平成20年4月21日
4月7日から18日まで、オランダのハーグにて、化学兵器禁止条約(CWC)第2回運用検討会議が開催され、我が国を含む締約国113か国のほか、オブザーバーとして署名国2か国(ギニア・ビサウ、イスラエル)及び未署名国3か国(アンゴラ、イラク、レバノン)等が参加した。
(1)5年に一度開催されるCWC運用検討会議では、過去5年間の条約の運用状況を踏まえ、今後の方向性を示すことが期待されている。今回の会議では、条約発効以来11年を迎えたCWCが、化学兵器の廃棄の進捗状況や、テロリストを含む化学兵器の拡散の脅威、科学技術の発展等を踏まえ、国際社会の平和と安定にCWCが如何に貢献すべきかについて議論された。
(2)今回の会議では、化学兵器の不拡散の観点からの各締約国による条約義務の国内実施強化、化学産業の発展を妨げないための国際協力、化学兵器使用の際の援助・防護の充実等の重要性について、活発に議論が行われた。最終報告書の表現についての協議は難航したが、調整を重ねた結果、全締約国が合意した最終報告書が採択された。
(1)CWCは、ストックパイル化学兵器の廃絶、化学兵器の所有・使用の禁止、化学兵器使用の際の援助・防護、平和的活動分野における国際協力を通じて、国際の平和と安全に貢献している。CWCは、非差別的・多国間の検証制度を通じて、国際的な軍縮・不拡散の新たな規範を打ちたてている。
(2)化学兵器の廃絶及び化学兵器生産施設の転用・廃棄は、条約の趣旨・目的の実現にとって必要不可欠である。この点に重要な進展があったことを評価するも、60%以上のストックパイル化学兵器が依然として残されていることは懸念である。
(3)化学兵器禁止機関(OPCW)は、不拡散と信頼醸成を達成するために、実効的な検証システムを設置した。
(4)条約義務の完全かつ実効的な国内実施は、条約の趣旨・目的の実現にとって必要不可欠である。第1回運用検討会議以来の進展を歓迎するも、依然として多くの締約国が、必要な国内実施措置を取る必要がある。
(5)国家による化学兵器の使用の脅威と同様に、テロリストや非国家主体による化学兵器の使用の危険性は増大していることを留意し、CWCの完全実施が国際テロ対策に貢献するとの過去の決定の有効性を再認識する。
(6)科学技術の発展が条約の実施に及ぼす影響が大きいため、OPCWは、条約の実効的な実施にあたり、科学技術の発展を考慮に入れることが重要である。
(1)我が国は、「化学兵器の不拡散の促進(PDF)」及び「中国遺棄化学兵器に関する我が国の取り組み(PDF)
」に関する国別文書を提出するなどして、報告書作成の準備段階から積極的に議論に貢献してきた。また、今回の会議では、渋谷實在オランダ大使を団長とし、中根軍縮不拡散・科学部長等を含む代表団が参加し、最終報告書への合意形成にも貢献した。
(2)我が国としては、CWCに対する国際社会の信頼を維持し、核・化学・生物兵器を禁止・規制する多国間軍縮・不拡散条約の強化に向けた前向きな機運を維持するうえで、今回の会議の成功を評価する。
(3)なお、最終報告書の協議等に大半の時間を費やしたことから、今回の会議では、前回会議の際に発出された政治宣言は発出されなかったことは残念ではあるが、いずれにせよ、今回の会議で採択された最終報告書は、全体として現実的かつバランスの取れた内容であり、今後のCWCの方向性を示すものとして重要な意義を有するものと言える。
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