平成20年5月29日
5月28日、PSIの発足5周年を記念する会合(シニアレベル会合)が、PSIに参加する88カ国の代表が出席して米ワシントンにて開催されたところ、概要以下のとおり(我が国からは佐々江外務審議官が代表として出席。)。
新たにサウジアラビア、モロッコ等がPSIへの参加を表明し、参加国数が91か国となった旨説明があり、いくつかの新規参加国の代表が席上挨拶を行った。また、同日発出されたブッシュ大統領による声明(要旨下記)につき紹介があった。
[ブッシュ大統領声明要旨]
(1)今日の世界が、冷戦時代とは異なり、ならず者国家やテロリスト等の非国家主体による新たな拡散の脅威に直面しているとしつつ、NPTやIAEA保障措置、輸出管理レジーム等既存の不拡散の取組を強化する手段としてのPSIの意義を強調。
(2)北朝鮮及びイランの核問題が「引き続き重大な拡散の危険」であるとした上で、それぞれにつき以下のとおり発言。
(イ)我々は引き続き六者の枠組みを通じ北朝鮮の核問題に取り組む。北朝鮮は、寧辺の核施設でのプルトニウム生産を停止し、同施設の無能力化を行っているが、更に、すべての核計画に関する完全、正確かつ検証可能な申告、プルトニウム生産施設の破壊、核兵器関連物質を生産するためのその他のルートの放棄、すべての拡散活動の終了を含めたその他の義務を履行しなければならない。我々は、朝鮮半島が再度非核化されることを望む。
(ロ)我々はイランによる核兵器の保有を許容しない。イランはテロリストへのWMD拡散の潜在的ルート。我々は、多くの国際的パートナーとともに、外交的な孤立化、安保理決議に基づく制裁の実施、及び追加的な金融圧力によりイランへの圧力を引き続き強めていく。同時に、我々は、イランが核兵器の野望を放棄するならばイランに経済的、政治的及び安全保障上の利益を与えるとする、交渉による解決に向けた扉も開けておく。イランが原子力の平和的利用を行うべきでないとは言わないが、拡散懸念を増大する濃縮・再処理活動を伴わないものでなければならない。ブッシュ大統領は、平和的利用を行う国が濃縮・再処理を行うことを不要とする燃料供給保証に係る提案を行っている。交渉の扉をくぐるために、イランはまず検証可能な形でウラン濃縮計画を停止しなければならない。交渉を核兵器獲得のための時間稼ぎに利用することは許されない。核武装したイランは、中東及び世界の平和にとって脅威。
(3)PSIの成功例の一つとして、2007年2月、弾道ミサイル関連物資のシリアへの移転を、関係する4か国が共同して阻止した事案が紹介された。また、北朝鮮やイラン、シリアに向けた阻止活動が世界各地で行われている旨発言。
(1)PSIのみならず不拡散のための幅広い国際的な取組について取り上げたセッションに、我が国、豪州、カナダ、スペイン、ア首連の代表がパネリストとして参加。
(2)我が国(佐々江外審)は、概要以下のリードオフ発言を行った。新たな拡散の脅威が国際社会による努力の隙間をくぐり抜け広がっており、さらに広範にわたる取組が必要とした上で、近年進展が見られる分野として、決議第1540号及び北朝鮮やイランに関する一連の決議に見られる国連安保理の役割の増大、拡散金融に関するFATFの取組、SUA条約2005年議定書、及び航空阻止に係るICAOでの議論について発言。また、我が国自身の取組として、昨年のPSI海上阻止訓練「Pacific Shield 07」の成果に言及しつつ、アジア太平洋地域をはじめとしてPSIへの理解の増進と支持の拡大に一層努める旨述べた。
会合の終わりに、PSI参加国の政治的コミットメントを新たにするものとして「ワシントン宣言」が取りまとめられ、発出された。