経済

APEC食料安全保障担当大臣会合
(概要)

平成22年10月


1.会議概要

  1. (1) 10月16日及び17日,新潟市において,初めてのアジア太平洋経済協力(APEC)食料安全保障担当大臣会合が開催された(議長:鹿野農林水産大臣)。21のAPECメンバー・エコノミーから食料安全保障担当閣僚等が出席し,外務省からは山花大臣政務官が出席した。また,アジア開発銀行(ADB),国連食糧農業機関(FAO),国連食料安全保障危機ハイレベル・タスクフォース(HLTF),国際農業開発基金(IFAD),国連貿易開発会議(UNCTAD),世界銀行,国連世界食糧計画(WFP)が参加した。
  2. (2) 「持続可能な農業の発展」と「投資,貿易及び市場の円滑化」の2つをテーマとして議論を行い,その成果として「APEC食料安全保障新潟宣言」(別添1:英文(PDF)別添2:仮訳(PDF))及び「APEC食料安全保障行動計画」(別添3:英文(PDF)別添4:仮訳(PDF))が採択された。

2.主な討議の概要

(1)午前セッション「持続可能な農業の発展」

  1. ア 多くの閣僚が,人口増加に伴って食料の持続的増産が課題となる中で,各エコノミーが研究開発,人材育成,情報共有システムの構築といった分野で技術協力や技術移転に取り組んでいく必要がある旨発言。
  2. イ 気候変動の影響や災害に対応していく観点からの農地や水等の天然資源の持続的管理や,すべての者の食料へのアクセスを確保する観点からの流通等インフラ整備の必要性について指摘があった。

(2)ワーキング・ランチ

 山花政務官より,外務省の食料安全保障の取組についてスピーチを行い,G8ラクイラ・サミットで表明した2010~2012年の3年間で少なくとも30億ドルのインフラを含む農業開発支援を着実に実施していくこと,生産から流通までのバリューチェーンを通じた幅広い支援を重視していくこと,民間の農業投資に関し,投資受入国政府,現地の人々,投資家の3者の利益の調和及び最大化を実現するための行動原則を策定し,それを現場で具体化していくことを目指した「責任ある農業投資」(RAI)イニシアティブを今後とも推進していく考えであり,APECエコノミーの支持を得たい旨述べた(別添5:スピーチ日本語(PDF))。

(3)午後セッション「投資,貿易及び市場の円滑化」

  1. ア 多くの閣僚及び国際機関が,山花政務官の発言に言及しつつ,農業投資の促進が域内の課題となっており,生産性向上や雇用創出といった利点を最大化し,土地問題や公害等の負の影響を最小化する「責任ある農業投資」が重要である旨述べ,我が国のRAIイニシアティブへの広範な支持が表明された。また,途上エコノミーからは,農業投資は依然不足しており,この分野での先進エコノミーからの協力が必要である旨の発言があった。
  2. イ 農産物貿易について,域内全体に食料が流通するよう,その円滑化が確保されるべき旨や輸出規制の自制を求める旨の発言が多くなされた。
  3. ウ 農産物市場の信用強化について,透明性を確保して価格の不安定性に対応すべき旨やそのためのガイドライン作成の必要性,更に市場歪曲効果を有する措置を排除する必要性について指摘があった。

3.今次会合の評価

  1. (1) 将来に向けて食料安全保障がAPEC地域共通の課題であり,APEC地域の強みを活かし,経済技術協力,ネットワークの形成,政策協調を進め,農業生産性の向上と生産増大,環境問題への対応,貿易や流通等の改善等の課題に一致して取り組んでいくとの共通認識が醸成された。APECとして初めての食料安全保障担当大臣会合を開催したことは,時宜を得たものであった。
  2. (2) また,将来に向けた食料供給力の拡大のほか,農業投資の促進,食料及び農産物の貿易円滑化,農産物市場の信頼性の強化等広範な分野にわたって,APECエコノミーの共通認識を取りまとめた閣僚宣言が全会一致で採択され,各エコノミーより提案された62項目に及ぶ具体的措置からなる行動計画が策定されたことは,具体的な成果であった。
  3. (3) 特に,これまで国際場裡において我が国が推進してきたRAIイニシアティブが,米,中,韓等を含むAPECエコノミー及び国際機関の間に浸透し,閣僚宣言の中にRAIに対する支持と関係4国際機関による行動原則やベストプラクティスの策定に向けた取組への支持が明記されたことや,RAIを促進するための会合の開催が行動計画に盛り込まれたことは大きな前進。
  4. (4) 輸出制限を含む投資・貿易障害となる措置の新たな導入を抑制することにつき認識を共有し,このような措置の導入を今後一年間控えるとした2008年APEC首脳会合の現状維持の約束を2011年まで延長することを閣僚宣言に盛り込むことができたことは有意義。
  5. (5) 行動計画において,我が国より提案した,エコノミー間で農業技術や需給情報等の情報共有ウエブサイトとしてAPEC情報共有プラットフォーム(IP)を設立することにつき賛同が得られ,今後IPを通じた情報共有の促進が期待されている。

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