経済

第9回APECエネルギー大臣会合(概要)

平成22年6月

1.会議概要

 6月19日、福井市において、APEC(アジア太平洋経済協力)第9回エネルギー大臣会合(EMM9)が開催された。直嶋経済産業大臣が議長を務め、21のAPECメンバー・エコノミーからエネルギー担当閣僚等が参加。「エネルギー安全保障に向けた低炭素化社会」をテーマに「エネルギー安全保障」、「省エネルギー」及び「低炭素排出エネルギー」の3つの議題について議論を行い、その成果として「エネルギー安全保障に向けた低炭素化対策に関する福井宣言」(別添:英文PDFが発出された。

2.主な討議の概要

 (1)エネルギー安全保障

(イ) 議長から、緊急時の協調的な取組や対応能力の強化、エネルギー分野の貿易・投資促進、非効率な化石燃料補助金の撤廃及び石油市場の安定化などの取組につき議論を求めた。また、メキシコ湾原油流出事故の影響につき発言を求めた。

(ロ) これを受け、多くの閣僚が、エネルギー消費の伸びが著しいAPEC地域において、化石燃料が今後も主要な役割を果たす旨発言。また、石油供給途絶等の緊急時対応における石油備蓄の重要性が指摘され、IEAが提案した緊急時対応訓練等の協力活動に対し各エコノミーから参加が表明された。さらに、エネルギー安定供給の実現のために、APEC地域におけるシェール・ガスなど非在来型ガスの開発の必要性、透明で安定したエネルギー商品市場の構築の必要性が指摘された。メキシコ湾原油流出事故については、原因の究明と再発の防止の徹底が必要と発言があり、産油国からは、安全性を強化した上で海上におけるエネルギー開発継続の必要性が指摘された。

 (2)省エネルギー

(イ) 議長から、前回の閣僚会合以降の大きな取組であるAPECエネルギー効率改善目標の設定、その達成のための専門家レビュー制度の評価及びその他省エネルギーのための取組につき、議論を求めた。

(ロ) これを受け、APECのエネルギー効率改善目標(2030年までに2005年比25%改善)は十分達成可能であり、一層意欲的な水準へ改訂すべく検討を開始することが提案された。また、エネルギー効率専門家レビュー(PREE)(※1)及び持続可能性のためのエネルギー効率化デザイン協力(CEEDS)(※2)については、多くのエコノミーが、その意義および成果に賛同の意を表明した。さらに、省エネルギー効果の可視化のためのラベリングの有効性の指摘も相次ぎ、APEC域内での一層の省エネルギー機器の普及と貿易の促進のために、機器性能の基準・評価方法の統一に向けた調査(CAST)(※3)の開始に合意した。

(参考※1) エネルギー効率専門家レビュー(PREE)とは、エネルギー効率向上に向けたAPECエコノミーの政策実施状況を、他のAPECエコノミーの省エネルギー政策専門家が評価し改善提案を行う活動のこと。

(参考※2) 持続可能性のためのエネルギー効率化デザイン協力(CEEDS)とは、APECエコノミーの政策担当者と省エネルギー専門家とが協力し、省エネルギーの部門別ベストプラクティスの普及促進を図る活動のこと。

(参考※3) 機器性能の基準・評価方法調査(CAST)とは、輸出入等に関わる手続を簡素化するために、エネルギー消費機器の省エネルギー性能を評価するための基準及び評価方法をAPECで統一するための調査活動のこと。


 (3)官民対話

 エネルギー分野の民間企業から、先進的な取組の紹介や事業活動の展開における要望を政策形成に反映させる趣旨で、4つの会社・団体からプレゼンテーションがなされ、官民を交えた議論を行った。民間企業からは、発電分野の天然ガスの重要性を指摘、省エネルギー製品の評価基準の統一及び省エネルギー活動の官民の一層の協力につき、要望がなされた。

 (4)低炭素排出エネルギー

(イ) 議長から、低炭素排出エネルギーのエネルギー安全保障面及び気候変動面での重要性が示唆され、導入促進策について議論を求めた。併せて、議長より、各エコノミーの自主的な低炭素排出エネルギーの導入目標及び行動計画策定の制度化、及び都市計画段階からの地域的な低炭素排出エネルギー導入のためのAPEC低炭素モデル都市プロジェクトの実施が提案された。

(ロ) これを受け、各エコノミーより低炭素排出エネルギーの重要な要素である原子力発電の導入表明が相次ぎ、その際の資金面や安全面での協力の重要性が指摘された。また、炭素回収貯蔵(CCS)、石炭ガス化複合発電(IGCC)等のクリーンな石炭の利用技術の重要性と普及促進への期待が表明された。再生可能エネルギーについては、そのコスト削減や供給源の多様化の必要性が指摘され、併せてスマートグリッド技術の重要性並びに関連技術・サービスの貿易促進の必要性が指摘された。さらに、我が国が3年間で10億円の基金を積み立てるAPEC低炭素モデルタウン計画への賛同が表明され、第1号案件として、中国から天津における計画が提案された。最後に、我が国から、今次大臣会合の議論は、11月のAPEC横浜サミットの成功に向けて有意義であった旨、また、今般、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)憲章の締結につき国会の承認を得たことを受け、近く批准書を寄託するよう準備を行っていることを紹介の上、今後、世界で最も多くのエネルギー需要及びCO2排出の伸びが見込まれるAPEC地域の各エコノミーが、積極的にIRENAに参加することを強く期待している旨発言。


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