2005年6月
国際熱帯木材機関(ITTO)の第38回理事会が、6月19日(日曜日)~21日(火曜日)までの3日間、ブラザビル(コンゴ共和国)において開催され、わが国からは、外務省、林野庁からなる代表団が出席した。
今回の理事会には、インドネシア、マレーシア、フィリピン、ブラジル、コートジボアール、コンゴ共和国等の熱帯木材生産国及びわが国、米国、EU、スイス、ノルウェー、韓国等の消費国(計33カ国と1地域)の政府代表のほか、FAO、UNFF等の国際機関、NGO等が参加した。
18日の開会式においては、アルハッサン・アター理事会議長、ソブラルITTO事務局長、ヒューゲス・ンゴロンデル・ブラザビル市長、アレキサンドレ・バロ・チャンブリエル・ガボン林業経済・水資源・水産・環境大臣、ヘンリ・ドジョンボ・コンゴ共和国林業経済・環境大臣によるスピーチが行われた。
アルハッサン・アター理事会議長からは、「持続可能な森林経営についてはUNFFなどの場でも議論が進められており、すべての関係者に勝利をもたらす結果が出てくるものと期待している。またグレンイーグルズ・サミットにおいては、アフリカ問題と気候変動問題について具体的な話し合いが行なわれ、関連で森林問題も取り上げられることになっている。UNFFでは津波問題、紛争問題、認証問題について積極的な議論が行なわれた」旨の発言があった。また、ソブラルITTO事務局長からは、日本の資金協力について謝意が述べられるとともに、アフリカ地域で実施しているITTOプロジェクトの説明、アフリカ地域の森林現況、それに立ち向かうためのヤウンデ・プロセスの紹介とITTOが派遣したミッションの貢献についての発言があった。
ブラザビル市長からは国際機関の会議が当市で開催されることへの謝意、ガボン林業大臣からはヤウンデ・プロセスの成功についての決意と役割、また、コンゴ共和国林業大臣からは、サミットにおけるアフリカについての取扱い、ITTOプロジェクトがコンゴ川流域における持続可能な森林経営や基準・指標、認証に果たす重要性が述べられた。
(1)ITTOプロジェクトサイクルの改善と強化のための方策(議題11)
第37回理事会決議3に基づき、要請プロジェクトの審査を行う専門家パネルのTORの改訂に関する検討及びプロジェクトの評価の基準・採点票に関するコンサルタントの報告が行われた。
本年3月に行なわれた第29回専門家パネルに引き続いて2日間をかけて、コンサルタントが作成したプロジェクトサイクル改善のための方策について議論・検討した結果を報告するとともに、同専門化パネルで検討された新たな評価システムについて、第30回、第31回の専門家パネルで試行的に適用することについて報告された。
(2)ITTO目標2000(議題12)
第29回理事会決議2において、生産国に対し、1)ITTO目標2000の達成及び持続可能な森林経営の最も大きな障害となっている要因を特定すること、2)右障害要因を克服するための行動計画を策定することが決議されている。今次理事会では、ガボン及びリベリアに対し行われた支援についての調査報告、「熱帯林経営の現状報告」に関する進捗状況の報告が行われた。
ガボンからは、ITTO目標2000達成に向けて森林法を制定して取組みを進めていること、リベリアからは2つの国立公園において米国、世界銀行及びNGOの支援を受けてリベリア・パートナーシップを作成し地域住民を交えた取組を行っている旨の紹介がなされた。
(3) 持続可能な木材生産及び貿易との関連における森林法の施行(議題13)
第31回理事会において、1)生産国・消費国の自主的な協力の下、熱帯木材製品の国際貿易に関する輸出入データについて調査・分析の実施、2)森林法の施行、違法貿易等に対処していくための生産国の取り組みや人材育成の支援、3)違法な木材製品の貿易を阻止するため他の国際機関と協力し、本問題に関する地球規模での調査を行うことが決議された。
これを受けて、昨年11月FAOにおいて、ITTOとFAOとの協力の下、森林・林業における法の遵守を高めるためのベスト・プラクティスの開発と適用に関する検討がなされ、今次会合では違法伐採問題解決と森林法の遵守に向けてどう取組むべきかについての検討結果が報告された。
我が国からは、「持続可能な森林経営と公正な貿易を実現していくうえで違法伐採問題への対処は極めて重要。まずは違法な木材を輸出しないことが大事であり、ITTOの知見とプロジェクト形成能力を活用することが効果的な対処の一つと考える。我が国としてはITTOに提出される違法伐採対策支援プロジェクト(人材育成、ガイドラインの策定等)を今後積極的かつ重点的に支援していく用意がある」旨発言をした。これに対し、米は「違法伐採の問題はグレンイーグルズ・サミットでも取り上げられる予定であり重要な問題である」との認識を示し、ペルーは「違法伐採問題への対応に努力すべく戦略を策定中」、コンゴ共和国は「違法伐採問題の根底には貧困があり、森林関連法の施行と政策の形成のための人材育成が急務である」旨発言した。
(4)提案決議案の承認(決議1)
今回の理事会では、29のプロジェクト、5つの事前プロジェクトについて承認がなされた。また、プロジェクト等への資金拠出に関しては、過去の理事会で承認されたプロジェクト等も含め15のプロジェクト、9つの事前プロジェクト及び活動へ拠出することが決議された(決議1)。
このうち、我が国は、地域社会による劣化林の復旧(インドネシア)、持続可能な森林経営によるチーク林の保全(ミャンマー)、コンゴの国立公園の生物多様性管理及び野生生物保護(コンゴ共和国)、アマゾンの森林管理(ブラジル)など15件のプロジェクト等に対し、355万ドル(外務省312万ドル、林野庁43万ドル)の拠出を決定した。
(1)第39回理事会開催地等について
次回の理事会の開催予定は以下のとおりである。
第39回:2005年11月 7日~12日 横浜市
(2)第40回理事会開催地等について
通常の手続きでは、理事会開催の18ヶ月前までに開催地等が決定することになっている。来年春に予定される第40回理事会については、パプア・ニュー・ギニア(PNG)及びメキシコが会議開催地への立候補を表明しているため、両国間で協議を行い、開催地を調整・決定することで合意した。