
「国際刑事裁判所(ICC):現在と将来の課題」セミナー(結果概要)
平成21年3月23日
(英文はこちら)
3月18日、インドの首都ニューデリーのシェラトン・ホテルにおいて、日本政府とアジア・アフリカ法律諮問委員会(AALCO)との共催により、ICC関連セミナー「国際刑事裁判所:現在と将来の課題」が開催された。在インド外交団、国際機関代表、インド外務省、インド国際法学会、大学関係者など92名が参加し、日本のICCへの貢献、日本のICC加盟に至るまでの経験についての基調講演が行われた他、ICCを巡る諸問題やAALCOとICCとの将来の協力関係など多岐にわたる議論が行われた。概要は以下のとおり。
1.全般的評価
(1)オープニング・セッションにおいてICCの日本人判事である齋賀富美子判事が基調講演(英文)を行い、ICC活動について臨場感のある実務的な説明を行ったことは、参加者から高い評価を受けた。
(2)同じくオープニング・セッションにおいて、小松一郎駐スイス大使(日本のICC加盟時の外務省国際法局長)が、日本のICCへの貢献、ICC加盟に至るまでの日本の経験等について基調講演(英文)を行い、セミナー参加者の理解を深めることに貢献した。
(3)その他、午前・午後のセッションにおいてICCを巡る諸問題(国連安保理とICCの関係、アジア諸国のICC加盟促進の方策、2010年の第1回ICC規程見直し検討会議の課題等)について、建設的な議論が行われた。
2.議論の概要
(1)午前のセッション:小議題「国際刑事法の漸進的発達とその概況」
- インド政府代表より、インドはこれまでローマ規程の採択以来ICCの発展に積極的に貢献してきたが、1998年に開催された「ローマ外交会議」において、ローマ規程に署名しなかった経緯を説明しつつ、2010年にウガンダで開催予定の第1回ICC規程検討会議には出席し、ローマ規程の見直し等について、インドの基本的な考え方を表明する旨の発言があった。
- 在インド大学関係者より、国際刑事裁判制度の歴史に触れて、1990年代のルワンダ国際刑事裁判所(ICTR)、旧ユーゴ国際刑事裁判所(ICTY)、その他の国際特別法廷の設立に至る歴史的経緯を説明するとともに、国際社会の関心事である重大犯罪を犯した個人を国際特別法廷で訴追、裁判する際に惹起された問題点について適宜説明した。
- 赤十字国際委員会(ICRC)南アジア地域代表より、ローマ規程における国際人権・人道法の諸原則へのICRCの歴史的貢献やICCへのICRCの具体的協力について説明を行った。
(2)午後のセッション:小議題「ICC:現在の進展と今後の挑戦」
- AALCO事務局長より、AALCO加盟国、特にアジア諸国の加盟数が14カ国と少ない理由として、ICCの裁判管轄権行使が各国の主権を制限するのではないかという懸念、ICC加盟の条件としての国内法改正の必要性の有無、米国籍者の引渡しを留保する米国との2国間協定の存在がICC加盟促進の阻害要因となっている等の問題点についての言及があり、こうした問題点を乗り越える方策として、AALCOがICC加盟に必要な知識を普及させることを目的とした研修を実施していく必要性が指摘された。
- インドの国家人権委員会代表等より、侵略犯罪の定義を含め、ウガンダで開催予定の2010年ICC規程検討会議の諸課題につき適宜説明があった。
- インド政府関係者より、2010年開催のローマ規程検討会議に向けて、ローマ規程の見直しや侵略犯罪の定義等についてインド政府が独自の検討を行っていることが説明された。