第1節 日本と国際社会の平和と安定に向けた取組
1 安全保障に関する取組
(1)日本を取り巻く安全保障環境
日本を取り巻く安全保障環境は、これまで以上に急速に厳しさを増している。国際社会のパワーバランスの変化は加速化・複雑化し、既存の秩序をめぐる不確実性は増大しており、こうした中、自らに有利な国際秩序の形成や影響力の拡大を目指した国家間の競争が顕在化している。さらに、国際社会においては、安全保障上の課題が広範化・多様化し、一国のみでの対応が困難になっている。宇宙領域やサイバー領域に関しては、国際的なルールの確立が安全保障の観点からも課題となっている。海洋においては、既存の国際秩序とは相容(い)れない主張に基づいて自国の権利を一方的に主張し、または行動する事例が見られ、国連海洋法条約(UNCLOS)を始めとする国際法上の権利が不当に侵害される状況が生じている。近年、安全保障の裾野が経済・技術分野に一層拡大していることを踏まえ、これらの分野における安全保障政策に係る取組の強化が必要となっている。大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散、複雑化する国際テロへの対応は、引き続き国際社会にとっての重大な課題である。こうした中、日本の周辺には、強大な軍事力が集中し、軍事力の更なる強化や軍事活動の活発化の傾向が顕著となっている。
このような安全保障環境などに鑑みれば、国際協調主義の観点からも、より積極的な対応が不可欠となっている。日本の平和と安全は我が国一国では確保できず、国際社会もまた、日本がその国力にふさわしい形で、国際社会の平和と安定のため一層積極的な役割を果たすことを期待している。今後とも、日本は、平和国家としての歩みを引き続き堅持し、また、国際政治経済の主要プレーヤーとして、日本の安全及び地域の平和と安定を実現しつつ、国際社会の平和と安定及び繁栄の確保にこれまで以上に積極的に貢献していく(平和安全法制については151ページ 特集参照)。
(2)領土保全
領土保全は、政府にとって基本的な責務である。日本の領土・領空・領海を断固として守り抜くとの方針は不変であり、引き続き毅(き)然としてかつ冷静に対応するとの考えの下、政府関係機関が緊密に協力し、いかなる不法行為に対しても切れ目のない十分な対応を確保するための取組を推進している。同時に、在外公館の人脈や知見をいかしつつ、領土保全に関する日本の主張を積極的に国際社会に発信している。