
国際刑事裁判所(ICC)第9回締約国会議(結果概要)
平成22年12月10日
12月6日から10日まで,米国(ニューヨーク国連本部)で開催された国際刑事裁判所(ICC)第9回締約国会議の結果概要は以下のとおり。
1.一般討議(含:要人挨拶)
- (1)本年5月にカンパラで開催された規程検討会議に続き潘基文国連事務総長が参加。同事務総長は,国際社会は説明責任の時代(age of accountability)に突入したとして,国際刑事司法制度の中心であるICCの活動を支持する必要性を訴えた。また,サントス・コロンビア大統領が締約国会議に出席する初めての国家元首として一般討議に参加。同大統領は,同国の和平と正義へのコミットメントを表明するとともに同国の和平と正義の分野における取組を紹介した。さらにオカンポ検察官による活動報告の中で,北朝鮮軍が韓国において戦争犯罪を行ったとの連絡を受けICC検察局は予備的な検討を開始したことが紹介された。
- (2)各国が行った一般討議におけるステートメントでは,多くの国がスーダン・バシール大統領のチャド及びケニア訪問を念頭に非協力の問題への対応の必要性,被害者支援の重要性,普遍性やガバナンス向上に向けた取組強化の必要性などに言及した。我が国からは,ICCをより効率的,効果的,普遍的かつ制度的に持続可能な裁判所とする観点から,ICCの普遍化(特にアジア諸国の加盟促進),補完性の原則,ICCのガバナンスの向上及び規程改正手続において刑事法として求められる厳格さの重要性について言及するステートメント(英語)(PDF)
を行った。
2.2011年予算
- (1)リーマンショック以降の経済状況を受け,欧州諸国が軒並み予算について極めて厳しい立場に固執。2012年以降,庁舎建設費や仮庁舎賃料という予算増要因を抱えていることを見据えつつ,我が国を含む多くの国が予算財政委員会(CBF)勧告(1.6%増)ではなく名目ゼロ成長(ZNG)を原則とすべきと主張。
- (2)他方,ICC及びCBF,アフリカ諸国,北欧諸国,豪州等からCBF勧告以上の削減は裁判所の活動に重大な支障をもたらし逆に効率性を低下させる等の主張が行われ,ZNGを主張する国との間で激しく対立したが,ICCの活動の支障を避ける観点からオランダのインフレ率(1.3%)に限って予算増を認めるとの妥協案(予算総額1億0360万7900ユーロ,CBF勧告比ユーロ31万1700ユーロ減)が示され,コンセンサスが成立した。
3.規程改正ワーキンググループ
来年の締約国会議までの間,ニューヨークにおいて非公式協議を開催し,既存及び新規の改正提案並びに本件ワーキンググループの作業方法(手続規則)に関する議論を重ねた上で報告書にまとめ,来年の締約国会議において検討することとなった。
4.協力問題
バシール・スーダン大統領のチャド及びケニア訪問という個別の事例についての議論は行われなかったが,一般論として非協力が発生した場合のルール作りの必要性につき我が国を含め多くの国から主張され,締約国会議の下に置かれている議長団会合で検討を行った結果をまとめた報告書を次回締約国会議に提出することになった。
5.ガバナンス
締約国会議の下に独立監督メカニズムを立ち上げること及びハーグ作業部会の下にガバナンス問題に関するスタディ・グループを立ち上げることが合意された。
6.第10回ASPの日程
次回の日程を2011年12月12日~21日(於: ニューヨーク)とすることが決定された。
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