-邦人の渡航・移住及びその保護-
第6章 邦人の渡航・移住及びその保護
1. わが国の国際社会における地位の向上に伴い,国際交流もますます活発化しているが,国民の海外進出も全世界に及び,その活動分野も多岐にわたつている。海外の在留邦人は,ここ数年来平均年間約1万人の割合で増加しており,1978年は43万人に達している。邦人の海外渡航も年々急増しており,72年には140万人だつたが,78年には352万人に上つている。また永住のための移住者は,戦前は約77万人と推定されているが,戦後は77年末までに約23万人に達しており,移住者を含む日系人は,今や約160万人となつている。
2. かかる在留邦人,渡航者,移住者などの活動は,わが国の国際的発展に大きな役割を果たしており,わが国と各国との友好,協力関係の一つの大きな掛橋となつているといえよう。外務省はこうした邦人の活動を円滑にすべく,邦人保護その他の領事,移住分野の業務を,外交活動の一環として遂行している。
3. 在留邦人や渡航者の増大に伴い,国籍や戸籍,各種案件処理,旅券などいわゆる伝統的な領事事務が大幅に増大し,更には邦人に係わる犯罪の急増,政情不安などの緊急事態に際しての邦人保護など領事事務内容も複雑かつ大規模化している。他方長期滞在者にとつて近年海外子女教育や海外医療問題など生活基盤の整備が大きな問題となつており,国民の関心がとみに高まつている。外務省は,こうした新しい領事問題についても,在留邦人の福利の増進という見地から,邦人の活動が少しでも損われないようできる限りの援助を行つている。とくに海外子女教育関係予算は年々急増しており,78年の伸びは,対前年比14%で,外務省予算重点事項の一つの柱となつている。
4. また,160万人に達する移住者,日系人の地道かつ堅実な努力は,わが国と受入れ国との友好,協力関係に大きな貢献をなしており,これら移住者の定着,安定を図るための援護業務は,外務省の重要な課題の一つとなつている。さらに近年,移住の形態も農業中心の伝統的移住に加えて受入れ国の経済,社会開発に結びついた技術移住など新しい型の移住も増えており,またカナダや豪州など移住先国の多様化に伴い,長期的観点からの移住行政の推進が望まれている。