盆野禎宏株式会社タスコ常務取締役の講演の概要は以下の通り。
当社は,1971年創業で,従業員4名で防災関連商品の輸出入を行っている浪速の小さな商社である。今回のセミナーでは,当社のように小さな会社でもEPAを活用できるということを共有したい。
当社は消防車,ポンプ(消防用,産業用),消火器,ホース等を東南アジア(主にインドネシア)へ輸出している。創業当初,インドネシアでは消火器が設置されている施設が少なく,当社が輸出を始めたことにより,同国において消火器の設置が進み,今では商品名である「ヤマト」が消火器の代名詞となっている。
当社は,EPAの活用を検討した当初,消火器の輸出に際し,全ての部品が日本製という製品はなく,また,部品のコストの情報を開示したがるメーカーはまれであるため,原価計算が難しく,EPAを活用しての輸入は不可能だと思っていた。しかしながら,平成23年に外務省及び大阪商工会議所主催で行われたEPAセミナーにおける企業のEPA活用事例を拝見し,これなら当社でも可能と思い,EPAを活用しての輸出を考えた。
そこで,輸出品の原産性を調べるために,消火器を分解し,それぞれの部品ごとの原産国及びHSコードを確認した。その結果,完成品のHSコードが各部品のコードと異なるのであれば,日本製と見なされることがわかった。その後,製品のグルーピングにおける効率化を図り,最終的には,特定原産地証明書取得の専任者を置かずに,短時間で特定原産地証明書を取得できるまでに至った。このような当社の取り組みはマスコミの目にとまり,新聞・テレビ・ラジオ等の媒体で紹介されるようになった。
また,北九州の企業の方々には,EPAをサプライチェーンの中で考える際に,何に対してのコスト削減なのかということに留意すべき。この留意すべき点というのは,部品代・運賃へのコスト削減ではなく,売価総額に対してのコスト削減だという点である。このことは,販売価格への影響度が極めて大きいことを意味する。従って,企業は経営戦略として,積極的にEPA活用に取り組む価値があると思料する。