-法律問題-

第7節 法律問題

条約に関する国家承継条約全権会議

(1) 条約に関する国家承継条約全権会議の再開会期が,78年7月31日より8月23日までの間ウィーンにおいて開催され,わが国を含む94カ国が参加した。本件会議においては,77年の第1会期にひき続き国連国際法委員会が74年に採択した条約草案を原案として,国家の独立,合併,分離などに際しての条約に関する国家承継についての多数国間条約を採択する目的で審議が行われた。

(2) 本件会議においては,各国ともそれぞれの立場をふまえ活発な議論を展開した。わが国代表団は,本件問題については学説,国家の慣行とも多様であるので,必然的に立法的性格を帯びる条約となるところ,民族自決原則に基づくクリーン・スレート原則,同意の原則,信義誠実の原則などの諸原則を考量し,合理的かつ現実的な条約を作成する必要があるとの基本的立場に立つて,各国とも協調しつつ積極的に審議に参加した。

(3) 審議の結果,50カ条より成る「条約についての国家承継に関するウィーン条約」及び同条約に関連する若干の決議が採択された。本条約の内容は,国際法委員会が採択した原案を踏襲し,(イ)領域の一部の移転,(ロ)新独立国の成立,(ハ)国家の結合及び(ニ)国家の分離という国家承継の類型に従い,それぞれの類型について条約の承継に関する原則を定めているものである。本条約は,全体としては合理的かつ現実的なものといえ,条約関係の明確化,安定化に資するものと評価しうる。

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