
「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会」に関するNGO意見交換会
平成21年6月
別添1:出席者(PDF)
1.概要
(1)5月25日、外務省において、「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会」に関するNGO意見交換会が開催され、同国際委員会の共同議長を務める川口順子元外務大臣、阿部信泰同諮問委員及びピースボート川崎共同代表他24名のNGO関係者が参加した(出席者リスト別添1(PDF)
)。
(2)本委員会は、昨年7月の日豪首脳会談において、福田総理(当時)とラッド豪首相の間で、日豪共同イニシアティブとして立ち上げることが合意されたもので、共同議長として川口順子元外務大臣とギャレス・エバンス元豪外相が任命された。核軍縮・核不拡散及び原子力の平和的利用を取り扱い、2010年5月に開催されるNPT運用検討会議の前に、具体的な勧告等を含む報告書を提示する。報告書の提示までに4回の会合を開催予定。
(3)本委員会の本会合について、第1回会合は2008年10月20日から21日までシドニーで、第2回会合は2009年2月14日から15日までワシントンDCで、第3回会合は6月20日から21日にモスクワで開催された。今後、第4回会合を10月に広島で開催する。また、2009年5月初頭に中南米地域会合(於:サンティアゴ)、5月下旬に北東アジア地域会合(於:北京)が開催された他、中東(9月~10月、カイロ)、南アジア(10月、ニューデリー)の各地域で地域会合を開催する。
2.NGO側の主たる主張
被爆者団体を含む多数のNGO関係者が集い、今後の同委員会の活動に関し、活発かつ率直な意見交換が行われた。NGO側より、本年1月に「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会」日本NGO連絡会を立ち上げたところであり、2010年NPT運用検討会議に向けて世論を高めていきたい旨を表明し、核兵器禁止条約に向けた提言を行うべき、安全保障における核兵器の役割縮小のために大胆な提言をすべき等の問題提起を行った。また、多くの参加者より、早期に核兵器禁止条約を実現させるべきとの意見が出された。
3.意見交換会の内容(抄)
川口議長、NGO参加者の代表である川崎ピースボート共同代表、同じく内藤日本反核法律家協会理事の主な発言は以下のとおり。
(1)川口議長による開催挨拶、二回会合の結果概要報告、北東アジア地域会合の結果概要報告
川口順子共同議長は冒頭、多くのNGO関係者の本件意見交換会への参加に感謝の意を表するとともに、第二回会合及び北東アジア地域会合の結果概要について以下のとおり発言した。
- 第二回会合では被爆者代表から話をしていただき、感謝申し上げる。米政府要人数人との会合を持ち、米のCTBT批准と他国への働きかけ、カットオフ条約の交渉開始、米露間のSTARTⅠ後継条約交渉、中国の核軍備の不透明性と削減に関する戦略対話等が必要であることを述べたところ、米政府の前向きな反応に勇気づけられた。
- 第二回会合の結果概要については特に、(イ)委員会は核軍縮・不拡散・原子力平和利用の3本柱及び核テロ対策について、核兵器のない世界に向けて実施すべき「行動計画」を提言し、2010年運用検討会議に貢献することを主要目的として行動指向的で実際的な報告書を2009年末までに作成・発表し、同会議以降も見据えることが議論された。(ロ)行動計画は直近の将来、中期段階、最終段階の3段階について作成することとし、中期段階と最終段階の分岐点(例えば「ゼロへの眺望点」)の定義づけ(核兵器の数、ドクトリン、警戒態勢等)、NPT体制とNPT非加入3カ国の関係、核軍縮と不拡散のバランス、不拡散を保証する原子力平和利用のあり方(燃料供給保証、拡散抵抗技術)等について議論が行われた。(ハ)委員会が3人の被爆者から話を聞く被爆者セッションも行われた。
- 北東アジア地域会合においては、(イ)米露の核軍縮と共に、中国の核軍縮措置の必要性、米の拡大抑止の生物・化学兵器に対する役割などについて議論された。(ロ)核不拡散については、北朝鮮の核問題の現状と見通しについての情報・意見交換及びこれに関する六者会合への支持と期待、IAEA保障措置の各国による追加議定書締結の必要性などについて議論された。(ハ)原子力の平和利用については、原子力発電への関心の高まりの中で不拡散を確保する必要性や、核燃料の供給や使用済み燃料の蓄積の問題等について議論された。
(2)NGO側参加者による挨拶
川崎ピースボート共同代表は、本件意見交換会の開催に当たり以下のとおり発言した。
- 本年1月に10以上のNGOが参加してICNND日本NGO連絡会を立ち上げた。連絡会では核の先制不使用、非核兵器地帯、核兵器禁止条約、核不拡散のあり方などについて市民レベルで取り組んでおり、2010年のNPT運用検討会議に向けて世論を高めていきたい。
(3)NGO側参加者による問題提起
内藤日本反核法律家協会理事は、NGO側の問題提起として以下のとおり発言した。
- 核廃絶には世界的な現在の流れを逃さず取り組むべき。人類全体を見る視点から、委員会の報告書には核兵器の廃絶を明確に記載し、期限を付して被爆者生存のうちに核兵器の使用を非合法化すべきであり、透明性を確保した包括的核兵器禁止条約を報告書に明記すべき。
- 委員会は安全保障における核兵器の役割を早期に縮小すべき旨について中間報告等で提言し、ポストSTARTの動きに中国、インド等の核兵器保有国も巻き込んでいくべき。短期目標の実現はオバマ大統領の在任中に進むことが必要で、委員会として大胆な提言をしてほしい。
(4)川口議長による回答
川口議長は、NGO参加者からの問題提起及び意見に対し以下のとおり回答した。
- 報告書の年内完成を目指しており、中間報告書を作成する考えはない。また、報告書に最終的な廃絶の時期まで書くことができるかは今後の議論が必要である。
- 核兵器廃絶のためには現実の一歩先を行くことが必要だが、廃絶とは反対の考え方を持つ人々に対しても説得的でなければならない。
- 核保有国は、核兵器使用に対する態度をあいまいにすることで抑止力を確保しているという考え方もある。
- 非核地帯の議論に関連して、核兵器の価値を減らすことが安全保障に資するとの考えに移行していくことが重要である。
- 核兵器禁止条約には当然触れたいと考えている。核兵器禁止の条約化の理論構築にはNGOからも助力を得たい。
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