文化外交(海外広報・文化交流)

広報文化外交の制度的あり方に関する有識者懇談会
第4回
「広報文化外交の推進体制と多様なアクター:
アウトソーシングはどこまで可能か」

平成24年4月12日

外務省広報文化交流部

 4月12日,「広報文化外交の制度的あり方に関する有識者懇談会」の第4回会合が開催され,「広報文化外交の推進体制と多様なアクター:アウトソーシングはどこまで可能か」のテーマで議論が行われたところ,概要は以下のとおり。

1 「アウトソーシング」をめぐる問題

  1. (1)在外公館においては,多くの場合,現地の機関や日系企業等に働きかけを行って各々の分担と協力の下に文化交流行事が企画・実施されている。これを「アウトソーシング」と呼ぶかどうかは別として,こうした現実を広く知ってもらう必要があるとの意見があった。
  2. (2)「アウトソーシング」という表現は,昨年の提言型政策仕分けの中で用いられた経緯はあるも,「官」の実施する広報文化事業をコスト削減のために「民」に下請けさせるとの印象が強く,適切ではないのではないかとの認識も示された。すでにそれぞれのミッションに従って国際交流を行っている市民社会から見て,「官」側の都合で特定の事業を担わされるという考え方は望ましくないとの意見もあった。
  3. (3)ある広報文化事業を「官」から「民」に委ねるとして,つねに経済的コストが削減されるとは限らないとの問題提起があった。さらに,経済的な理由だけでそうした委譲を進めることは望ましくないとの認識も示された。
  4. (4)「官」と「民」とが対等であるとの前提に立てば,例えば民間企業や大学から費用先方負担により広報文化センター内に人員を派遣したり,NGOの活動の場として同センターを活用したりする「インソーシング」が有益であり,導入を検討してはどうかとの意見があった。

2 広報文化外交における官民の役割分担

  1. (1)外交活動の観点で,他国の人々にどのような日本認識を持ってもらう必要があるか,他国の人々とどのようなつながりを構築すべきかを優先順位を付けて整理し,現状と対比することが第一歩であり,まず何を訴えていくべきか(Whatの論理)をしっかりと議論すべきとの意見があった。
  2. (2)広報文化活動を類型化すると,おおよそ1)国際放送,2)政策広報,3)交流,4)文化芸術の4つくらいに分けられる。このうち政策広報は「官」が自ら実施すべき領域であるのに対して,交流や文化芸術については,国や対象,活動内容等に応じて官民の役割分担が検討されるべきであり,その際には相手国内に日本のシンパを作るといった安全保障上の効果にも配慮すべきとの意見があった。
  3. (3)在外公館の長は正当な日本の代表であり,その観点から広報文化外交を主導するのは「官」の役割であるとの認識が示された。また,外務本省で全体的な戦略を立てた上で,在外公館を中心に現地諸機関共通の2年~3年単位の戦略を立案することが望ましく,そのためには公館長の調整機能を強化する必要があるとの指摘があった。その際,例えば,伝統的な文化行事も日本理解の入り口として活用するなどして外交のツールになり得るので,ある程度は各在外公館の裁量に任せるという発想が必要との意見もあった。
  4. (4)税金を投入する限りにおいては,事業の成果について,数字を含めて説得力ある説明が求められるのは当然との意見がある一方で,1958年に米ソ交換留学生だったヤコブレフ氏が,30年後にペレストロイカ推進の原動力になったように,広報文化は効果発現に時間がかかり,また計測に馴染みにくい側面もあるので,拙速に結果を求め過ぎないよう注意する必要があるとの指摘もあった。

3 協働を実現するための方策

  1. (1)企業,大学,自治体,NGOと外務省とで意見交換や広報訓練などの領域でコンソーシアムを設置し,それぞれのコア・コンピテンシー(得意分野)を活かした形で連携を強化してはどうかとの意見が出された。
  2. (2)地方自治体が独自に姉妹都市など国際交流をしている場合もあり,こうした既存の交流をさらに強化する方向で「官」が規制緩和や情報提供など側面支援をしてはどうかとの意見が出された。
  3. (3)国際協力に関与するNGOは援助活動だけでなく交流事業も実施しているが,ジャパン・プラットフォームを通じて供与される公的な資金は純粋な支援にしか活用できない。途上国との間でNGOが実施する文化交流事業に対する支援策を検討してはどうかとの意見が出された。
  4. (4)国の役割として,様々な分野において自国のアクターと海外のカウンターパートのネットワーキングを促進するという役割,影響力の高い国際ネットワークへの日本人の参入促進という役割が重視されるべきである。このため,日頃から多様な人材をプールしておいて(人材バンク),官民の多様なニーズに応じて活用する体制を整備することが大切であるとの意見があった。
  5. (5)例えば,アジアで今後2,000の美術館が建設予定であることを踏まえれば,美術館の建設(建設会社),アートマネジメント(人材育成),コンテンツの提供(展覧会の巡回による手数料収入)という3段階の包括的取組で「美術」の分野においても単なる文化紹介にとどまらず,経済活動に深く関与できるとの指摘があった。
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