
第22回国際エネルギー機関(IEA)閣僚理事会
(概要)
平成21年10月

1.会議概要
(1)10月14及び15日、第22回国際エネルギー機関(IEA)閣僚理事会がパリで開催され、我が国からは、直嶋経済産業大臣及び吉良外務大臣政務官が出席した。今次理事会では、IEA加盟国28ヵ国に加え、非加盟国であり、エネルギー需要が高まる中国及びインド、並びに生産国として重要な地位を占めるロシアの閣僚級が出席(全体議長はオランダのファン・デル・フーフェン経済大臣)。また、各セッションには、キッシンジャー元米国国務長官、ダヴィニョン初代IEA理事会議長、パチャウリ気候変動に関する政府間パネル(IPCC)議長などの有識者もそれぞれ出席した。
(2)会議における議論の結果を踏まえ、IEA加盟国によるコミュニケ(英語本文、日本語仮訳)とIEA行動計画が採択された。このほか、IEA事務局と中印露各国との間で更なる協力に関する共同声明が個別に策定された。
(参考)IEA加盟国:オーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、チェコ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、日本、韓国、ルクセンブルグ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー(準加盟国)、ポルトガル、スペイン、スロバキア、ポーランド、スウェーデン、スイス、トルコ、英国及び米国の28か国。なお、OECD加盟30か国のうちアイスランド及びメキシコはIEAに未加盟。また、ECはオブザーバー参加。
2.主な討議の内容
(1)開会セッション 官民パートナーシップによるエネルギー課題への対応(14日午前)
- 初の試みとして開会セッションがダボス会議形式かつチャタムハウス・ルール(注:発言者の引用を不可とする自由討論)で行われ、東芝、シャープ、新日鐵、エネル、ルノー、エクソン・モービル、シェルなど主要なエネルギー企業が招待され、大いに活発な議論が行われた。
- 産業界からは、巨額なエネルギー投資を確保するためには、投資へのインセンティブをいかに刺激できるかが重要であるとの指摘があり、コペンハーゲンでの気候変動枠組条約第15回締約国会議(COP15)で明確な指針・目標が設定されることへの期待が表明されるとともに、投資を刺激するためには予見可能なルールの設定など安定的なエネルギー環境の枠組みの策定が不可欠である等の発言があった。
- 吉良外務大臣政務官からは、地球温暖化防止のための途上国・先進国・産業界によるWinWinWinのメカニズム構築の必要性を指摘の上、とりわけOECDが発電分野における原子力や再生可能エネルギーに関する輸出信用条件等の緩和等を推進することにより、官民が連携して地球温暖化対策が一層進められることを期待する旨発言した。
(2)第1セッションA エネルギー市場見通し(14日午後)
- エネルギー価格の乱高下を避けるために、市場の不確実性を排除し、透明性を確保することを再確認。そのため、IEAがエネルギーの需給のみならず金融面からも分析を行うよう求める意見が出された。
- 価格を歪めるような補助金については、エネルギー需要に望ましくない影響を与えることから、G20ピッツバーグサミットにおいても言及されたとおり、段階的な撤廃に向けてIEAが必要な分析を進めることが必要との要望がなされた。
- 直嶋経済産業大臣からは、安定的なエネルギー供給のためには投資の連携・促進が不可欠である旨指摘するとともに、明年にIEAが開催を検討している原油価格に関するセミナーに貢献していく旨述べつつ、金融面が原油価格に与える影響について更なる分析を行うようIEAに求めた。
(3)第1セッションB 「エネルギー安全保障」概念の拡大(14日午後)
- 世界の天然ガス需要の増加、特に発電需要などに対応したガスの重要性の増大やエネルギー源の多様化の重要性が指摘され、近隣国間による相互協力及びIEAの今後の活動に期待が示された。
- 吉良外務大臣政務官はリードオフ・スピーカーとして、エネルギー分野における非加盟国の重要性の増大、多くの途上国が参加する国際再生可能エネルギー機関(IRENA)との連携強化、ガス安全保障強化のための二国間及び多数国間の投資協定の重要性を指摘しつつ、IEAが適切な機能を果たすべきことを期待している旨、また、市場の透明性・安定性の確保のためにデータの整備等を通じた取組の向上が不可欠である旨発言した。
(4)第2セッションA IEAの今後の役割(14日夜)
- IEA設立35周年を記念し、IEAの創設を主導したキッシンジャー元米国務長官がIEAの役割と加盟国への期待につきスピーチを行った後、エネルギーをめぐる最近の環境変化や気候変動問題などグローバルな課題を踏まえたIEAの今後の役割について活発な議論が行われた。
(5)第3セッションA エネルギー技術の将来(15日午前)
- 地球温暖化対策の観点から、炭素隔離・貯留(CCS)や再生可能エネルギー、原子力などクリーンなエネルギー技術などに関する各国の具体的な取組が紹介された。また、エネルギー技術のためのロードマップ策定などIEAの今後の活動に期待が示された。
(6)第3セッションB よりクリーンで効率的なエネルギーの将来の構築(15日午前)
- パチャウリ気候変動に関する政府間パネル(IPCC)議長より「気候変動:コペンハーゲンにおける成功のための協調」について発言があり、その中で、鳩山総理が表明した25%削減目標を高く評価する旨述べた。
- 直嶋経産大臣はアニマトゥールとして、鳩山総理が表明したイニシアティブ等を紹介するとともに、国際省エネルギー協力パートナーシップ(IPEEC)などエネルギー効率の重要性などにつき発言した。
- 各国からは、COP15に向けて地球温暖化対策に合意すべく協調すべきである旨の意見が大勢を占めた。また、途上国を含めた既存の低炭素技術の普及の強化や新技術の研究・開発の重要性について発言があった。
(7)第2セッションB 新たなパートナーシップによるエネルギー課題への対応(15日午前)
- 各国は中印露の会合参加を歓迎するとともに、非加盟国との間での更なる協力の重要性や、どの分野に優先順位をおいて協力を行うかについて議論が行われた。
- 直嶋経産大臣から、アウトリーチの強化は、エネルギー安全保障及び地球温暖化対策の双方にとり重要である旨述べつつ、非加盟国向け訓練プログラムに対して資金的貢献の意思があることを表明した。