
IEA閣僚理事会コミュニケ(要旨)
(2005年5月2-3日)
<主要メッセージ>
我々は、今日の一層強固な行動を通じ、持続可能で安定したエネルギーの未来を達成することが可能であり、また、その意思を有している。
- 高まるエネルギー輸入依存の抑制
- 経済の脆弱性をエネルギー効率化措置等を通じて低下
- 化石燃料への依存による環境への影響の軽減
<エネルギー安全保障>
- エネルギー安全保障は、我々の中核的な使命。持続的に高いエネルギー価格は、重大な関心事項。我々は、市場が混乱する際には適切な供給を確保するため共に行動することにコミット。
- 投機は石油市場における懸念要因。エネルギー市場には、時宜を得た投資と十分な在庫の両方が必要。補助金は市場を歪曲し、投資への障壁は供給能力を制限。エネルギー供給の拡大・多様化と、需要を抑制する行動が必要。
- 産消対話の強化は、市場の安定を促進する上で重要。増大する需要に見合うべく供給を増大させる生産国の努力を歓迎。メキシコのエリゾント大臣の参加を歓迎。共同石油データイニシアティブ(JODI)の例に立って、高水準の石油市場の透明性を追求。
- IEAは、2030年までにエネルギー分野で16兆ドルの投資が必要となると予測。発電と送電分野、及び石油・ガスの価値連鎖に沿った上流及び下流部門での投資が不十分。政府が投資への障壁を除去し、競争力のある市場を形成すべし。
- 投資の確保のため、より安定的で透明性のある枠組を構築すべし。民間投資家は市場において様々なリスクに直面。リスクを管理し、必要な資本の流れを促すための新たなメカニズムが必要。
<国際エネルギー市場>
- 中国の張暁強副主任の参加を歓迎。中国の急速な経済成長は、13億の市民にとり大きな経済的な恩恵。中国のこのような経済成長と世界の他の国々に燃料を供給することは大きな挑戦。我々皆が、我々の経験やベスト・プラクティスを世界的に共有するための努力を強化すべし。中国の戦略石油備蓄構築の決意を称賛。
- ポーランドのピエホタ大臣とスロバキアのポモーティ副大臣の参加を歓迎。ポーランドとスロバキアはIEA加盟国たる条件に合致するために相当の進歩。両国の加盟は、重大な供給途絶が発生した時に数ヶ月に渡り1千万バレル/日迄の供給を展開できる我々の集団的な能力を強化する。
<世界規模のよりクリーンなエネルギー体制>
- 何も対策を取らない場合、IEAは、今後25年間の世界のエネルギー需要増加の85%が化石燃料により賄われると予測。世界のエネルギー需要と炭素排出は共に60%増加する。このシナリオの場合、途上国の炭素排出は、2030年までに倍増し、2030年も14億人が電気へのアクセスを有しないまま。
- しかし、我々は、何も対策を取らない場合のエネルギーの未来に拘束されるわけではない。
- IEAの代替シナリオにおいては、何もしない場合のシナリオと比して、2030年迄に、IEA諸国の消費を10%削減し、二酸化炭素排出を16%削減。この全削減の60%は、最終消費のエネルギー効率向上によるもので、その他の部分は、クリーン石炭技術、より多くのガス及び再生可能エネルギー、そして原子力発電を選択肢としている国々においては原子力を利用することによる、より良い発電によって実現。しかし、我々は、もっと出来る。
- OECD諸国のエネルギー効率は、石油危機の1973年から1998年の間に急速に改善。エネルギー効率の改善は、1980年代半ばより減速しているが、一層強力な政策によって、今からでも逆転が可能。我々は、エネルギー効率の努力強化にコミット。IEAは、加盟国の国別審査や全世界の国々とのベスト・プラクティスの共有を含め、我々のこうした努力を監視すべし。
- 持続可能な低炭素の未来は、より厳しい政策、市場原理に基づく手段、そして世界の他の国々を関与させることによってのみ可能。我々は、これを直接に、あるいは、G8、気候変動枠組条約や他の関連諸機関を含む既存の枠組みを通じて行う。これは共通の責務。
- 技術開発を加速すべし。費用対効果のある低・無炭素燃料の識別・普及と化石燃料の効率的かつクリーンな利用の推進が可能。そのためには、相当な官民両分野の資源が必要。
- 過去の教訓と我々の将来像を指針として、我々は、次世代に向けての安全かつ持続可能なエネルギーを達成するために、市場の力、技術の可能性及び断固たる政策を利用する。
- IEAの活動の優先順位において、以下の点に焦点をおくことに合意。
- エネルギー市場の透明性および分析力の向上
- 主要非加盟国との関係強化
- 特に運輸および建築部門におけるエネルギー効率の追求
- クリーンな燃焼技術および炭素固定・隔離技術の研究開発
- 途上国における投資環境の整備
- 経済成長と二酸化炭素削減への更なる取組
- IEAはクリーンで、賢明で、競争力のあるエネルギーの未来に向けた戦略構築を助ける意思を有する。このためには、リーダーシップと協力が必要。