わが外交の近況 |
昭和48年版(第17号) |
外 務 省 |
昭和48年版「わが外交の近況」(外交青書)の刊行にあたつて |
1972年は,沖縄返還と日中国交正常化というわが外交の二大懸案が決着を見た記念すべき年でありました。この結果,日本外交は新しい時代に一歩を踏み出すこととなりました。
新しい時代に対処する日本の外交の選択の幅は,従来よりはるかに増大しております。しかし同時に,流動する世界情勢の行くえを見定め,日本の進むべき方向を的確に判断するという作業は,困難なものとなつていることも銘記すべきでありましよう。
近代日本は,明治以来,経済的な自立と平等,さらには国際的地位の向上を目指して自らの近代化に精力的に取り組んできましたが,それが一応達成されたあと,自らの力の評価と進路の選択を誤り,重大な破綻をきたしました。
戦後の日本は,第二次大戦による荒廃の中から出発し,国民各位の努力と米国その他友好国の理解と支援を得て,国力を培い,今や国際社会を支える主要な柱の一つとなるまでに発展を遂げました。今や,われわれは,内外にわたる自らの足場を踏みしめつつ,内においては内政の質量両面にわたる充実を図り,外に向つては,世界の平和と繁栄のためにどのような積極的寄与をなしうるかが問われております。
現代の外交はきわめて多面的であります。これまでの伝統的な外交分野であった政治,経済,文化等の分野に加えて最近は,宇宙,海洋,環境,資源などの分野の外交も活発になってまいりました。また,現代のように多極化した国際社会にあつては,一国の外交が,単純な二国間関係として処理できないことも多くなっております。一つの行動が,国際情勢に思わざる連鎖反応を起す事例がよくあります。
このような時代における外交は,均衡のとれた国際感覚と冷静で客観的な判断力とを要します。われわれは,自らの持つ実力の評価とその行使に二度と誤りなきを期しつつ,静かな勇気をもつて責任ある外交を展開すべきであります。
また現代の外交は国民外交であるといわれます。外交は政府だけのものではなく,国際情勢の複雑さと日本のとるべき進路とに関する国民一人一人の理解と支持に負うところが大きいからです。
昭和48年版外交青書(“わが外交の近況")は,昭和47年度,すなわち1972年4月から1973年3月までの間の世界情勢の推移と,外務省が行なった外交活動を中心に,わが外交の歩みをとりまとめたものであります。これにより,国民各位のわが国外交に対するご理解を深める一助となれば幸いであります。
昭和48年8月
外務大臣 大 平 正 芳
目 次 |
第1部 総 説 第1章 世界のおもな動き 第2章 わが外交の基調
第2部 各 説 第1章 わが国と各国との諸問題 第2章 国際経済関係 第2節 経済協力開発機構(OECD)を中心とする国際経済協力 第3章 わが国の経済協力の現況 第4章 国際連合における活動とその他の国際協力 第5章 邦人の海外渡航,移住の現状と在外邦人の保護 第6章 情報文化活動の大要 第7章 その他の外交機関の活動
第3部 世界地図(別冊)
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