平成24年1月
日中韓自由貿易協定(FTA)産官学共同研究は,3か国の産業界,官界,及び学界のメンバーからなる委員会(以下「委員会」)が,2010年5月から2011年12月までに計7回の会合を行った。同共同研究の報告の概要は,以下のとおり。
(1)農林水産品・鉱工業品
農林水産品及び鉱工業品について,各国の国内生産や貿易の動向,各国の関税率や関税に係わる制度の現状等についてレビューした上で,あり得べき日中韓FTAが及ぼし得る影響等について議論が行われた。右を踏まえ,日中韓FTAの形成を通じ,ウィン-ウィン-ウィンの関係を築けるよう,三国間の経済の連携を深化・強化すべき,具体的には,3か国のセンシティビティに十分配慮しつつ関税や非関税措置を削減すべき旨を委員会は提言した。
(2)その他,原産地規則,税関手続・貿易円滑化,貿易救済についても話し合われ,各分野での協力の強化や,日中韓FTAにおける貿易ルールのあり方等について,議論を行った。
サービス貿易について,各国の現状・政策について意見交換が行われた。右を踏まえ,3か国のサービス貿易は赤字を示しており,成長余力が高いこと及び3か国のサービス産業は相互補完的であることを認識するとともに,サービス貿易における障壁の削減による経済への影響にかんがみ,日中韓FTAの締結により三国間のサービス貿易を促進することを委員会は提言した。
投資について,3か国の対内投資法令の制度と投資障壁を分析したほか,3か国がこれまでに締結した投資協定及びEPA/FTAにおける投資規律等について意見交換が行われた。右を踏まえ,三国間の直接投資については,同地域の経済規模からすればまだ拡大する余地があり,外資に係る投資障壁を現実的かつ効果的な態様で削減し得ることを認識し,あり得べき日中韓FTAが域内投資をさらに活性化させる効果的な手段であることを委員会は確認した。
上記に加えて,SPS(衛生植物検疫),TBT(貿易の技術的障害),知的財産権,透明性,競争政策,紛争解決,産業協力,消費者安全,電子商取引,エネルギー・鉱物資源,漁業,食料,政府調達,環境が取り上げられた。
これらの分野について各国の現状・政策について意見交換が行われ,日中韓FTAにおける貿易・投資に関するルールや各分野での協力のあり方等について,議論が行われた。
特に知的財産については,各国の国内法の現状及び国内知的財産政策について意見交換が行われた。また,日中韓FTAにおいて知的財産の保護を強化することの重要性に関して共通の理解を共有すると共に,日中韓FTAの枠組みの下で知的財産権法令の執行を強化し,また三国間の協力を強化することを委員会は提言した。
委員会は以下の認識で一致した。
日中韓FTAは以下の分野に取り組むこととなるだろうと予想される。 物品貿易,サービス貿易,投資,その他の分野(これらのみには限られないが,含むことになろうと想定される分野:SPS,TBT,知的財産権,透明性,競争政策,紛争解決,産業協力,消費者安全,電子商取引,エネルギー・鉱物資源,漁業,食料,政府調達,環境)
委員会は,将来の日中韓FTA交渉に適用される以下の4つの指針的原則を提言した。
委員会は,各国政府に対し,あり得べき三国間FTAの取り進め方を決定し,適当とされれば,時間的な枠組み,及び/または,交渉の指針となるロードマップ等の行動方針を公表するよう提言する。日中韓FTAを取り進める全行程において,強い政治的意思が必要となるであろうことにつき認識を共有する。次なる行動のために,研究の成果を,日中韓経済貿易大臣会合及び日中韓外務大臣会合を通じ,2012年の日中韓サミットに報告する。