第2節 海外における日本人への支援
7月、ダッカ(バングラデシュ)において襲撃テロ事件が発生し、邦人7人の命が失われ、1人が負傷した。いまや、大規模テロのリスクは中東やアフリカのみならず、日本人・日本企業が多く進出している欧米・アジアにまで拡大している。さらにテロ以外にも、日本人が被害者となる一般犯罪や日本では馴染(なじ)みのない感染症のリスクも世界各地に存在する。現在、年間延べ1,600万人(2016年)の日本人が海外渡航し、約132万人(2015年10月現在)の日本人が海外に住んでいる。世界で活躍する日本人の生命・身体を保護し、利益を増進することは、外務省の最も重要な任務の1つである。
2016年8月、ダッカ襲撃テロ事件を受け、外務省は2015年にまとめた「『在外邦人の安全対策強化に係る検討チーム』の提言」を改めて点検し、更に強化すべき方策を示した報告書を公表した。報告書では、懸念すべきテロの傾向として、テロのリスクが欧米やアジア地域にまで広がっていること、駅やショッピングモールなど一般人が多く集まる「ソフトターゲット」が狙われていること等の認識が示された。これを踏まえ、日本人がテロの被害に遭わないようにするために、①国民一人一人の安全対策意識と対応能力の向上、②国民への適時適切かつ効果的な情報伝達及び③これらを着実に実施するための体制の整備が重要であるとの観点から、より一層の安全対策強化に取り組んでいる。また、2016年9月には、2015年12月に新設した「国際テロ情報収集ユニット」の態勢の増強が決定された。同ユニットは、官邸等の情報関心を踏まえた国際テロ情報の収集を行っており、収集した情報は速やかに官邸や関係省庁に提供され、海外における日本人の安全に係る領事業務を含めた、情勢判断や政策決定に活用されている。
テロ以外にも、強盗など各種犯罪やトラブルに巻き込まれる危険、政変・自然災害などに遭遇する危険、さらに、中南米のほか米国の一部地域や東南アジア等にも拡大が見られるジカウイルス感染症などの感染症の危険も存在する。海外渡航・滞在の際は、一人一人が高い安全意識を持ち、情報収集や必要な安全対策を講じることが極めて重要である。外務省は、外務省海外旅行登録「たびレジ」や海外安全ホームページなどを通じて情報発信を行っており、これらの活用を呼びかけている。
また、外務省は、海外における日本人の生活を支えるべく、旅券(パスポート)や各種証明の発給、戸籍・国籍関係届出の受理、在外選挙の実施等を通じ、日本人の安全の保護や利益の増進のため取り組んでいる。
そのほか、外務省は、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(ハーグ条約)上の「中央当局」として、国境を越えて不法に連れ去られた子の迅速な返還及び国境を越えた親子間の面会交流の実現に向けた支援を行っている。