平成24年3月21日
外務省広報文化交流部
3月21日、「広報文化外交の制度的あり方に関する有識者懇談会」の第3回会合が開催され、「これまでの議論の整理」のテーマの下、議論が行われたところ、概要は以下のとおり。
(1)パブリック・ディプロマシーの重要性
軍事力行使の回避や経済面での相互依存関係の緊密化等を背景として、ルール・メイキングやアジェンダ・セッティングを含むソフトパワーの重要性が高まっている。このため各国がパブリック・ディプロマシーを強化している状況にあって、日本こそ大胆な発想で広報文化外交を強化する必要があるとの指摘が多く示された。その際、拙速に成果を求めるのではなく、戦略を明らかにし、中長期的な視点に立った取組の必要性に言及すべきとの意見が出された。
(2)3.11の体験を踏まえた取組
3.11の大震災により、日本は忍耐強さといった精神面について賞賛を受けている反面、"地震と放射能の国"というイメージを持たれている現実を踏まえるべき。この原発事故にいかに対応するのか、原発とどう向き合うのか、未曽有の災害の教訓をいかに活かしていくか、減災の発想に基づくまちづくりをいかに実現するのか、といった課題に取り組む課題先進国として、その経験を国際社会と共有し、世界に貢献していく日本ならではのアプローチを提示していく必要があるとの指摘がなされた。
(3)「日本的な価値」の発信の位置づけ
玄葉大臣の標榜する「日本的な価値」を活かした外交について、行き過ぎた日本特殊論は回避すべきだが、日本の独自性を国際的な文脈で理解される形にして売り込むべきとの指摘が示された。パブリック・ディプロマシーの重要性を論じる中で「日本的な価値」の発信の重要性を取り上げることでよいのではないかとの意見があった。
(4)交流から「協働」へ
一般に政府の公式発表より信頼のおける第三者の言を信じる傾向があることを踏まえ、NGOや相手国の国民を介して伝えたいことを語ってもらう工夫をしたり、単なる交流ではなく「協働」によって新たな価値の創造に取り組むこと等により、広報文化外交の信頼や影響力を高めるべきとの指摘が多く示された。また、日本が見せたいものと相手側が見たいもののギャップを埋めるためには調整が必要であり、双方の専門家・機関の間で「協働」することが必要との意見があった。
(5)広報文化外交の手法
ITなどを活用することによるイノベーションも奨励し、時代の進展に対応した広報文化外交を推進すべきとの意見が多く出された。
(1)官民連携による取組
広報文化外交の「司令塔」を定めて責任の明確化を図るべきとの点で多くの賛同を得たが、同時にマルチステークホルダーとして企業、市民社会、NGOなどが各々の得意な形で貢献する仕組みを検討すべきとの指摘がなされた。また、経済の論理だけで日本文化を促進すれば、コスプレとアニメとマンガだけになるおそれがあり、ビジネスモデルになじまない領域の文化が外交に果たす役割に鑑みれば、「官」が担う役割も大きいと指摘された。
(2)戦略的な推進体制
クールジャパンについて経済産業省主催の官民有識者会合や内閣官房知的財産戦略推進事務局クールジャパン推進計画が並立し、さらに日本ブランドについては別のプロセスが併存するような状況を整理すべきとの指摘や、今後は「国際広報連絡会議」(注)を活用することで全政府的な取組が期待できるとの認識が示された。
(3)在外拠点のあり方
外務省の強みはプラットフォームとしての在外公館であり、在外公館が司令塔の役割を担うとともに、公館長の主導性を尊重すべきとの意見が多く出された。また、貿易、観光、文化といった専門的機関の在外拠点との関係や各専門的機関の在外拠点同士の関係について、コスト削減という経済的論理だけでなく、外交上の戦略的観点も盛り込むべきとの意見がある一方、各分野が別立てで行うのでなく相互乗り入れを行うことで全体として拠点を拡充・強化することも検討すべきではないかとの指摘もなされた。