第2回五カ国エネルギー大臣会合（概要と評価）
平成20年6月
1.概要
（1）平成20年6月7日、青森において、第2回五カ国エネルギー大臣会合が開催され、石油市場の安定化の確保と世界のエネルギー安全保障の強化につき議論を行った。日本より、議長を務めた甘利明経済産業大臣、小池正勝外務大臣政務官が出席（中国：張国宝国家発展改革委員会副主任、米国：サミュエル・ボドマン・エネルギー長官、インド：へマント・クリシャン・シン駐日インド大使、韓国：李允鎬（イ・ユンホ）知識経済部長官、国際エネルギー機関（IEA）：田中伸男事務局長が出席）した。
（2）我が国からは、最近の急激な原油価格の高騰を踏まえ、甘利経産大臣より、戦略石油備蓄の整備を含む緊急時対応策の強化、省エネの重要性につき発言。また、小池外務大臣政務官より、普遍的な投資ルールを国際社会に広めることを含む投資環境の改善の必要性について発言した（小池外務大臣政務官の発言）。議長国である日本を除く各国が各セッションの議事進行を担当した。また、韓国より次回会合をホストする旨表明があり、参加国はこれを評価した。
（イ）世界のエネルギー安全保障の課題（インド）
（ロ）緊急時対応（中国）
（ハ）投資環境（米国）
（ニ）エネルギー効率と多様化（韓国）
（3）会合の結果、共同声明（仮訳（PDF）
・英文（PDF） ）が採択され、会合後にプレス発表された。
2.共同声明の骨子
（1）中国、インド、日本、韓国、米国のエネルギー大臣は、国際的な石油市場の安定化の確保と世界のエネルギー安全保障の強化のための方途につき議論。
（2）我々は、以下のエネルギー安全保障原則を受け入れるため共に取り組む。
（イ）世界のエネルギー市場の透明性、予見可能性及び安定性
（ロ）エネルギー分野における投資環境の改善
（ハ）エネルギー効率及び省エネルギーの向上
（ニ）エネルギー・ミックスの多様化
（ホ）重要なエネルギー・インフラの保全
（ヘ）エネルギー貧困の削減
（ト）気候変動及び持続可能な開発への取組
（3）我々は、現在の石油価格の水準に対し、深刻な懸念を共有。原油価格は、歴史上最も急激かつ大幅に上昇。現在の原油価格水準は異常であり、消費国・産油国双方の利益に反する。我々は、石油生産国に対し、増大する世界需要への対応として、市場への十分な供給を維持するための投資を増やすよう呼びかける。
（4）我々は、いかなる供給途絶リスクに対しても十分に備える決意。我々は、緊急時対応の分野で、国際エネルギー機関（IEA）と五カ国それぞれとの協力に大きな可能性があると強く確信。我々は、中国とインドが、供給途絶時におけるIEA加盟国の協調行動への自主的参加を前向きに検討することを歓迎。
（5）全ての利害関係者は、石油、ガス及び新たなクリーン・エネルギー技術に対する適切な投資を確保するという共通の責任を共有。我々は、エネルギー供給チェーン全体への投資を呼び込む前提として、透明性があり、公平で、安定的かつ効果的な法規則の枠組みを含む、開かれた、透明性があり、効率的かつ競争的な投資環境を確保する。
（6）エネルギー効率の向上は、利用可能で、最も費用対効果のある短期的な対応の一つ。クリーンな代替燃料の利用拡大を通じたエネルギー・ミックスの多様化、化石燃料の輸入源及び輸入ルートの多様化は、エネルギー安全保障を強化する上で必要。
（7）従来エネルギー対する価格補助は、段階的かつ漸進的な廃止に向かうことが望ましい。ゆがみのない、市場に基づくエネルギー価格は、エネルギー効率の向上及び代替エネルギーへの投資拡大につき、市場に適正なシグナルを送る。
（8）我々は、各国が自主的目標及び行動計画を策定することによりエネルギー効率の向上及びエネルギー源の多様化のための政策・施策をさらに強化し、また、ベスト・プラクティスを共有する。
（9）第3回5カ国エネルギー大臣会合をホストするとの韓国の表明を評価。
3.評価
（1）原油価格が高騰し続ける中、世界の石油消費の約半分を占める5ヵ国が一堂に会し、エネルギー安全保障に関連する施策・協力等について包括的な議論が行われた。特に、今後、エネルギー需要の増大が見込まれる新興国たる中国、インドの主体的な努力を一層強化していくための議論が行われたことは大きな成果。
（2）中国及びインドが戦略石油備蓄に向け着実に取り組んでいること、及び緊急時において両国がIEA加盟国の協調行動への自主的参加を前向きに検討することが確認されたことは世界のエネルギー安全保障にとって大きな前進。
（3）エネルギー分野への投資がますます必要となっている中、開かれた、透明性があり、効率的かつ競争的な投資環境を確保するとの考えが共有され、共同声明に盛り込まれたことは極めて大きな意義を有する。
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