ロシアによるウクライナ侵略、中東情勢、東アジアの安全保障環境など、現在、国際情勢は厳しい状況にあります。また、2024年には米国を始め世界各地で重要な選挙が行われました。激動する国際情勢の中で、外交の重要性は一層高まっています。日本国民の生命と財産を守り抜くことを第一として、日本が平和国家として築いてきた信頼を土台に、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り、地域及び国際社会の平和と安定、繁栄に貢献していくことが、日本外交の責務です。日本の外務大臣として、以下の3点を柱として、「対話と協調の外交」を積極的に展開していきます。
第一に、日米同盟の充実・強化です。日米同盟は、日本の外交・安全保障の基軸であり、トランプ政権との間でも、強固な信頼関係を構築し、日米同盟を更なる高みに引き上げていきます。
第二に、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現に向けた同盟国・同志国との連携です。既存の国際秩序が挑戦にさらされる中、G7、オーストラリア、インド、韓国、東南アジア各国や太平洋島嶼(しょ)国などと共に、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の堅持に取り組んでいきます。
第三に、「グローバル・サウス」と呼ばれる開発途上国・新興国の国々との連携です。国際社会の分断や対立が深刻化する今こそ、G7を始めとする同盟国・同志国に加え、より一層、グローバル・サウスの国々ときめ細かに連携し、国際社会の秩序の強化をリードしていきます。
世界を分断や対立ではなく融和と協調に導いていくことは、日本外交の使命です。私自身、これからも様々な外交機会を通じて、カウンターパートとの人間関係をしっかりと構築し、世界のパートナーと多層的・多重的に連携することによって、日本外交の存在感を示していきたいと思います。
令和7年版外交青書(外交青書2025)は、主として2024年の国際情勢と日本外交の取組を概観したものです。まず巻頭において、今後の国際社会を担う重要なパートナーであるグローバル・サウスの国々との連携について、日本が主催した三つの国際会議にフォーカスして特集しました。続いて第1章では、近年の国際情勢の認識とこの1年で顕在化した主要課題、さらにはそれを受けた今後の日本外交の展望について概観し、外交青書の要旨としました。第2章以降では、地域別に見た外交、国益と世界全体の利益を増進する外交、国民と共にある外交と題して、この1年の日本外交の取組について記載しました。
この外交青書を通じ、目まぐるしく変化する国際情勢の中で、日本の国益を守り、国際社会が直面する諸課題に対して取り組む日本の外交について、国内外の皆様に理解を深めていただければ幸いです。

