文化外交(海外広報・文化交流)

広報文化外交の制度的あり方に関する有識者懇談会
第2回
「日本の目指すべき国家ブランド戦略とは何か?
――韓国の事例を踏まえつつ」

平成24年2月9日

外務省広報文化交流部

 2月9日、「広報文化外交の制度的あり方に関する有識者懇談会」の第二回会合が開催され、「日本の目指すべき国家ブランド戦略とは何か?――韓国の事例を踏まえつつ」のテーマの下、議論が行われたところ、概要は以下のとおり。

1 韓国の国家ブランド戦略から、日本は何を学び取れるか?

 外務省より、韓国コンテンツ海外発信成功の要因として、1)積極的かつ緻密な海外ビジネス展開、2)補助金や人材育成を含む政府の支援、3)大企業との緊密な連携等が考えられると分析した。

 これを受けて、韓国の国家ブランド戦略は広報文化外交の枠を超えているのではないかとの問題意識を提起しつつ、“クールブリタニア”の評価が定まらないように国家そのものをブランド化する試みは困難であり、あらかじめ優先テーマやターゲットを絞り込んで戦略を策定する必要がある、韓国のコンテンツ振興院の場合、「コンテンツの強化は輸出産業のサポート」と目的を明確にし、キラーコンテンツを作って市場を占拠しようとする“選択と集中”がはっきりとしており、良いモノを作れば売れるという姿勢でやってきた日本にも学ぶべき点があるのではないかとの意見が示された。

 また韓国では、自国が正しく評価されていないとの認識から出発しており、国際的な国家ブランド指標での自国の順位をつねに意識し、サムスン経済研究所(SERI)が独自の国家ブランド調査を行うなど、強い国家意識に支えられた政府・企業・業界の連携が韓国ブランド推進の原動力になっていること、韓国における日本コンテンツの魅力(例えば、日本の歌謡曲や90年代のトレンディー・ドラマなど)が相対的に減退しているので民間・商業ベースに任せておくだけでは不十分との認識が表明される一方、文化育成に「官」の過剰な関与は避けるべきとの指摘もなされた。

2 日韓関係における広報文化外交の位置づけ(戦略、具体的活動、成果等)

 外務省より、外交安保上の重要性、歴史を背景とした日本への複雑な感情、「官」への高い信頼等の韓国の特殊性を指摘し、大使館を司令塔として国際交流基金や日本貿易振興機構(JETRO)、日本政府観光局(JNTO)等とオールジャパンで広い意味での文化発信を行うことが有意義との見解を示した。

 これに対し、大使館や国際交流基金の行事に参加するような、すでに日本に関心のある韓国人を対象とするのではなく、むしろ日本に興味のない韓国人へのアウトリーチを工夫すべきではないかとの意見が示されるとともに、国際社会において、ただ単に知日派の数を増やそうとするのは非現実的であり、知日派の質や当該国の外交的重要性をつねに意識すべきとの指摘もあった。

 外交において文化が手段か目的かとの論点について、外務省・大使館が関与する以上、日本の安全保障上極めて重要な韓国において日本の味方を増やす、といった外交政策を遂行する手段として文化を位置づけるべきとの指摘が多くなされた。他方で、韓国好きにさせるために作られたわけではない「冬のソナタ」が日本の対韓イメージを好転させたように、「官」の関与を離れた文化の力も大きいとの意見が示された。

 ソウルに大使館広報文化センターと国際交流基金事務所が存在することについて、両者の関係を整理し、国民にわかりやすく説明することが重要との指摘が多く示されたが、両者の役割分担という国内の視点だけではなく、韓国に対していかにして総合的に日本文化発信を強化できるかが重要だとの指摘が多かった。また、国際交流基金は、ブリティッシュ・カウンシルやゲーテ・インスティテュートのように、「官」から距離を置いて文化を伝えるという点で存在意義があるとの意見があった。また、大使館や国際交流基金が行う活動が文化を通じ日本外交に資していることを日本国内にもっと知らしめるべきとの指摘もあった。

3 クールジャパンを超えた「日本的な価値」発信のために何をなすべきか?

 玄葉大臣が外交演説で強調した「国家戦略として日本文化を海外展開」させる(注)には現在の体制は他の先進国と比較しても極めて脆弱であり、文化外交戦略の総合的観点から、各組織の役割分担を明確化しつつ、国際交流基金を増強してこれに充てるくらいの大胆な発想を行うべきとの意見があった。また、「日本的な価値」を定義するのは難しいので、具体的な「モノ」や「コト」を通じて表現する現場での工夫も必要であるとの指摘もあった。

 また、ソフトパワーはゼロサムではないので、相手国との協同作業を通じて相互理解を深めていくような工夫も有益ではないかとの意見も示された。

(注)平成24年1月24日第180回国会における玄葉外相の外交演説
「(中略)いわゆる「クールジャパン」を超えて、精神性を含めた多様な日本の魅力を発信し、国家戦略として日本文化を海外展開させ、「日本的な価値」に対する理解の増進に取り組みます。(後略)」
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