIIへの掲載を提案したい旨の発言があった。
また、EUより、次回理事会において、ITTOとCITESとの協力の下に付属書掲載のためのガイドラインの開発やワークショップなどを実施するプロジェクトを提案予定であり、EUは拠出を含め支援するとともに、各国に対しても協力を求める旨発言があった。
1994年の国際熱帯木材協定が2006年12月末に終了するため、2007年以降のITTOの活動の方向性を打ち出す新たな協定の策定に向け、現在、協定改定交渉が行われている。
協定改定交渉会議のパラニャス議長及び協定改定交渉作業部会の議長でもあるアターITTC議長より、これまで過去3回にわたって行われた「協定改定交渉」の報告及び議論の争点について報告があった。特に、来年1月16日から27日までジュネーブにおいて予定されている「第4回協定改定交渉」については、最後の交渉の機会であり、各国とも最終合意に向け努力してほしい旨の要請があった。また、会期中、改定交渉に向けての非公式な会合が随時開催され、各国代表による意見交換が行われた。
第29回理事会決議において、生産国に対し1)ITTO目標2000の達成及び持続可能な森林経営の障害となっている要因の特定、2)障害要因を克服するための行動計画を策定することが決議されている。今次理事会では、メキシコに対して行われた支援についての調査報告、ITTOフォーマットの効果的な利用のための人材育成ワークショップの進捗状況についての報告、及び「熱帯林経営の現状報告」に関する進捗状況の報告が行われた。
日本からは、持続可能な森林経営を阻害する違法伐採は、木材生産国の森林のみでなく木材輸入国の森林経営にも影響を及ぼすものであること、政府調達の対象を合法性が証明された木材とする措置の導入を検討している旨の発言があった。また、基準・指標に関するワーキンググループを来年6月にホストすることを表明した。
事務局より、2か年事業計画(2004年-2005年)の実施状況についての報告及び2か年事業計画(2006年-2007年)の提案が行われた。特に、理事会の戦略的政策課題の一つとして、違法伐採対策強化のための「トラッキング・システムの検討、違法伐採の影響調査、森林法の強化等の取組」等に取組むことが提案され、日本はこれを強く支持する旨表明した。
また、日本からは、「ITTOの活動を広報することは極めて重要と認識。本部を有する横浜市民、日本国民にもITTOの活動を広く紹介し、ITTOの重要性を認識してもらう必要がある。日本語のweb-siteの充実、パンフレットの作成・配布などをこの中に盛り込み、さらに、英語版のweb-siteについても、データベース、資料等参照できるよう改善をお願いしたい」旨発言し、同事業計画に盛り込まれた。
第27回理事会決議4に基づき、フェローシップ選考パネルの議長(伊藤康一理事会副議長)より選考結果が報告され、委員長よりフェローシップ・プログラムの実施状況について報告が行われた。フェローシップ・プログラムは、1989年に開始され、これまで30カ国、750人以上の研修生の人材育成に役立てられている。我が国は、本件フェローシップ・プログラムに対し、15万ドルの拠出を表明した。
今回の理事会では、12件の新規プロジェクトが承認され、14件のプロジェクト及びフェローシップ・プログラムについての拠出が決議された。日本は、パプアニューギニアの「持続可能な森林資源の管理」や、メキシコの「持続可能な熱帯林経営のための基準・指標」のプロジェクト等に対し、402万1千ドル(外務省347万7千ドル、林野庁54万4千ドル)の拠出を決定した(決議1)。
また、事務局より「2006年-2007年の2か年事業計画」(決議2)の決議案が提案され、承認された。
(1)2006年の理事会議長及び副議長が選出され、議長には前外務省地球環境課長伊藤康一氏、副議長にはルイス・マキャベロ駐日ペルー大使が選出された。
(2)次回以降の理事会の開催予定は以下のとおりである。
第40回:2006年 5月29日~6月2日 メリダ(メキシコ)
第41回:2006年 11月6日~11日 横浜市
(1)今次理事会において、2006年理事会議長に伊藤康一前外務省地球環境課長が選出された。2006年12月末に「1994年の国際熱帯木材協定」が期限切れを迎えることから、2006年はITTOホスト国である我が国がITTOでの議論を積極的にリードしていくことが極めて重要な年となる。我が国としては、引き続きITTO事務局運営やプロジェクトへの資金協力を支援していく所存である。
(2)2006年-2007年の2か年事業計画において、違法伐採対策強化のための「トラッキング・システムの検討、違法伐採の影響調査、森林法の強化等の取組」等に取組むことの重要性が確認された他、我が国より広報活動の重要性を指摘し、日本国民にITTOの活動を広く紹介するための日本語のweb-siteの充実、日本語パンフレットの作成・配布、さらに、英語版のweb-siteについても決議等のデータベース化を提案し、我が国の意向が事業計画に盛り込まれたことは大きな成果であった。
(3)ITTOの活動は熱帯林保有国における植林・造林、荒廃地の復旧、森林法関連整備、統計整備、人材育成等の各種のプロジェクトの実施を通じて、熱帯林保有国の貿易と環境の両立に大きく貢献してきた。今後は、2006年1月16日から27日までジュネーブにおいて予定されている「第4回協定改定交渉」において、熱帯木材生産国及び消費国の双方が受け入れ可能な新協定の枠組み(目的、財政構造等)を策定し、今後のITTOの安定的な運営・活動を確保することが重要な課題である。