第4節 日本への理解と信頼の促進に向けた取組
戦後70年の節目の年である2015年においては、先の大戦に対する深い反省を踏まえ、日本が国際社会の中で一貫して平和国家としての道を歩み、自由、民主主義、法の支配、人権といった基本的価値を信奉し、アジア太平洋地域や世界の平和と発展に大きな貢献を果たしてきたことなどを発信した。
特に2015年度からは、対外発信の最前線である在外公館の体制強化を図りつつ、日本の「正しい姿」及び多様な魅力の発信、親日派・知日派の育成を行うため、2014年度補正予算及び2015年度当初予算を合わせて500億円増の戦略的対外発信予算を計上し、発信の取組を強化した。
「正しい姿」の発信については、総理大臣、外務大臣、各在外公館長からの直接的な発信に加え、メディア等に対する迅速な情報提供・取材協力、さらには各国の有識者・メディア関係者の招へいやシンクタンクとの連携を通じた発信を積極的に行った。
「多様な魅力」の発信については、ロンドン(英国)、ロサンゼルス(米国)及びサンパウロ(ブラジル)におけるジャパン・ハウスの創設準備(開館は2017年中を予定)に加え、ワシントンDC(米国)や北京(中国)等世界主要都市における大型の文化イベント、世界各地における和食の紹介や日本祭りの開催、開発途上国における日本の放送コンテンツ(アニメ・ドラマ)等の海外展開を実施した。
「親日派・知日派」の育成については、日本語教育拠点の大幅な拡充、アジア、米国、欧州及び中南米との青少年交流の拡充、米国を始め主要国の大学における日本研究強化を進めている。
多様な文化が共存する世界において、文化の多様性を尊重しつつ、相互理解を進めていくことは、平和と繁栄の基盤作り・強化につながる。こうした考えの下、日本の伝統文化やポップカルチャーへの理解を深めるとともに、人的・知的交流や日本語の普及に努めている。また、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の成功に向け、スポーツを通じた国際貢献策「Sport for Tomorrow」を推進していく。さらに、国内外の関係者などと協力し、世界の有形・無形の文化遺産の保護への取組と、日本の文化遺産の世界遺産一覧表及び無形文化遺産代表一覧表への記載を進めていく。
2016年は日本外交にとって対外発信の観点からも重要な年である。G7議長国として伊勢志摩サミットを主催するほか、2016年1月から2年間、国連安保理非常任理事国を務める。また、日中韓サミット議長国、初のアフリカ開催となる第6回アフリカ開発会議(TICADVI)など、日本が国際社会の議論をリードする多くの貴重な機会がある。こうした機会を踏まえた発信を新たに展開していくことが求められている。
これらの取組を戦略的かつ効果的に実施していくために、外務省の2016年度予算案には前年度の大幅増額の規模を維持する形で、戦略的な対外発信に充てる予算を計上した。同予算を効果的に活用し、引き続き日本の「正しい姿」を強く発信していくとともに、日本の多様な魅力を生かして、親日派・知日派を拡大し、日本の対外発信を強化していく。