国際刑事裁判所（ICC）第11回締約国会議（結果概要）
平成24年11月21日
11月14日から21日にオランダ（ハーグ）で開催された国際刑事裁判所（ICC）第11回締約国会議の概要は，以下のとおり。
1 一般討議（要人挨拶を含む）
- （1）要人挨拶では，ICC規程を最初に批准した国であるセネガルのサル大統領が，ICCに対する信頼，普遍性，公平性の重要性を指摘しつつ，ICCに対する一貫した支持を表明した。また，潘基文国連事務総長に代わってオブライアン国連法律顧問が，ICCは他の国際刑事裁判所と異なり紛争終結前に捜査を開始する場合がある点を指摘しつつ，国連はICCとより一層協力していく用意がある旨を表明した。
- （2）各国の一般討論演説では，3月に出されたICC初の判決への好意的評価，並びに非協力問題，普遍性強化及びICCの効率性向上に向けた更なる取組みの必要性等が指摘された。
- （3）我が国は，この10年間のICCの発展を評価しつつ，引き続き取組むべき課題として，普遍性強化，非協力問題の克服，補完性原則，ICC効率化及びICCと安保理の協力強化の必要性に言及するステートメント（英文）
を行った。
2 次席検察官の選出
次席検察官（1名）を選出する選挙が行われ，ベンソーダ検察官が提示した3名の候補のうち，ジェームス・スチュワート候補（カナダ）がASP構成国の過半数の投票を獲得し，次席検察官に選出された。任期は，「厳粛な約束」（ICC規程第45条）を行う日から9年間。
3 被害者信託基金（TFV）理事会理事の選出
11月30日に3年の任期が終了する5名の理事の後任を決定するTFV理事会理事選挙が行われ，我が国の野口元郎・元クメール・ルージュ法廷最高審裁判官の他，ブラブラ（コンゴ民），ビカ=フレイベルガ（ラトビア，再選），トスカノ=アモレス（エクアドル），レーン（フィンランド，再選）の5名がコンセンサスで新理事に選出された。（関連プレスリリース）。任期は，2012年12月1日から3年間。
4 裁判官の指名に関する諮問委員会委員の選出
裁判官の指名に関する諮問委員会委員として，我が国の福田博・元最高裁判所裁判官を含む9名がコンセンサスで委員（任期3年）に選出された。同委員会は，ICC裁判官の選出に当たり，各締約国が，適切な資質を備えた人物を選出するための一助とするために，各締約国が擁立する裁判官候補者の資質を，ICC規程に照らして評価し，締約国に報告するために新たに設置されるもの。
5 協力
全体会合において協力問題に関するパネルディスカッションが行われ，締約国等がICCに対する協力義務を迅速かつ効果的に実施することの重要性等に言及した決議が採択された。
6 補完性
全体会合において補完性に関するパネルディスカッションが行われ，各国内におけるICC規程の効果的実施の強化及び国際社会の関心である最も重大な犯罪を行った者に対する各国内における訴追能力の向上の重要性を確認し，訴追能力の強化に当たっては国際社会の関与を歓迎する内容の決議が採択された。
7 手続証拠規則の改正
手続証拠規則第132条を改正し，第一審裁判部の公判準備手続において1名またはそれ以上の裁判官がこれを行うことを認める規定（第132条の2）を新たに定めることが決定された。
8 被害者問題
被害者からの訴訟参加申請が裁判所で滞留している問題に関し，議長団及び裁判所が検討を行うこととなった。また，被害者賠償に係る原則の確立に向けて裁判所が引き続き検討を行い，その結果を第12回ASPに報告することとなった。
9 2013年度予算
2013年度予算案が採択され，予算総額を115，120，300ユーロとし（ただし，仮庁舎の賃借料5．9百万ユーロのうちホスト国オランダが2．95百万ユーロを，また，メキシコが13万ユーロを自発的に拠出することになったため，締約国の分担金で賄われる予算額は112，039，600ユーロ（前年度比0．94％増）である），これとは別に予備費の補填のため50万ユーロを充てることが決定された。なお，今年の予算審議はASP前に事実上妥結しASPで大きな議論とならなかった。このことは，多くの関係者から好意的に受け止められた。
10 第12回ASPの日程
次回の日程を2013年11月20日～28日（於：ハーグ）とすることが決定された。
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