1.14日(現地時間),オランダのハーグで開催された国際刑事裁判所(ICC)締約国会議(ASP)第11回会合において,ICC被害者信託基金(TFV)理事会理事選挙が行われ,我が国の野口元郎・元カンボジア・クメール・ルージュ特別法廷最高審裁判官(法務省法務総合研究所国際協力部長兼外務省国際法局国際法課検事)が,コンセンサスで理事に選出されました。
2.ICCは今年3月,コンゴ民主共和国におけるルバンガ事件について,ICCとして設立以来初めての有罪判決を出し,8月には同事件に係る被害者賠償に関する決定を行いました。今後,被害者賠償の実施に向けて,TFVの活動に期待が寄せられています。
3.野口元郎・元カンボジア・クメール・ルージュ特別法廷最高審裁判官は,同特別法廷において裁判官として被害者賠償に取り組んだ実績があります。ICCにおいて新たに被害者賠償を実施していこうとする現在の状況において,野口元裁判官がTFV理事に選出され,その知見と経験を生かしてICCにおける被害者賠償の実施に貢献することは,ICCの活動を一貫して支持している我が国にとっても重要な意義を有するものです。
4.我が国は,引き続きICCの活動に積極的に貢献していきます。
(参考1)国際刑事裁判所(ICC)
国際社会全体の関心事である最も重大な犯罪(集団殺害犯罪,人道に対する犯罪,戦争犯罪,侵略犯罪)を犯した個人を,国際法に基づき訴追・処罰するための,史上初の常設
の国際刑事法廷。設立条約たるICCローマ規程は,1998年7月に採択され,2002年7月1日に発効。我が国は,2007年7月17日に加入書を寄託し,同年10月1日に105番目の加盟国となった。2012年10月現在の締約国数は121。裁判所はオランダのハーグに所在。
(参考2)ICC被害者信託基金(TFV)理事会
ICCの被害者信託基金(TFV)は,ICCローマ規程に基づき,ICC第1回締約国会議において設立された。TFVは、ICCの管轄権の範囲内にある犯罪の被害者及びその家族のために,①裁判所の有罪判決に基づき被害者賠償を行うこと,及び②ICCが管轄権を行使している事態において,被害者及びその家族に物理的リハビリテーション,物資供与及び精神的リハビリテーション等を供与することを任務とし、その資金は、国家、団体、個人等からの任意拠出金等によって賄われる。
TFVはこれまで,上記②の役割を果たすため,コンゴやウガンダにおいて,性的暴力の被害者や元児童兵,誘拐された児童に対する支援など,約84,000人の被害者等を対象とする支援プロジェクトを行ってきたが,今後は,上記①の損害賠償の実施のための活動も開始される。
TFV理事会は,個人資格で行動する5名の理事(5地域グループから各1名。任期3年。1回のみ再選可。)で構成され、TFVのために国家,団体,個人などからの任意拠出を募るほか,年1回以上の理事会を開いてプロジェクトの内容,基金の配分等に関する決定を行う。
(参考3)今回の選挙で選出されたTFV理事会の理事
サヤマン・ブラブラ(Mr. Sayeman Bula-Bula,コンゴ民)
野口元郞(Mr. Motoo Noguchi,日本)
バイラ・ビカ=フレイベルガ(Ms.Vaira Vike-Freiberga,ラトビア,再選)
デニス・トスカノ=アモレス(Mr. Denys Toscano Amores,エクアドル)
エリザベス・レーン(Ms.Elisabeth Rehn,フィンランド,再選)