平成22年1月
化学兵器禁止条約(CWC)の締約国は2010年1月現在で188ヶ国にのぼりますが、北朝鮮、ミャンマー(署名済)、イスラエル(署名済)、シリア、エジプト、アンゴラ及びソマリアは締結していません。CWCの実施機関である化学兵器禁止機関(OPCW)の意思決定は、通常年1回開催される最高意志決定機関である締約国会議で行われます。なお、2008年12月に開催された第13回締約国会議では、日本の渋谷實大使が議長を務めました(~2009年12月までの任期)。また、41ヶ国からなり、日本もそのメンバーである執行理事会は通常年4回開催されており、執行理事会での決定事項を締約国会議が最終的に決定することになります。
このような会議において、各国の化学兵器の廃棄の進捗状況が報告されるとともに、化学兵器廃棄にかかる種々の問題点やCWC締約国の増加(普遍化)・国内実施支援、産業、行財政問題等につき議論が行われています。また、これらの会議を行うにあたっての事前の準備として、議題別の非公式協議が頻繁に開催され、その成果が執行理事会等に報告されます。非公式協議は、現在、普遍化・国内実施、援助・防護、産業事業所の申告強化、予算、内部・外部監査、化学兵器廃棄期限問題等の議題の下で行われています。これら以外に、専門的なアドヴァイスを行う機関として行財政諮問委員会、科学諮問委員会及び秘密保護委員会があります。当館よりは、行財政諮問委員会の委員及び秘密保護委員会の委員をCWC班員が務めており、OPCWの活動に積極的に貢献しています。
以上のような業務に携わる在オランダ日本国大使館CWC班の主要な活動は、次の3つに大別されます。第一に、化学兵器やその生産施設等を含む化学兵器全般にわたる廃棄の進捗状況に関連する業務、第二に、普遍化、CWC国内実施支援、OPCW事務局の行財政問題に関連する業務、第三には、CWCの産業検証に関連する業務です。
第一の化学兵器の廃棄進捗状況については、OPCWが実施する化学兵器貯蔵施設や廃棄施設への現地査察、及びその報告をモニターしています。また、日本の表1剤(化学兵器として使用される可能性が高い化学物質)施設査察のための準備に関与する他、中国に遺棄された化学兵器や国内で発見される老朽化化学兵器の取り扱いに関する業務の調整を行っています。
第二のCWCの普遍化及び国内実施支援については、CWC未締結国に対する我が国の締結促進支援、また、技術的・資金的な理由からCWC国内体制の整備が困難な締約国に対する我が国の技術的・資金的支援等の業務が含まれます。行財政問題については、OPCWの効率的かつ適切な運営が確保されるように、予算、人事、監査等の多岐に亘る問題について議論に参加しているほか、個人の資格で出席する行財政諮問委員会における協議にも参加しています。
第三の産業検証関連の部分については、日本の化学産業等がOPCWに申告した特定の化学物質を扱う施設へのOPCWによる現地査察実施のための準備作業、各種非公式協議における積極的な貢献により、産業検証関連事項に関する方針決定への参画を行っています。
このような一連の活動を通じ、CWCが効果的かつ効率的に実施されるよう、引き続き努めています。