平成25年3月
別所健一外務省経済局南東アジア経済連携協定交渉室長の基調講演「日本のEPA・FTAについて」の概要は以下の通り。
地方企業の方々に,経済連携協定(EPA)のメリットを知って頂き,活用して頂くことが今回のセミナーの狙い。そのために,国のEPA政策のご紹介に加え,企業戦略の中におけるEPAの活用等について事例紹介を行う。
EPAは,モノやサービスの貿易の自由化だけでなく,投資,人の移動,政府調達,知的財産,競争,ビジネス環境整備等,様々な分野における日本と相手国との経済連携の強化を図るもの。WTO交渉が全体として膠着する中,EPA締結の動きが国際的に加速している。
日本のEPAの特徴として,EPA比率(EPA相手国との貿易額が貿易総額に占める割合)が必ずしも高くないことがあげられる。例えば,EUや米とFTAを締結している韓国のEPA比率が35%,米のそれが38%であるのに対し,日本は19%である。日本はこれまで13のEPAを締結しているが,このような状況の中,二国間のEPA交渉を進めており,また,日中韓FTA,RCEP(東アジア地域包括的経済連携),EUとの交渉も近く開始される見通しである。
日本のこれまでのEPAと米・EU等の先進国のFTAの自由化率を比較すると,日本の自由化率は高くない。高いレベルの経済連携の実現のためには,力強い農業との両立を図ることが課題。
日本では少子高齢化が進む中,アジアにおいては中間層が増え,個人消費は拡大。日本の経済成長のためにはアジアの活力を取り込むことが重要。対外直接投資を開始した中小企業の国内雇用は増加傾向にあり,輸出・海外直接投資は増益効果をもたらしている。この背景には,1)海外市場を開拓し,国内生産・輸出を伸ばす,2)海外拠点との生産分業により,日本からの高付加価値な中間財の輸出を伸ばす,3)海外の利益・配当を更なる国内研究開発・設備投資の原資とする等のビジネスモデルが存在することが考えられる。
2013年11月のASEAN関連首脳会議において,日中韓FTA交渉の開始及び東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の交渉立上げが宣言された。このようなFTAの広がりも見られる中で,最適なサプライチェーンを考え,関税削減・撤廃の利益を得ることが重要となっている。中小企業や地方企業の方々には是非ともEPAを積極的に活用して頂きたい。