文化外交(海外広報・文化交流)

「広報文化外交の制度的あり方に関する有識者懇談会」
第1回
「これからの時代におけるパブリック・ディプロマシーはどうあるべきか?
 ― 外務省が広報文化に関与する時代は終わったのか?」

平成24年1月23日

外務省広報文化交流部

 平成24年1月23日,「広報文化外交の制度的あり方に関する有識者懇談会」の第1回会合が開催され,「これからの時代におけるパブリック・ディプロマシーはどうあるべきか? ― 外務省が広報文化に関与する時代は終わったのか?」のテーマの下,議論が行われたところ,概要は以下のとおり。

(1)外交において広報文化外交が果たし得る役割は何か?

 外務省や国際交流基金が行う広報文化活動は、広報と文化の差はあるものの、外交政策を促進する役割を担うべきとの指摘が多く示された。この点に関し、例えば「人間の安全保障」を外交政策の中核に据えるのであれば広報文化外交においても優先的に扱われるべきではないかとの指摘もあった。また、具体的な外交重要課題について広報文化外交がどのような役割を果たしているか、関係性が見えてこないとの指摘もあった。(外交政策を事後的に広報するだけではなく)そもそも外交戦略を策定するときから、個別の外交政策が相手にどのように受け止められるかという視点を盛り込むべきではないかとの指摘もあった。

 相手国と政治・経済で微妙な関係にあるとき、広報文化がそれを和らげたり代替チャネルになり得ると評価する意見があった。他方、諸外国との比較において、日本ももっと外交に文化を活用する方向で検討すべきとの意見もあった。

(2)広報文化外交における「戦略性」とは何か?

 誰に対して(訴求対象)、何をどのように見せたいか(訴求内容)、明確にし、次に執るべき手段を模索すべきとの指摘が多く示された。ただし、広報文化活動には、1)明確な目的達成の手段としてだけでなく、2)良好な外交関係を維持・発展させるための基盤づくりとしての役割も期待されているとの指摘があった。広報文化外交の目標として、1)国の存在感を高める、2)好感度(イメージ)を増大させる、3)知識や理解を深める、の3つがあるが、国際社会において日本の好感度は高いが存在感がないとの指摘や、日本について知りたいというニーズは存在するので、相手の共感を呼び起こすような工夫が必要との発言があった。

 日本の素晴らしいところだけ発信するのでなく、相手が知りたいことをきちんと伝えることが重要との指摘には複数の有識者が賛同し、発信する際は相手を理解する「双方向性」が重要との意見もあった。この意味で、戦略策定に当たっては、本省のトップダウンと在外公館からのボトムアップの双方のバランスが大切との発言もあった。

 また、海外における日本のイメージは、在外公館のみならず青年海外協力隊や民間企業の活動、製品や技術のブランドなどで多面的に構成されていることから、広報文化外交も個別の行事ではなく「面」で伝えていくべきとの意見や、例えば日頃から多様な情報を一括集約し、そこに誰もがアクセスできるようにする、人材をプールしておいて各場面に応じて派遣する、といった具体的な提案もあった。

 広報文化外交戦略をいかに構築するかについては、次回以降引き続き検討することとなった。

(3)広報文化予算が減少する中で優先順位をどうするか?

 重要なことは「海外の受け手から日本がどのように見えるか」との視点から優先順位を策定すべき、さらにその順位付けについては定期的にレビューする場が必要との意見が多く出された。

 選択と集中を行う場合にも、目的を明確化させて限定的に行う事業のみならず、“ビタミン”のように一定の事業を地道に継続して行うことが必要であるとの指摘があった。

 在外公館にあっては、大使及び在外公館の担当者の方針が大きな役割を果たすが、同時に外務省として広報文化の「目利き」を育てて継続的に魅力を発信することが必要との指摘があった。

 また、広報は成果も見えにくいので、日本国内の国民の理解や支援を得るための努力や工夫も必要との発言もあった。

(4)外務省は広報文化外交にどこまで関与すべきか?

 日本のNGOもメディアも民間企業も海外では日本の看板を背負っているが、外交を担っているわけではないので、外務省にしかできない広報文化外交があるとの点については多くの有識者が指摘した。

 また、総合的な戦略が無いまま、輸出や観光といった個別分野でステークホルダーが別々に動く現状には問題があるとの指摘があった。他方、外交の舞台では、文化交流機関であるがゆえに相手国当局から活動を認められているケースがあり、貿易・投資振興や観光まで文化と一つの組織に統合するには大きなリスクを伴うことになるので、総合的な戦略を練る際には、こうした外交の機微を考慮する必要があるとの指摘もあった。

 広報文化をアウトソーシングする場合でも、外交政策の下で整合性ある事業が展開されることを担保する必要があり、現場の実施面の一部を他の機関に依頼することは有効との見地からアウトソーシングのあり方を検討すべきとの意見があった。また、仮に外務省が司令塔の役割を担うにしても、広報文化は人と人の繋がりであり、一定程度は自ら実施する部分がないと実感を伴いにくいのではないかと懸念する声もあった。

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