
「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会」に関するNGO意見交換会
平成21年1月
別添1:出席者(PDF)
別添2:NGO側席上配布資料(PDF)
1.概要
(1)昨年12月24日、外務省において、「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会」に関するNGO意見交換会が開催され、同国際委員会の共同議長を務める川口順子元外務大臣、阿部信泰同諮問委員及びピースボート川崎共同代表他20名のNGO関係者が参加した(出席者リスト別添1(PDF)
)。
(2)同国際委員会は、昨年7月の日豪首脳会談において、福田首相(当時)とラッド豪首相の間で、日豪共同イニシアティブとして立ち上げることが合意され、共同議長として川口順子元外務大臣とギャレス・エバンス元外相が任命された。同国際委員会は、2010年NPT運用検討会議の成功に貢献し、核兵器のない世界に向けた中長期的な観点からの提言を取りまとめた報告書を、同会議に先駆けて発表することを主な目的としている。
(3)また、昨年9月の国連総会の際、麻生総理とラッド豪首相がニューヨークにおいて共同発表を行い、同国際委員会の委員が確定したことを発表した。昨年10月20日及び21日には第一回会合がシドニーにおいて開催され、今後、本年2月にワシントンにおいて第二回会合が、6月にはモスクワにおいて第三回会合が開催され、報告書の取りまとめを行う第四回会合は、本年10月本邦において開催される予定。
2.評価
被爆者団体を含む多数のNGO関係者が集い、今後の同委員会の活動に関し、活発かつ率直な意見交換が行われた。特に多数の参加者は本意見交換会を、国際委員会共同議長とNGOを含む市民社会が議論を深める貴重な機会として受け止め、NGOは、「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会」に関する日本NGOの連絡会を立ち上げる意図を表明した。また、同国際委員会の機会に委員会参加者に対し、被爆体験を伝える機会を設けることが重要との意見が多くの参加者より出された。NGOは、加えて、核兵器禁止条約に向けた提言を行うべき、安全保障における核兵器の役割を縮小すべき、国際委員会の地域会合で北東アジア問題を取り扱うべき等の問題提起を行った(NGOが配布した問題提起のペーパー別添2(PDF)
)。また本件意見交換会については、今後も継続的に開催されるべきとの考えが共有された。
3.意見交換会の内容(抄)
川口議長及びNGO参加者の代表である川崎ピースボート共同代表の主な発言は以下のとおり。
(1)川口議長による開催挨拶及び第一回会合の結果概要報告
川口順子共同議長は冒頭、多くのNGO関係者の本件意見交換会への参加に感謝の意を表するとともに、外相時代の軍縮・不拡散分野での活動を参加者に紹介しつつ、福田前総理から共同議長への就任要請があり議長職を務めることとなった点を含め、同国際委員会設立までの経緯を報告し、第一回会合の結果概要について以下のとおり発言した。
- 議長職は意見を集約し取りまとめを行うという困難な役回りではあるが、同国際委員会は、日本がリーダーシップを発揮できる場であり、核兵器廃絶に向けて一歩一歩前進するために、現実的かつ実際的な行動指向型の報告書を取りまとめるため努力したい。国際社会においては、現在核兵器廃絶に向けて情勢の変化が見られ、皆が核軍縮が必要であると思い始めている。キッシンジャー他の発言は我々を勇気付けるものであるし、オバマ次期大統領の選挙公約がそのまま政策に反映されるかは分からないが、我々は受け身ではなく、働きかけていくことが重要である。
- 第一回会合の結果概要については特に、(イ)核軍縮については、核がなくても安全という事を示す必要があり、核兵器のない世界に向けた具体的な道筋として、戦略核及び戦術核の廃絶に向けた「最後の踊り場」をどう捉えるか。またそこからゼロに向かうまでのプロセスをどのように構想するか。また英仏中を核軍縮プロセスに参加させる方途やインド及びパキスタンを核軍縮・不拡散の枠組みに取り込む方途について議論が行われた。(ロ)核不拡散については、核テロに対する国際的な対応、NPTにおける不拡散義務の履行を確保する手段としての安保理の役割、追加議定書の普遍化及びIAEAの強化、ミサイル技術管理レジームの強化、NPT上の脱退問題及び非NPT加盟国への対応等について議論が行われた。(ハ)原子力の平和的利用については、増大する原子力需要に応えつつ、拡散リスクを抑制していくため、3Sを確保する手段や燃料供給保障、燃料供給サイクルの国際的管理の方途、拡散抵抗技術の有用性や産業界の役割について議論が行われた。
(2)NGO側参加者による挨拶及び問題提起
川崎ピースボート共同代表は、本件意見交換会の開催にあたり以下のとおり発言した。
- 本件意見交換会の開催に対し敬意を表するとともに、NGOとしては、同国際委員会を是非応援していきたい。今日ほど核兵器廃絶に向けた追い風が吹いている時はなく、川口議長が発言されているとおり、是非とも同委員会の報告書が、政治や社会に対しインパクトのある行動指向型のものとなる事を期待している。NGOとしては、世論を高めるという点で貢献したい。NGOとしては、同国際委員会に関し来年一月に連絡会を立ち上げる予定である。
- NGOの総意としての国際委員会に対する問題提起は以下のとおり。(イ)核兵器禁止条約へのプロセスを開始するための提言を行うべき。(ロ)「核の傘」からの脱却を目指し、核によらない完全保障環境の確立に向けた具体的提言を行うべき。(ハ)世界的な原子力拡大の可能性が語られる中、核兵器に転用可能な物質、技術及び施設に対する国際的な規制をより強化すべき。(ニ)六者協議による北朝鮮の核問題解決は、北東アジア地域における持続可能な非核及び平和のためのシステムにつながっていく必要があり、同国際委員会の地域会合をそのためのステップとし、地域会合において具体的な議題を設定する事が必要。
(3)川口議長による回答
川口議長は、NGO参加者からの意見及び問題提起に対し以下のとおり回答した。
- 核兵器禁止条約については、第一回会合でも議論された。
- 核兵器の役割を縮小していくためには、国際社会における信頼関係を構築していくことが非常に重要である。
- 被爆者より本件国際委員会のメンバーに対し、悲惨な被爆の体験を改めて提示し、共感を持ってもらうことが必要と考えており、第二回ワシントン会合において、被爆者の証言を行う機会を設けられるよう動いているところである。
- NGOとは、核兵器のない世界という目標を共有している。その目標に向けた道筋については、色々な考え方や運動がある。これらが相互に相乗効果を持つことが重要と考える。
- 本日いただいたご意見は、今後の会議運営を考える上で非常に貴重なものであり、NGO出席者の発言を委員会の場で活用していきたい。
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