経済

IEA閣僚理事会コミュニケ(仮訳)
(2007年5月14-15日)

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  1. 我々、国際エネルギー機関(IEA)加盟国の大臣は、世界のエネルギー市場情勢をレビューし、エネルギー市場・政策の分析及びエネルギー危機管理において主要な国際機関であるIEAに対して指針を与えるため、パリで会合を開催した。我々は、これらの活動におけるIEAの貢献を高く評価し、IEAの役割と能力を一層強化することにコミットする。
  2. 我々は、近い将来、IEA加盟が期待されているスロバキアとポーランドによる本会合への参加を歓迎する。しかしながら、加盟国が拡大したとしても、IEA加盟国内の行動だけでは真に持続可能なエネルギーの未来を達成することは不可能である。それゆえ、我々は、IEAが、安全で持続可能なエネルギーの未来の達成とエネルギー貧困の撲滅に向けて、重要なパートナーと位置づけられる主要な非加盟消費国及び生産国との連携を強化することを歓迎する。今日、IEAは日々の活動においてこれらの国々の関与を強めているが、これは、世界のエネルギー市場の安定強化と持続性の確保といった共通の目的により動機づけられている。我々は、エネルギー対話を通じての我々のパートナーとの協力関係が永年にわたり強化されてきたことを認識し、IEAがアウトリーチの強化を継続するよう求める。
  3. 2005年の前回会合以降、世界は、これまで以上に大きなエネルギー問題に直面してきた。エネルギー価格は高止まり且つ不安定な状態が続いており、特に発展途上経済国にとって大きな負担となっている。地政学的リスクが増大し、投資コストは高騰している。資本支出は安定的な供給を確保するために必要なレベルに満たない状況にあり、二酸化炭素排出量はそれ以上の速度で増大している。
  4. 以上のような問題はあるものの、我々は、2005年の閣僚理事会で加盟国が一致して表明したコミットメント及びIEAに与えた指針に進展がみられていることを歓迎する。メキシコ湾岸の石油生産・精製施設の大半を操業停止に追い込んだハリケーン・カトリーナ及びリタの発生後に我々がとった対応は、集団としてのIEAの強さと優れた結束力及び決断力を示すものであった。我々は、将来の更なる供給途絶に対して対応する用意が出来ている。我々は、重大な供給途絶時における非加盟国との協力強化を含んだ、変容する市場の現実に対応可能な緊急時対応メカニズムの精緻化及び強化にコミットする。ガス市場では数度にわたり供給不安が生じ、透明性が欠如しているため、我々はまた、ガス市場に対する緊急時対応のメカニズム及び方針、並びにそれらがもたらしうる国際的な影響に関する助言を行うよう、IEAに要求する。
  5. 我々は、2005年のコミュニケにおいて、持続可能で安定的なエネルギーの未来を達成するために必要な行動にとって、現在欠けている部分を埋める為の戦略を求めた。それ以来、IEAは、より持続可能な方向に進むために必要な多くの要素を明らかにしてきた。その方向に進み始めることは、国家の政策及び実務において費用対効果の高い戦略に従うことを意味する。我々は、サンクトペテルブルグサミットで合意された省エネルギーに関する提言を歓迎した。我々は、G8グレンイーグルズ行動計画を支援する計画の一環としてまとめられた、新築の建築物の省エネ基準、自動車の燃費基準、電気機器の義務的省エネ基準等のエネルギー効率の改善に関するIEAの具体的な提言を歓迎するとともに、各国の実情に応じ、可及的速やかな実施を検討する。我々は、IEAが、エネルギー効率を世界全体でベスト・プラクティスのレベルに引き上げるため、セクター別ベンチマークというツールを最大限活用して、全ての政府による省エネ目標の設定と行動計画の策定を促進させることを求める。我々は、IEAが加盟国及び主要な非加盟国におけるエネルギー効率の改善状況に関する評価及び報告を行うよう求める。我々は、また、IEAが真に持続可能なシナリオの策定作業及びエネルギーに関連した気候変動問題の解決に向けた最もコストのかからない政策の立案作業を継続するよう求める。
  6. 持続可能なエネルギーの未来のために、我々は新技術の開発と普及を加速する必要がある。我々は、これを成し遂げるために至急取りかかる意向である。我々は、生じつつある地球温暖化の脅威に対応するため、再生可能エネルギーの普及計画及び各国の政策に応じて原子力計画を推進する。我々は、クリーンな石炭を促進し、またIEA及び炭素隔離リーダーシップ・フォーラム(CSLF)を通じ、炭素回収・貯留(CCS)の規制や安全性の問題に十分な注意を払いながら全面的な実証及び早期の普及を推進する。我々は、先進的なバイオ燃料、太陽エネルギー、水素燃料電池及び電気自動車といった新技術のコストを削減するために研究・開発の取り組み強化を促進する。また、我々は、二国間で、またIEAの技術ネットワークを通じ、主要な新興経済国とのエネルギー技術に関する協力を強化する。
  7. 安全保障と持続可能性を達成するためには、全ての国が困難な決断を下すことが求められることとなろう。我々は、集団として、全てのエネルギー源、供給源、供給国、及び市場へのルートを利用する必要があろう。我々は、市場原理に従うことに引き続きコミットする。しかしながら、市場は、時宜を得た投資を導くためのより良いデータのみならず、投資と貿易を促進するため、より透明性が高く、安定的で予測可能な規制枠組みを必要としている。すべての国がそのような条件を提供する責任を受け入れなければならない。安全保障と持続可能性の不可分性が我々の行動のあらゆる面を方向づけるべきである。
  8. 今日の我々の主要なメッセージは、動機づけと実行に関するものである。我々は、世界のより多くの人々のために安定的で入手可能なエネルギーを確保すること、及び、そのエネルギーの生産、変換及び使用から生じる環境への影響を持続可能な方法で管理すること、という、我々が直面している、エネルギーに関連した2つの課題に対処する必要がある。これらの課題は、克服できないものではない。世界は、クリーンで、賢明で、競争力のあるエネルギーの未来を達成することができる。それを実現するためには、誰もが、エネルギーに関する全ての決定をベスト・プラクティスに基づくものにしながら、全ての活動においてより大きな責任を負わねばならないであろう。我々は、取り組みが遅れれば遅れるほど、課題がより過大なものとなることを認識する。
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