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グローバルな課題の解決に向けて ─国際機関で働くという選択肢─

グローバルな課題の解決に向けて ─国際機関で働くという選択肢─

国連関係機関の日本人職員数(専門職以上・幹部級)の推移

「グローバルな課題の解決に取り組みたい」と考えたことはありますか? 国連を始めとする国際機関は、貧困、紛争、難民、人権、感染症、環境問題といった国際社会が直面する様々な課題に取り組んでおり、国際機関で活躍する日本人職員の数は年々増加しています。

外務省国際機関人事センターでは、国際機関を志す日本人の方々を積極的に支援しています。日本人が国際機関の専門職員を目指すには、主に次の三つの方法があります。

・国際機関による公募への直接応募

・日本政府を通じてのジュニア・プロフェッショナル・オフィサー(JPO)派遣制度への応募

・国際機関によるヤング・プロフェッショナル・プログラム(YPP)への応募(国連事務局、経済協力開発機構(OECD)、世界銀行)

ここでは比較的若い日本人の方が国際機関職員を目指す上で非常に有効な手段であるJPO派遣制度について紹介します。JPO派遣制度は、各国際機関が各国政府の費用負担を条件に若手人材を受け入れる制度です。外務省では1974年から同制度を通じて若手人材の派遣を行っています。任期は原則として2年で、派遣先の国際機関で職員として勤務しながら、正規採用を目指します。派遣者の選考は基本的に年1回のJPO派遣候補者選考試験を通じて行われます。応募資格は、(1)35歳以下、(2)修士号を取得又は取得見込みかつ2年以上の職務経験があり、(3)英語で仕事ができ、(4)将来も国際機関で働く意思を有し、(5)日本国籍を有する方です。応募資格の詳細は外務省国際機関人事センターのウェブサイト(下記)で最新の募集要項を参照してください。最近では同制度の下、毎年50人から60人程度が派遣され、JPOの任期中の更なる就職活動の結果、JPOとしての派遣終了後も7割以上の方が国際機関の職員として勤務を続けています。国連関係機関で働く956人(2021年末時点、外務省調べ)の日本人職員(専門職以上)の約半数がJPO出身となっており、多くの方がJPOから国際機関でのキャリアを始めています。

「国際機関の仕事」というと開発や人道支援というイメージが強いかもしれませんが、求められる人材はそれだけではありません。会計や人事、法務、広報やICTの専門家など、幅広い人材が必要とされています。外務省国際機関人事センターのウェブサイトでは、国際機関で活躍する様々な日本人職員の方の体験談を参照できるので、是非ご覧ください。

外務省国際機関人事センター ウェブサイト https://www.mofa-irc.go.jp/

外務省国際機関人事センター ウェブサイト QRコード
JPO経験者の声
国連政務官への道のり
国連平和活動局政治・平和構築局(DPPA)(注)ソマリア担当デスク政務官 山中菜奈穂

私が国連の政務官を志すようになったのは、2015年から2016年まで国際協力機構(JICA)の南スーダン事務所員として平和構築案件に携わる中で、国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)の政務官たちと仕事を契機に出会ったことがきっかけでした。和平合意、国民の信頼醸成や文民保護などUNMISSに課された困難かつ極めて重要な任務に取り組む彼女たちの姿を見る中で、自分も国連憲章の下、国連の平和活動に携わりたいという想(おも)いを強くしました。その後2019年に臨時職員として国連の平和活動局政治・平和構築局(DPPA)で勤務したのち、2020年よりJPOとしてDPPAのロズマリー・ディカルロ事務次長の官房室で政務官補を務める機会に恵まれました。DPPAは予防外交、紛争調停、平和構築に重点を置き、紛争の平和的予防と解決を目指しています。そのトップとして国連外交を率いるディカルロ事務次長の会談などの発言要領を取りまとめることが私の仕事でした。政治問題に対するメッセージをまとめるためには慎重な検討を要し、国連事務局内は勿論(もちろん)、数多(あまた)ある国連の専門機関、計画、基金と協議する作業に並々ならぬ調整を要しました。事務次長が時に、国連としての中立性を保つ意義と、国連憲章や人道的観点から警鐘を鳴らす義務との間で難しい采配を迫られる局面を垣間(かいま)見ることもでき、有意義な1年を過ごしました。2021年よりソマリアデスクに正規職員の政務官として採用され、現在は国連のソマリアにおける特別政治活動、国連ソマリア支援ミッション(UNSOM)を後方支援する仕事に従事しております。国際情勢や東アフリカを取り巻く地域情勢が目まぐるしく変動する中、ソマリアひいては地域の安定に資する仕事に従事でき、充実した日々を送っております。

ソマリア出張時の様子。国連機での国内移動
ソマリア出張時の様子。国連機での国内移動
ソマリアの首都モガディシュでは防弾車での移動と、防弾チョッキ・ヘルメットの装着が鉄則(筆者左)
ソマリアの首都モガディシュでは防弾車での移動と、防弾チョッキ・ヘルメットの装着が鉄則(筆者左)

(注)DPPA:Department of Political and Peacebuilding Affairs

〈日本人職員が5人以上いる国際機関〉
国際機関名 職員数 国際機関名 職員数
ADB(アジア開発銀行) 136 OECD(経済協力開発機構) 77
AIT(アジア工科大学院) 6 UN Women(国連女性機関) 12
AJC(日本アセアンセンター) 9 UN(国連事務局) 219
AMRO(ASEAN+3マクロ経済研究所) 8 UNDP(国連開発計画) 64
APO(アジア生産性機構) 7 UNESCO(国連教育科学文化機関) 53
CGIAR(国際農業研究協議グループ) 21 UNFCCC(国連気候変動枠組条約事務局) 7
ERIA(東アジア・ASEAN経済研究センター) 22 UNFPA(国連人口基金) 14
FAO(国連食糧農業機関) 56 UNHCR(国連難民高等弁務官事務所) 77
GFATM(世界エイズ・結核・マラリア対策基金) 12 UNICEF(国連児童基金) 91
IAEA(国際原子力機関) 39 UNIDO(国連工業開発機関) 14
IBRD(国際復興開発銀行) 175 UNJSPF(国連合同職員年金基金事務局) 6
ICAO(国際民間航空機関) 8 UNOPS(国連プロジェクト・サービス機関) 5
ICC(国際刑事裁判所) 9 UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関) 6
ILO(国際労働機関) 47 WCO(世界税関機構) 12
IFC(国際金融公社) 41 WFP(国連世界食糧計画) 55
IMF(国際通貨基金) 70 WHO(世界保健機関) 59
IOM(国際移住機関) 35 WIPO(世界知的所有権機関) 24
ITER(イーター機構) 33 WMO(世界気象機関) 7
IFAD(国際農業開発機関) 5 WTO(世界貿易機関) 5
ITU(国際電気通信連合) 8

(注)外務省調べに基づき、日本人職員5人以上の機関を記載(専門職相当以上、2021年末時点)

(注)アジア開発銀行(2021年12月時点)、世界銀行グループ(国際復興開発銀行(2022年6月時点)、国際金融公社(2022年6月時点)、国際通貨基金(2022年4月時点)における日本人職員数は財務省調べ(専門職相当以上)

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