平成17年5月3日
5月2日及び3日、パリにおいて第20回国際エネルギー機関(IEA)閣僚理事会がマクファーレン豪産業観光資源相の議長の下開催され、我が国より中川経済産業大臣、北島経済協力開発機構日本政府代表部大使他が出席した。今回、我が国より、現在のエネルギー情勢を踏まえ、省エネ・エネルギー効率の向上、エネルギー多様化の促進・環境への配慮の重要性、原子力の必要性を訴え、賛同を得たところ、概要及び評価は以下の通り。
(イ)2日間にわたる閣僚理事会では、「供給の確保(セキュリティ)」、「国際・地域間での統合・協力:拡大するエネルギー安全保障」、「様々なエネルギーの未来」、「緊急時対応」、の4つの議題についてそれぞれ議論し、コミュニケ(要旨)を採択。
(ロ)非加盟国として中国、メキシコが参加(中国は張暁強・国家発展改革委員会副主任(次官級で第一セッションに参加)、メキシコは閣僚)。また、IEAへの加盟申請中であるポーランドとスロバキアも出席した。
(イ)第1セッション(供給セキュリティ)では、冒頭、我が国(中川大臣)より、基調演説を行い、原油価格高騰を背景に重要性が増しているエネルギー安全保障を確保し、エネルギー問題と気候変動への対応を両立させるため、省エネの推進、投資、備蓄、市場の透明性確保、エネルギーの多様化促進が必要であることを強調した。その後、各国よりエネルギー供給セキュリティに石油のほかガス、電力を含めること、投資の必要性、エネルギー効率化の促進、共同石油データイニシアティブ(JODI)を通じた透明性の確保、3E(エネルギー、経済、環境)の調和について認識を共有した。
(ロ)第2セッション(国際・地域間での統合・協力:拡大するエネルギー安全保障)では、中国より、中国のエネルギー政策として、今後も石炭が主要なエネルギー源である一方、持続可能な成長、天然ガス、水力、原子力等の導入拡大によるエネルギー・ミックスの最適化、エネルギー効率の改善、クリーン石炭技術による環境保護等の紹介があり、IEAとの協力への期待が表明された。我が国からは、クリーン開発メカニズム(CDM)、エネルギー効率向上、クリーン石炭技術の投資の必要性を強調。各国から、中国の取組を歓迎、石炭利用におけるクリーン石炭技術の推進、ロシアとの対話(含ガスプロムの問題)につき議論が行われた。
(ハ)第3セッション(様々なエネルギーの未来)では、エネルギー需要が増加する中で持続可能な発展と実現するために、エネルギー源の多様化、エネルギー部門における投資の強化、気候変動を含む環境問題への対処、エネルギー効率の改善、IEAの役割等につき議論が行われ、環境と経済の両立に向けて加盟国がより具体的な行動を起こす必要性が提起された。我が国より、エネルギー安全保障と気候変動問題の両面で有用な原子力を再評価するとともに、技術開発の必要性、3E(エネルギー、経済、環境)の達成につき指摘した。
(ニ)第4セッション(コミュニケ採択及び緊急時対応)では、コミュニケが採択され、IEAの役割として、
に焦点をおくべきことが明記された。
別途、緊急時対応については、ベルギー、ニュージーランド、ルクセンブルクの備蓄義務遵守の必要性が指摘された。
中国等の経済成長に伴う需要の増大、産油国での投資不足による生産余力の減少といった需給両面における構造上の問題や、石油市場への投機資金の流入等により、原油価格が高水準で推移する中、コミュニケの中で主要消費国が以下の諸点につき共通の認識・行動に合意したことは有意義。
(イ)エネルギー効率の改善が減退していることに対して、強力な政策によって、逆転させることを表明。
(ロ)炭素排出抑制の文脈において、エネルギー効率向上の必要性を強調するとともに、クリーン石炭技術、原子力、ガス、再生可能エネルギーの役割に言及。
(ハ)エネルギー市場での予想外の衝撃を緩和するため、時宜を得た投資と十分な在庫が必要であることにつき認識を共有。
(ニ)産油国と消費国の対話強化は、市場の安定を促進する上で重要としつつ、需要に見合う供給に向けた産油国の努力を歓迎。
(ホ)中国等経済成長に伴うエネルギー需要の増大を踏まえ、各国の経験やベストプラクティスを世界的に共有するための努力を強化することを確認。