経済

第21回IEA閣僚理事会
(概要と評価)

平成19年5月15日

 5月14日~15日、パリにおいて第21回国際エネルギー機関(IEA)閣僚理事会がエノクセン・ノルウェー石油エネルギー相の議長の下開催され、我が国より甘利経済産業大臣、浅野外務副大臣他が出席したところ、概要と評価は以下の通り。

1.概要

(1)セッションの構成

(イ)2日間にわたる閣僚理事会では、「安定したエネルギーの未来に向けた取組」、「今日のエネルギー市場動向(資源ナショナリズム等)」、「環境面で持続可能なエネルギーの未来に向けた取組」、の3つの議題についてそれぞれ議論し、コミュニケ(別添)を採択。

(ロ)IEAへの加盟申請中であるスロバキアとポーランドも出席した。

(2)各セッションの概要

(イ)第1セッション(安定したエネルギーの未来に向けた取組)の前半では、ハリケーン・カトリーナ及びリタへのIEAの緊急時対応から得られた教訓、IEAの石油緊急時対応能力の改善、ガス供給途絶に向けた対応整備等の観点から、エネルギー安全保障上の短期的リスクへの対処につき議論が行われた。我が国より、石油需要が急増している中印等の主要非加盟国の緊急時対応能力を高める必要性、及びこれらの国々をIEAの緊急時対応システムに取り込む重要性につき指摘した。また、後半では、市場の透明性向上のための政策、エネルギー部門への投資に関する問題等の観点から、長期的なエネルギー安全保障の向上について議論された。

(ロ)第2セッション(今日のエネルギー市場動向)では、冒頭サザーランドBP会長(元WTO事務局長)より基調講演を行い、国家が市場を過剰に管理すると、資源国においては外国からの投資が停滞し、技術やマネージメントのノウハウへのアクセスがなくなるといった恐れがあるとの発言があった。我が国より、IEA加盟国は、投資、国際的ルールの遵守、供給リスクの除去の3つの観点からその対策を講じるべきであると指摘し、また「行き過ぎた資源ナショナリズム」を是正する上でのキーワードとして、「対話」、「共存共栄」、「信頼醸成」の3つを挙げたところ、各国から賛同を得た。

(ハ)第3セッション(環境面で持続可能なエネルギーの未来に向けた取組)では、省エネルギー政策推進を阻害する要因への対処、エネルギー技術開発のためのアプローチ等に関して議論が行われた。我が国より、気候変動問題、経済成長、エネルギー問題の3つを統合したアプローチが不可欠であり、国際的な省エネルギー推進のためには、1)加盟国、非加盟国を包含した幅広い取組み、2)セクター別ベンチマークというツールを活用した取組み、3)主要途上国の省エネ施策の策定・実施能力の向上、4)適切なレビューメカニズムの導入の4点が必要条件であると指摘した。また、革新的な技術開発が長期的なエネルギー使用量及び温暖化効果ガス排出量を大幅に削減するために必要であると付言した。

2.評価

 前回の2005年のIEA閣僚理事会以降、エネルギー価格の高騰、ロシア等における資源の国家管理強化の動き、気候変動問題の深刻化、ハリケーン・カトリーナ及びリタに対するIEAによる石油備蓄の緊急放出等、世界のエネルギー安全保障情勢を巡る大きな動きがあったことを省みつつ、これまでのIEAの活動の評価、今後の課題について閣僚レベルで議論を深めることができた。その結果、特に以下の点につき、IEA加盟国が共通の認識・行動に合意したことを評価。

(1)緊急時対応

(イ)石油
 ハリケーン・カトリーナ及びリタ(2005年)への対応が成功したことを踏まえ、今後IEAの石油緊急時対応メカニズムを一層精緻化し、強化することへのコミットメントを確認。

(ロ)ガス
 最近のガス供給の途絶の経験、液化天然ガス(LNG)貿易の増大とグローバルな天然ガス市場の発展等の動きを踏まえ、新たにガスの緊急時対応メカニズムを整備する研究を進める必要性につき認識を共有。IEAが、同メカニズム及び政策に関する助言を行うよう慫慂。

(2)エネルギー効率の改善/省エネルギー

(イ)G8グレンイーグルズ行動計画を支援する計画の一環として作成された、エネルギー効率の改善に関するIEAの具体的な提言を歓迎。

(ロ)加盟国及び主要非加盟国における省エネ目標の設定及び行動計画の策定促進、並びにエネルギー効率の改善状況に関するIEAによる評価及び報告。

(ハ)気候変動問題の解決にも役立つ原子力の活用(各国の政策に応じて)について前向きに評価。

(ニ)クリーンな石炭利用の促進、炭素回収・貯留(CCS)の全面的な実証と早期普及の推進。

(3)資源ナショナリズム

 エネルギー源・供給源・輸送ルートの多様化、市場原理の尊重、市場の透明性向上、生産国・消費国双方における安定的で予測可能な投資環境の整備等が有効な対抗策となり得ることについて確認。

(4)アウトリーチ

 以上の課題について、主要な非加盟国(中、印、露)との戦略的対話の強化を継続することの重要性を確認。

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