わが外交の近況

1979年版(第23号)

外 務 省

昭和54年版「わが外交の近況」の刊行にあたつて

私は,就任以来,世界の平和と繁栄に積極的に貢献し,「世界に役立つ国」「世界になくてはならない国」になることを,わが国外交の基本的な目標としてまいりました。

国際社会において,「国」の価値を判断する基準は変わりつつある。「力」は,もはやこの基準ではなくなりつつあり,むしろそれに代わつて,国際社会全体の利益のためにどの程度貢献するかということが,世界における国の重要度,価値を判断する基準になりつつある。そしてわが国がこうした基準に照らして価値ある国となることが,諸外国からわが国に対する理解と協力をひきだす鍵である-というのが,その理由であります。

世界の平和と繁栄に貢献するとの見地にたつて考えると,これからの日本の外交は,従来の経済面を中心とする外交に,国際社会における政治的役割を加えた,厚み(・・)のあるものにして行かなければなりません。また,そのためにも外交活動の対象範囲を,アジア・太平洋地域を中心としつつも,欧州,中東,アフリカ,中南米を含む世界的な広がり(・・・・・・・)をもつたものにしなければなりません。

このような外交を展開することは,従来にも増して,厳しい努力を必要とします。国民の一層の御理解と御協力なしには到底なしえないところであります。

本書がわが国外交の基調についての国民の御理解を得る一助となれば幸いであります。

昭和54年9月

外務大臣 園田 直

目   次

第1部 総   説

第1章 1978年の世界の主要な動き

第2章 わが外交の基本的課題

第3章 わが国の行つた外交努力

 第1節 各国との関係の増進

 第2節 国際経済など多数国間問題解決への努力

 第3節 国際連合の諸活動に対する協力

 第4節 諸外国との相互理解の促進と文化交流

第2部 各   説

第1章 各国の情勢及びわが国とこれら諸国との関係

 第1節 アジア地域

 第2節 大洋州地域

 第3節 北米地域

 第4節 中南米地域

 第5節 西欧地域

 第6節 ソ連・東欧地域

 第7節 中近東地域

 第8節 アフリカ地域

第2章 国際経済関係

 第1節 総   説

 第2節 通商問題

 第3節 国際通貨・金融問題

 第4節 国際投資問題

 第5節 エネルギー・原子力・資源・食糧・漁業問題

 第6節 環境問題

第3章 経済協力の現況

 第1節 総   説

 第2節 技術協力

 第3節 資金協力

 第4節 国際機関を通ずる協力

第4章 国連における活動とその他の国際協力

 第1節 政治問題

 第2節 軍縮問題

 第3節 経済問題

 第4節 社会・人権・文化問題

 第5節 行財政問題

 第6節 科学技術問題

 第7節 法律問題

 第8節 第3次国連海洋法会議

 第9節 国連専門機関

第5章 情報文化活動

 第1節 わが国の主要な文化交流の現状

 第2節 報道・広報関係

第6章 邦人の渡航・移住及びその保護

 第1節 概   要

 第2節 海外における邦人の実態

 第3節 邦人の渡航

 第4節 在外邦人に対する保護・援助

 第5節 海外移住

 第6節 外国人に対する査証

第7章 その他の活動

 第1節 外交体制の整備充実

 第2節 外交問題に関する記録の整理・刊行及び閲覧

第3部 資 料 編

I 資   料

II 付   表

III 年   表

本書の構成と内容

本書は,主として1978年1月から12月に至る期間における世界の情勢とわが国が行つた外交活動の概要を取りまとめたものである。但し,重要な出来事及び78年に関する記述との関連から言及する必要のある事項については,本年春頃までの動きも織り込んである。本書は,第1部総説,第2部各説及び第3部資料編からなり,資料編には,資料,統計類及び年表を収録している。

第1部総説では,第1章において1978年を中心に世界の情勢を概観し,第2章ではこのような環境の中でのわが外交の基本的課題について述べ,さらに第3章ではわが国が行つた主要な外交努力を説明している。

第2部各説では,まず世界の諸地域ないし諸国の情勢及びわが国とこれらの諸地域・諸国との関係について述べ,次にわが国の関係する重要な国際的問題について事項別に具体的に説明している。